9、10月-14 大丈夫か生徒会⑧
「すっきり忘れそうだったけど、高月くんにはメエちゃんを坊っちゃんと呼びなさい。」
「拒否権というものを求めることは……」
「「無理!!」」
「さいですか。」
ここまで同時に藤原姉妹に言われたとなると拒否する気すらおきなくなってくる。
「心配しなくても大丈夫。私たちの評価はゆるい部類だから!」
「どうせそっちの世界でとか言うんでしょ。」
「正解。」
だんだんメエだけじゃなくてハルさんのパターンまでよめるようになってきた。でもメエもハルさんも何をやらかすかは想像しにくいし……あれ?いったいどっちなんだろうか?
「さぁさぁ。」
「さぁさぁ!」
「「さぁさぁ!!」」
「ステレオでこないでください。どうせやりますから。」
とは言ったものの、いったいどんな感じなんだ?……見たことあるのはドラマでメ○ちゃんの執事を偶然チラッと見ただけだぞ。しかもなぜか知らないけど料理対決してたし。
「やっぱりイメージできないんですけど。」
「とりあえず『おかえりなさいませ、坊っちゃん。』でいいから。」
「できるだけクールに。そして笑顔で!!」
ハルさんから面倒な注文が入ったがなんとなくはわかった。
とりあえずメエのほうを向く。そして考えうる最高の笑顔をメエに向けた。
「おかえりなさいませ、坊っちゃん。」
「はうっ!」
なぜか知らないがラブは顔をおおってなんとか自分を保とうとしているようだった。他の女子も同じようになっているし何人か倒れている。
そんな中で言葉を向けたメエだけはあんまりいい表情をしていなかった。
「どうした?」
「なんかさ……ゼロっぽくない。」
「俺っぽく?」
そりゃあ作り笑顔だし、そもそもこんなことをしたことないんだから俺っぽくなるはずがない。言ってみればこれは演技。舞台の上にいる役者に個性を求めるのは根本的に間違っている。それは自分という役でやるべきことだ。
「なんとなくゼロのイメージとは違うんじゃないの?」
「当たり前だろ。俺の目の前にいるのは性別的には女に分類されるやつだぞ。今はそれを男としているんだ。違わないようにするほうが難しい。」
「そういうのじゃなくて……ああっ!うまく言葉にできない!!」
感覚でとらえているからかうまく表現できないようだ。
「ふむふむ、まあたしかにメエちゃんの言ってるように自然体かと言われると正直そうですとは言いづらいのもまた事実だね。よし、高月くん。ためしに自分が思う執事ってやつをやってみてくれないかな?」
「まあかまわないが……」
俺の思う執事ってなんだ?さっきのもある意味イメージできなかったがありえるものだと思う。しかし、メエのイメージしている俺とは違うらしい。……執事か。あれは執事と呼べるのか?しかし、イメージであるのはあれしかない。となると重要なのは最高の笑顔じゃない。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」