餃子、中国語ではチャオズ
『ふっ、完璧だな』
キッコロの言葉に俺達は満足げに頷く。
勇者達は約束通り祝勝パーティを開き、俺を嘲笑うために招待状を送りつけてきた。
王の手前、俺は逃げ出すことも出来ず悲痛な顔をしてパーティ会場に参加するという流れだ。
奴らはさぞかし満足げに俺の顔を眺めるだろう。
それが最期の笑顔だとも思わずにな。
だが俺は勇者達を侮ってはいない。
もしかしたらそれでも勇者は生き延びるかもしれない。
『おまけにこちらにはこれもあるしな』
俺は秘密兵器を懐から取り出しキッコロに渡す。
その名も【闇のオーブ】。
使い手が悪しき存在であったとしても願いを叶えるという恐ろしいアイテムだ。
かつては世界に2つあったが今は1つしかない。
魔王ヘルインフェルノは元々は魔界に棲むグレーターデーモンだったが、闇のオーブを使った事で魔王と呼ばれるほどの力を手に入れたのだ。
つまりキッコロがこれを使えばパーティ会場に魔王が現れるといういうわけだ。
『だが、これを手に入れるために大きな犠牲を払ってしまった…』
そう、強力な力を持つ闇にオーブを手に入れるのは容易なことではなかった。
闇のオーブは伝説の黒龍【深遠なる暗黒ブラックドラゴン】が所持していた。
闇のオーブを手に入れるため俺達は総力を挙げてヤツと戦った。
そして大切な仲間だったギョーザという男を失ったのだ。
『ギョーザは…一度龍玉で生き返っている…。
も、もう二度と生き返れないんだぞ…!!』
キッコロが絞り出すように声を発する。
深遠なる暗黒ブラックドラゴンとの戦闘でギョーザは一度は命を落とした。
龍玉というアイテムで一度は蘇生したのだが、彼は最後に自爆という選択をし拾った再び命を失ってしまった。
蘇生という奇跡は伝説のアイテムを以てしても二度目はあり得ない奇跡なのだ。
俺達は彼のおかげで命拾いしたと言える。
だが実の兄弟のように育った彼の心中は察するに推し量ることは出来ない。
あの戦いを経て俺達の絆は深まった。
もはや俺と魔王軍は同じ目的のために命を懸けて戦い、心の底から魂を理解しあったソウルメイトなのだ。
『あぁ、彼の死を無駄にしないためにもこの作戦を必ず成功させよう』
俺達は全員で手を合わせ誓い合った。