6月ー11 反撃開始
「こねーな。」
ターゲットは油断している状況。
「GO!」
メエのさけび声を合図に相手をメエとはさみこむように飛び出した。相手は驚いた様子だったが、すぐにセオリー通りにメエ側に逃げた。もちろんそんなのをメエが抑えられるはずもない。
「ちょろいぜ。」
そのまま階段から下におりていった。さて、ここまでは予想通り。さて、あとはうまくあれにひっかかってくれるかどうかだ。
階段を下りきった先、1階の真ん中ぐらい。そこに太めの糸を張っておいた。
「こんなもの!」
しかし、それはいとも簡単に飛び越えられてしまった。
「かかった!」
「は?……うおっ!」
メエが叫んだ瞬間、相手は空を飛び地面に叩きつけられた。
「な、なんだ?」
相手が後ろを向くとスケボーが細いピアノ線にひっかかって動けなくなっていた。みごとにタイヤと板をつなぐ部分にひっかかっている。
「くそっ!」
走って逃げ出したがスケボーなしの機動力なんてたかがしれている。俺は一気に追い付いて木刀で気絶させた。
太めの糸をはずして相手の手足をしばった。このためではなかったが結果的にはさらに役にたったと言えるだろう。
『高月。』
マジさんからの連絡だ。
「どうしたんですか?」 『藤原のところが苦戦しているらしいから応援にいってくれ。』
「わかりました。」
指示通り俺らはB棟に向かった。
外ではかなりの人が校舎を見ていた。なぜ校舎に立入禁止なのか。知っている人は知っているが知らない人にはこれほど不思議な光景はないだろう。
そんな学校の中から誰かが現れた。帽子を深めにかぶっており顔は見えないが、侵入者が乗っていたスケボーに乗っている。
「ちょっと待って、ゼロ!これは無理!無理だよ!」
「あきらめろ。これが一番早いんだ。」
そう言って2階から飛び降りた。そのまま空中で1回転して着地。
「よし、決まった……ってメエ!?」
メエは顔を青くして目を回している。
「……これはほっといて、逃がさないぞ。」
「くっ!」
相手は木刀を握るとそのまま突っ込んできた。しかし、軽くそれを受け流すと、胴に木刀をぶつけた。スケボーのスピードとあいあまってかなりふっとんでいった。
「覚悟しろ。もう終わりだ。」
それを合図に相手は帽子をはずした。その下から現れたのは派手な金髪のイケメン男子。まぎれもなく前会長、斑目先輩である。
ザワザワ……
いきなりの前会長の登場に在校生から中学生へと伝達していった。そんななかマイクを持ってハルさんが前の高い台に立った。
「えー、どうもー!生徒会会計の藤原晴でーす!生徒会のちょっとした出し物は楽しんでもらえたでしょうか?」
みんなが口々に「えっ?」、「あれって演技?」と言っている。
「本当はここで会長の言葉が欲しいんだけど、ぶったおれちゃってるから、代わりに生徒会副会長の高月零夜があいさつをします。」
そう言ってハルさんがマイクを投げ渡してきた。俺はそれを、取りそこなってメエの腹の上に落とした。ここでメエが倒れてくれててよかった。
「どうも、生徒会副会長を務めています高月零夜です。まずこちらの不手際で校舎の閉鎖時間がのびてしまったことをたいへんすまなく思います。生徒会はこんな風に前会長を巻き込んでまでこんなことをする無茶苦茶な生徒会です。でも、ここが楽しそうと思ったのならぜひ入学して下さい。学校の考え方が根底からひっくり返るかもしれません。では、つまらない話はこれくらいにしてこの後も開明高校オープンスクールをお楽しみ下さい。」
俺は言い終わるとハルさんにマイクを返して、メエを抱えると校舎の中に消えていった。
「マジさん、処理は終わりましたか?」
「バッチリだ。」
なぜこんなことになったのか。さかのぼること20分ぐらい……