7、8月ー16 自己紹介って実は結構かかる
「次は榊。」
榊はゆっくりと立ちあがった。ここだけ見たらだだの美人だが……
「開明高校生徒会、会計、榊 菜月。趣味は人を踏むこと。座右の銘は『人は踏むためにある』。人の弱みは……こんなところで言えないことばっかり。」
『……』
怖すぎて誰もツッコミに入れません。
「つ、次はそちらの3人、どうぞ。」
「はーい!桜ヶ丘高校生徒会、庶務雑務、桜田 ハル!趣味は人を助けること!座右の銘は『一日一善』!人を助けることが生き甲斐なんで弱みなんて知りませんにゃ☆」
「……マジさん、気分がすぐれないので医務室にいかせて下さい。」
「マジリアクション!!?」
「まさかこんなところでやられるとは……」
「私、何もやってないよ!!自己紹介しただけだよ!!」
「医務室にいけばもれなく中山先生も付いてくるぞ。」
マジさんの言葉に俺は絶望した。
「くそっ!まさかすでに占拠されていたか!」
「なんでこんな大事に!?」
ザシュッ!
後ろから強い痛みと何かの冷たい感じがあった。
「な……」
後ろにいたのはハルさん。
「ま、まさ、か……」
「ごめんね、ゼロ。君はわたしたちの計画にじゃまなんだ。」
背中に落ちる赤い液体。くそっ。俺も終わ……
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!なんで私の自己紹介からこんなことになってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
「……って感じになっちゃったらどうする?」
「へ?」
「そうですね。まあ、刺されることはないと思いますよ。」
俺はとりあえずハルさんの質問に答えた。
「あれ?あれ?」
「でも刺せれたよ。」
「あれは殺気がなかったからです。本当に刺すなら、少なからず殺気は出ますから。」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!」
また叫び声がした。
「どうしたの、ハルちゃん?いきなり叫んだらみんなが驚いちゃうじゃない。」
「どうもこうもありますか、柊先輩!!なんでみんな当たり前のようにしてるんですか!?」
「だって桜田さんがしたことなんだから僕には関係ないよね☆」
「コロス。肉の一片すら残らないくらいまでにコロス。」
なぜか知らないが桜田さんの後ろに般若が見える。
「そもそも、なんでそっちの役員は平気な顔してるのよ!!」
そう言ってこっちをさした。
「私たちからはトリックがまる見えでしたから。」
ラブや榊は俺らの後ろにいたから当たり前だ。
「じゃあ会長さ……」
「……いひゃい。」
「まだやってるの!!?」
まだ机に突っ伏している。メエにツッコミがとんだがそんなものを気にしている余裕がなさそうだ。
「落ち着いて下さい、軍曹さん。」
「そうですよ。普通に刺したってあんなに血は出ませんよ。」
「知らないよ!!柊先輩だってわかりませんよね!?」
「ハルちゃん、あなだがそこまで何も知らないなんて……」
「何で私はアウェーなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
ちなみになんでここまで血が流れているかというと、仕込みナイフで透明なプラスチック下敷きを間にはさんで突いているだけだからこれだけ流れてるんだけど、まさかハルさんの悪ノリにのってここまで大事になるとは思わなかった。
「で、処理は終わりましたか?」
後ろを見るとハルさんがちゃんと血糊の処理を終わらせていた。
「桜田さんもありがとうございました。マジさん、次にお願いします。」
「あ、はい?ど、どういたしまして?」
まあ、こんな感じで騒ぎを終結させた。
「では、次の方、どうぞ。」
「はい。」
そう答えたのは茶色ツインテールのほうだ。
「桜ヶ丘高校で生徒会庶務雑務をしてます桧木 抄華です。」
あ、まともな……
「趣味は銃器の収拾、整備です。座右の銘は『鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス』。人の弱みなんてわからなくても大丈夫です。」
……わけがなかった。
「では、最後のかた、どうぞ。」
最後は亜麻色のロングヘアーの女の子だ。
「はい。乍乃 雫です。役職は……」
おもしろくなかったのでカット。
「さて、午前が終わるな。」
マジさんの言うとおり、もうすぐ正午だ。
「無駄なツッコミで体力も時間も使っちゃったじゃない。どうするの?」
「軍曹さん!ツッコミなんて無駄だと思ってたんですか!?」
「へ?」
「ハルさんのツッコミに対する愛情なんてそんなものだったんですね。」
「ハルちゃんなんてそんなものなのよ。」
「僕も幻滅したよ。」
「だから、なんでアウェーなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
「さて、いい感じでぐだぐだになってきたところで昼休憩をとりましょうか。」
「そうだな。では昼食は各自で、1時間後にもう一度ここに集まって下さい!」
というわけで、生徒会会議、午前の部は自己紹介で終わった。
……桜ヶ丘の会長は帰ってこなかったな。
桜ヶ丘の先生方は……まあ、いっか。