4月−3 ニックネーム
私立開明高校。かなり敷地が広く、全寮制の有名進学校だ。志望者もそれなりには多いが、それなのになぜかバカもけっこういる、俺の通う不思議な高校だ。
「どうして俺なんだ。」
俺は独り言をつぶやいた。
俺は今、生徒会棟と言われる場所にいる。まあ、ただの古ぼけた2階建ての倉庫兼、生徒会室というだけだ。
そんな建物の2階で新会長と新副会長といっしょに前の役員を待っていた。
「何のようかな?」
楽しそうに会長が言った。しかし、かなりひまだ。
「ひまだな。」
副会長が言った。俺も同感だ。
「だからお互いにニックネームをつけよう。」
「は?」
ものすごいまじめな顔でそんなことを言うか。なんだ?これはボケなのか、それともまじなのか。どちらだ?
「まずは高月、お前からだ。」
そんなこと言われても本気で困る。しかも俺のほうを見て言うな。
「下の名前は零夜で間違いないな。」
「ええ。」
いったい何が楽しいのか。
「なら、ゼロっていうのはどう?」
ゼロ?また変わったニックネームだな。
「うん!ゼロ!それで決まり!」
きいておきながら自己完結してしまった。どうでもいいことだが勝手に完結されるのも悲しい。
「じゃあ、お前らのニックネームは俺が決めさせてもらう。」
2人は驚きながらこっちを見た。なんかそんなことするキャラだったのかよ、みたいな感じだ。
「まず会長。下の名前は、たしか芽だったよな。」
「うん!」
ものすごい明るい。そんな声だ。
「……なら、メエだな。」
「えっ、メエ?」
聞きとれなかったわけではないだろうに、わざわざもう一度聞き返してきた。
「そう、メエ。」
「メエ!?」
そこまで驚くか。
「なんでボクがそんな羊の鳴き声みたいな名前なのさ!?」
「なかなかのネーミングセンスだな。」
「ありがとうございます、マジさん。」
それを聞いてメエだけでなく副会長までもが驚いている。この人たちはたぶん今日だけで1週間分ぐらい驚いただろう。
「まったく、もしかしたら私は今日だけで1ヶ月分ぐらい驚いただろうな。」
マジさんはなかなか動じないようだ。
「そうかな?ボクはいつも通りだよ。」
「お前はどんだけ驚いてんだ!?」
さすがにツッコミを入れてしまった。また周りが驚いている。
「いや、マジさんが驚くのはわかるけど、なぜにメエが驚く?」
「だってゼロがツッコムなんて思わないし。」
そこまで俺は堅物なキャラと思われていたのか。
「大丈夫。お前は冷めきったキャラだと思われていた。」
「何が大丈夫なんですか。」
またどうでもいいという気持ちがうまれてきた。
「やあ。楽しそうにやってるね。」
俺がこの声を聞いたのは今日2回目だ。そしてマイクごしではない声を聞き、確信を持った。
「あなただったんですか、斑目先輩。」
どうも、春休みの実感を消す補習の力、作者のヒッキーです。
開明生徒会は大丈夫か?次では前会長登場。