4月ー7 情報収集
「……」
「そこで黙っちゃう!?」
「さすがゼロだね。」
メエはツッコミをくれたが、ハルさんはなんとなく流された気がする。やっぱりメエとは比べものにならないくらい強い。
「勝算がないのにあんなことを言ったのか?」
「まあ、勘だな。」
「会長の進退にかかわるかもしれないことを言っちゃったんですか?」
「えっ!ゼロのせいでボクはけがするの!?」
「会長が言っているのは身体です。ラブが言ったのは進退。会長をやめるやめないということです。」
「そっかー……って、やばいじゃん!」
やっと、ことの重大さに気付いたようだ。まあ、どうりで他人事みたいに扱っていたわけだ。
「やばいよ!どうするの!?」
「まあ、がんばって成果がなかったらメエが責任をとって辞任するだけだ。」
「そんなの嫌だよ!」
おっ!辞任という言葉の意味はわかったのか?
「なんでボクが痔になんかならないといけないの!?」
痔人。また、すごい解釈をしたな。もちろんそんな言葉はない。
「会長、辞任はやめるという意味です。」
いつものようにマジさんの訂正が入った。
「そうか、よかった……って、よくないよ!ボクはまだやめたくないよ!」
「……自任は自分が正しいと思いこむという意味もあるわ。」
「ええっ!」
榊、めずらしく口を開いたと思ったらなかなか邪悪なことを言ってくれるな。
「どうしよう。ボクはついには思いこむしかできなくなっていくなんて嫌だよ!」
「じゃあ、がんばろう!おーっ!!」
なんだかんだでハルさんがまとめた。
「おーっ!!」
メエはいっしょに右腕を上げていた。
最初にマジさんを抜目ないと言ったが、ちゃっかりしているという点ではハルさんなのかもしれない。2年生コンビ、油断ならない。
「なら、さっそく作戦会議を……」
「あの、できれば明日にしませんか。もう遅いですし。」
ラブの意見を聞いて、時間を見た。すでに7時近い。
「たしかに明日にしたほうがよさそうだな。」
ということで各自で情報を集めて、明日持ち合うことに決定した。
開明高校の寮は3つの寮がある。
第1館は校舎、グラウンドに近く、主に部活の生徒が入っている男女共同寮である。
そして文化部、部活に入っていない生徒は少し離れている第2、3館に入っている。ここは第1館よりは校舎に遠いが寮は広く、男女で別れている。ということにはなってはいるが、女子は自由に行き来できるし、男子もフリースペースと呼ばれる場所ならば入ることができる。つまり、それほど厳しい規制がないということだ。
俺は自分の部屋に戻った。相変わらず何もない部屋だ。俺自身でもわかる。あるのはベッドとテレビと本棚だけ。他はそなえつけの机しかない。まあ、べつに困らないからいいんだけど。
さっさと荷物を放り出してもう一度、下におりていった。
この寮は各部屋にシャワーはついてはいるが、地下には大浴場がある。疲れたときにはこっちのほうを使う。
「はぁー。」
かなり気持ちいい。いろいろあった今日の疲れが全部とんでいく感じだ。
「となり、いいか?」
「はい。」
声だけで誰だかわかる。
「マジさんもですか。」
「ああ。」
「でも、俺はもう出ます。」
「裸のつきあいというものを、私としてくれないのか。」
「真面目な顔でボケないでください。」
俺はそれだけ言って風呂を出た。
「ねぇねぇ、高月零夜がどこにいるか知らない?」
何か聞いたことのある声が談話室から聞こえる。今日は極力会いたくない人間の声だ。
「ゼロは中庭にいるぞ。」
「わかった!」
バカでよかった。これから何回もこれを思うのだろう。
ガチャッ。
「うおっ!」
談話室を出たと同時に何かにぶつかった。
「いたーい。」
……よし、視界に入れないで速やかに部屋に戻ろう。
「すまない。」
「待ってたんだから逃げちゃだめだよ。」
腰をつかまれた。逃亡失敗。高月零夜はバカな会長につかまった。末代までの恥だ。
「恥じてもしょうがないだろ。」
マジさん登場。このタイミング、抜目ないな。
ということでなぜか俺は女子がいる第三館に連れていかれた。
どうも、学校で執筆、作者のヒッキーです。
動き出したのに動いてない。さっさと動けよ。次こそは動く……はず。