9、10月−22 あれ?ギャグを忘れた?
そこからはすぐに終わるものばかりだった。茶道部の茶道体験(メエはただ苦そうにしていた)、科学部の水素爆発実験(化学教師立ち会い)、美術部の作品展示(ヌードの絵は外させた)、写真部の作品展示(盗撮写真は焼却処分した)などそれほど大きな問題なく進んだ。
「最後はここだな。」
最終地点は校舎から少し離れた音楽堂。すでに中から少し音が聞こえる。
「……これはちょっと考えないとな。」
「どうしたの?」
「いや、中に入ろう。」
中はけっこう広く、天井も高かった。え?なんで中を知らないみたいに言うのかって?そりゃあ本当に入ったのは初めてだからな。
ここは芸術科目として美術、書道、音楽から選択することになっている。俺が選んでいるのは書道。ゆえにこんな音楽堂という音楽以外で使用されない建物に近づくはずない、ということだ。
「ストップストッープ!!」
前で指示をしていたらしい女生徒が全体にストップをかけて、こっちにかけよってきた。
「こんにちは、生徒会のみなさん。私は吹奏楽部の部長、湊川 奏です。」
というわけで最後は吹奏楽部だ。
「ねぇねぇ、吹いたら銃弾の飛ぶのはない?」
「あったら速攻で解体しますからハルさんは黙っておいてください。」
さて、チェックといってもこんなところに何の危険性を求めろというんだか。もし危ない場所でするなら注意をするように言っとかないといけないが、やる場所も中庭。よっぽど近づくアホがいない限りケガ人が出るイメージができない。
「奏ちゃん、の○めのできない?」
そんなことをいきなりメエが言い出した。
「えっと……」
「バカ。あれはオーケストラ用の曲だ。ここは吹奏楽部だろ。」
「?何か違うの?」
忘れていたがこいつはバカだった。
「バイオリンみたいな弦楽器がないだろ。ここは吹奏楽部だから吹く系の管楽器が基本なんだ。」
正確に言えば打楽器も一部あるみたいだが。
「そうなの。アレンジでよければあるんだけどそれはまだ練習してないから。」
「そっか。ってことはゼロがここに入部しなかったのはそういう理由?」
「は?」
「それってどういうことなの、会長さん?」
「だってゼロはバイオリンをするからここに入ってないんでしょ?」
「副会長さんはバイオリンが弾けるんですか?」
「マジさんもいるんで副会長さんはやめてください。」
「それじゃあ、高月さんはバイオリンを弾けるんですか?」
弾ける、か……
「弾ける、弾けないで言えば弾けるですけど、あれは他人に聞かせるものじゃないですから。」
「あれ〜?ゼロってバイオリン弾けたんだ〜。」
もちろん、生徒会のメンバーは5月の時点でバイオリンを弾けるのは知られているのだが、ハルさんは知らないふりを続けている。たぶんおもしろがっているんだろう。
「でもボクは聞いたよね?」
「あれはお前が練習しているときに勝手に聞いてただけだろ。」
「あれ?そうだったっけ?」
「そうだよ。」
あの時は俺が油断してたのも悪かったけどな。
「それで、ゼロは弾かないの?」
「弾きません。他人に聞かせるものじゃないですし、そもそもバイオリンを持ってません。」
「うむ。そういうことならしょうがないと言うしかなさそうだね。」
ハルさんはなんでそんなに偉そうなんだ?
「ここも問題なしです。」
最後のを終わった頃には西の空が茜色に染まっていた。
「もう5時半か。」
開始したのが1時のはずだから、全部見て回るのに4時間半かかったわけだ。
「用意は9時まで出来ますけど、どうします?」
ここ1週間は7時までだったが最終日と学園祭期間中は9時まで残れる。やっている側の意見からすると前日よりももっと忙しいときに遅くまでさせてほしいものだ。
しかし、こういう教師も関与してくるものは生徒会だけでは決定できないのだからしょうがないとしか言いようがない。
「ボクは教室でみんなを見てる。」
「私は最終チェックに参加かな。」
「俺も教室に戻るよ。」
最後にメニューのチェックとか担当時間の最終確認みたいなことをしないといけないだろうし。
「じゃあ、本番で!」
そのメエの言葉で俺らはわかれた。
ついに明日が本番だ。