9、10月−25 ゼロの秘密が暴かれる(物語で重要な情報はないという罠)
「そんな簡単にわかる性格はしてないぞ。」
「最初はさ、なんとなく達観してるなって思ったんだ。」
達観。目先のことだけでなくすべてを見渡して大きな見通しを持っていたり、遠い将来の情勢を見通すこと、だったか。まあ、目指してはいるな。
「でもさ、やっぱり高月くんは子供だよ。」
「は!?」
俺が子供!?
「あ、ごめん。年相応かな。なんとなく私たちより精神年齢は上に見えたけど実際は同じくらいだと思うんだよね。」
「どこが?」
「いつも冗談を受け流せずリアクションするとことか、いろいろ文句を言いながらも手伝うところとか。不器用でちょっと知恵をつけた少年が遅れてきた思春期を感じつつ、うまく大人ぶってるみたいだね。」
ひどい言われようだ。まあ、否定しきれないけど。
「間違ってないでしょ。」
「たしかに俺なんかよりハルさんやマジさん、お前のほうが精神年齢は上だと思うぞ。」
「ありゃ?私も?」
「ああ。なんとなく自分の素を出しながら重要なところは隠してる感じだ。それに比べれば俺やメエ、ラブは低いな。」
「なぜなぜ?」
「メエは素を出してるけど重要なところまで出てる。ラブはなにもかもうまく隠せてない。
そして、俺は隠す必要のないところまで隠してる。」
「そこまでわかってて隠すんだ?」
「見せれないものがわからないんだ。俺は不器用だからな。」
「なるほどね……はい。アップルティーとアップルパイ。」
話しながらも用意するところも精神年齢の差を感じるな。
さっさと俺はフロアに戻った。
「……実は子供って言った理由はもう1こあったんだけどね。」
時間は12時ちょい前。交代の時間だ。注文は入ってないがラブと厨房に入った。
「お疲れー。」
入ったら執事服を着たレンとメイド姿でレンの後ろに隠れるトバリがいた。
「よぉ。」
「あとはよろしくお願いします。」
「もちろんさ。」
「ううう……やっぱりやるの?」
やはりトバリはあきらめきれないようだがそれはレンにまかせて服を着替えに……
「あ!ちょっとストップ!」
……と思ったらユリに止められた。
「どうした?」
「その服装のまま白桜祭をまわってくれないかな?」
「この執事服のままでか?」
「そう。」
この服装でか。恥ずかしいとかはないんだが、いろんなところをまわるにはちょっと重いし暑い。
「ここの宣伝にもなると思うし、着替えの時間が短縮できていいことずくめなんだよ。」
「なるほど。……上着は脱いでいいか?」
「うん。タイは外さないでくれるなら。」
「なら上着は脱がさせてもらうよ。これでまわることにする。」
そんな感じで話がまとまったところでラブが着替えを終えて出てきた。
「あれ?ゼロくんはそのままですか?」
「ああ。ここの宣伝もかねてな。」
「素晴らしいじゃないか。」
横からレンが現れた。
「これでレイヤは愛佳ちゃんの専属執事だね。」
「えっ!?」
そうなるのか?傍から見たらそういう関係に見え……ないか。どこの執事がため口で笑いながら横で主と話すというんだ。
「とにかく行くぞ。」
ラブと白桜祭をまわることになった。