7、8月−21 あのCMに影響された
「おい!さっさと携帯を構えろ。俺の勇姿をムービーにおさめるんだ!!」
「そもそもなんで携帯なんですか!?」
「軍曹さん。今や、金魚すくいを撮るなら携帯のムービーって決まってるんですよ。」
「決まってるんだ!?」
見覚えのある人たちが金魚すくいの屋台で騒いでいた。
「あ!変態!」
メエよ。大衆の前でそれをいきなり言うな。
「ちがうよ、メエちゃん。この会長はロリコンだよ。」
それもダメな気がするぞ。
「こんにちは。」
「えっと、乍乃さんでよかったかな。」
「はい。」
こちらはていねいにあいさつをしてくれた。
「浴衣を持ってきてたんですか?」
「今日は無料で貸してくれたはずだぞ。」
「えっ!そうなんですか!?あ、でも私たちは着れませんね。」
「?ちゃんとサイズもあるはずだぞ。」
「いえ、うちの会長が暴走しだすと思いますから。あ、そういえばそちらの会長さんは大丈夫なんですか?」
そういえば、今は気付いてないみたいだからいいけど、気付いたら……
「メエちゃ……スットライクゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ!!!!!」
「あんたがアウトだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
メエが叫ぶ間もなく桜田さんのジャンピングローリングソバットがヒットした。そして、そのままギャラリーに……
「って、危ないわぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
飛んでいた桜ヶ丘の会長をかかと落としで叩き落とした。
「あ、ごめんなさい。ちょっと飛ばす方向間違えちゃった☆」
「☆をつけないでください。まあ、けが人もいなかったみたいですしよしとしましょう。」
「桜田さん、ゼロくんのコンボをくらった夏木さんは無視なんですね。」
「いいのよ!」
桜田さんがはっきりと言ってくれた。まあ、地上15階から落ちても大丈夫なんだから普通に問題ないだろ。
「あ!高月先輩!!」
「こんにちは。」
後ろから聞いたことのある声。後ろにはリンとフーちゃんがいた。
「あれ?たしか初日にいっしょに歌ったよね。」 そういえば初日のバカ騒ぎにどちらもいたはずだな。
「すみません。私がお酒に倒れちゃいました。」
「フーちゃん、一応未成年だからね。」
「え?それがどうかしたんですか?」
……未成年の飲酒は法律で固く禁じられています。まあ、結果的に俺も飲んだけど。
「それでリンちゃんはフーちゃんの看護ですか?」
「そういうことになります。あと、私たちは年下ですし敬語は使わないでほしいんですけど……」
「大丈夫だよ。私はこっちのほうがなれてるから。」
「でも……」
あっちでは何か始まった。しかし、こう比べてみるとラブとリンの性格はよく似ている。控え目なはずなのに自分の意志はしっかりと持っている。これで俺みたいなのが兄なのだから不思議だな。
「さあ、勝負!!」
いつのまにか金魚すくいに復活していた夏木会長がかまえをとっていた。そしてその前にもいつのまにかのフーちゃんが携帯のムービーをかまえていた。このごろの流れにはついていけないな。
「いざ!おっちゃん、1回!」
「はいよ。」
夏木の手にモナカの皮のぽいが渡された。
「なっ!も、もなかだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!」
夏木に28のダメージ!夏木はショックで膝をついた。
「いや、なんでよ!!」
「バカやろう!携帯でムービーをとってるんだ!こういうときは紙のぽいじゃないと決まってるんだ!それなのに、もなかだと……。……絶望した!!」
俺に言わせればその考えに絶望しそうだよ。してはないけど。
「じゃあ私がしますね。」
投げ捨てられたモナカのぽいは乍乃さんによって普通に使われた。