9、10月-24 ゼロのキャラクターがちょっと壊れた。……訂正、結構壊れた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
「え、あ、はい。」
「どれがよろしいでしょうか?」
「え、えっと、チーズケーキとミルクティーで。」
「かしこまりました。」
笑顔を意識して答え、客から見えないようにしている厨房に入った。
「チーズケーキとミルクティーだ。」
「はいよ!」
ユリが元気よく答えた。どう考えても厨房とフロアの間に窓をつけたほうが速いのだが、そういうのはイメージを崩すからつけなかったらしい。
「ほいよ。チーズケーキとコップにティーポット。」
なんとなく本格的に見せるために紅茶はティーポットで、しかも客の前でやるようにしたらしい。ちなみにパティシエール(ケーキ屋)直伝だ。
「早いな。」
「当然。」
さすが、なんだかんだでハイスペックだ。
「お待たせしました、お嬢様。」
お嬢様の前で紅茶をそそぐ。そしてそばにチーズケーキ。こちらもケーキ屋直伝なので味に自信ありらしい。実際、食ったがうまかった(←1日、朝昼晩とケーキを食った日がある)。
「あ、おいしいです。」
「ありがとうございます。」
チリンチリン
……誰かが呼んでる。
「失礼します。」
同じ時間に執事2人、メイド2人が同時に働いているのだが、席は8つテーブルがある。客とテーブルの比率を見たらだいぶ楽なのだが、フロアは注文を受けたとき以外は厨房に引っ込めないというルールがあるのでずっと来た人の相手をしないといけない。
「お待たせいたしました。」
「あの、電話番号やメールアドレスを教えてほしいんだけど。」
「……」
「やっぱりダメ?」
「いえ、その辺は個人の裁量に任せられているのですが……」
「それは私が……」
「携帯電話を持ってないんです。」
「魅力……え?」
「すみません。あなたのような魅力的な方と知り合いたいのですが……とても残念です。」
「え、み、魅力的?」
チリンチリン
「失礼します。」
注文だったので厨房に入った。
「いやはや、君の天然ジゴロなところに今日は感謝するよ。」
「いろいろと言いたいことはあるが今はやめておく。それよりもラブのほうは大丈夫そうか?」
「え?マナちゃん?」
「ああ。」
あいつは言わずと知れたあがり症。今現在で大丈夫そうなのが不思議なくらいだ。
「大丈夫、大丈夫。なぜなら私というブレーンがマナちゃんに魔法をかけておいたから。」
「真面目に答えろ。」
「冗談に聞こえる?」
ものすごくいい笑顔で言われた。
たしかにラブの性格を考えるとありえないぐらいしっかりと仕事をしている。普段のラブなら真っ赤になって、倒れててもおかしくないはずだ。もしかして本当に魔法?いや、そもそも魔法ってなんだ!?……魔法か。いやそうじゃなくて、そうなるとユリは魔法使い!?じゃあハルさんも!?そもそも、姉妹とかは同じように魔法使いをするのか!?いや、ハルさんなら……
「はっはっはっ……!!冗談だよ、冗談!!」
「え?」
笑いながらそう言われた。
「冗談に決まってるでしょ!魔法なんてないよ。」
そうか。そうだよな。
「……なんとなく高月くんの性格がわかってきたかも。」