6月ー2 当日
「晴れてよかったー!」
あれから2日たった日曜日、前日も晴れで風が強かったおかげで湿気もほとんどとび、今日の少し高めの気温も気持ちいいと感じれるほどだった。絶好の天気と言えるだろう。
「てるてる坊主の効果があったみたいだね。」
「そりゃあ、わたしが作ったんだからね。」
メエとハルさんは楽しそうにオープンスクールに来た生徒を見ていた。
さて、そんな会話をしながらどこで中学生たちを見ていたかというと、生徒会棟の2階、バルコニーというところだ。生徒会棟は校舎とは少し離れているが、体育館に行く道の途中の十字路を曲がったところにある。
「いやー、ういういしいねー。」
「俺たちも2、3ヶ月ぐらい前にはあんなだったか?」
「私は去年のオープンスクールもガチガチでした。」
なんかラブらしい気がする。
「早く体育館に行こうよ。」
めずらしくメエが真面目だ。
「急ぐなんてめずらしいな。」
「な、なんかドキドキするんだよ。」
ああ、なるほど。
「柄にもなく緊張してんのか。」
「な!ボ、ボクが緊張なんて……」
「問題ないだろ。こんなときに緊張しないほうがおかしいんだ。自信もて。」
「そんなことに自信もちたくないよ。」
そんなことを言っているうちにメエの表情がやわらかくなってきた。
「そろそろ時間だ。」
マジさんが言ったのを聞いて、俺たちは体育館に移動した。
体育館の裏、到着したメエはそれほど緊張していないように見えた。
「客入りは92%ぐらいだよー。」
「やけに正確な数字ですね。」
「計算したからね。」
俺も数日前に聞いたのだが、ハルさんは数学オリンピックの最年少出場記録を持っているらしい。今の姿からは想像もできないが、昔は神童と呼ばれていたらしい。しかし、今は数学しか残っていないということだ。
「まあ、例年並みだな。」
「結構多いんですね。」
「この学校のオープンスクールは私服で来て、しかも説明ほとんどなし。暇つぶし感覚に来る人もけっこういるみたいだよ。」
たしかに、制服を着ているのはほとんどいない。というかいない。
「俺らも私服がいいですね。」
「このあいさつが終わったら着替えてもいいぞ。」
マジさんはそう言った。でも、メエがあいさつするだけなんだから、俺らは私服でも問題ない……メエが仲間はずれにするなって怒るな。
『続いて生徒会長、佐倉芽のあいさつです。』
上から榊の声がした。いないと思ったら放送をしてたのか。
「あれ?放送はラブの担当じゃなかったっけ。」
「ラブちゃんがね、マイクの前に立った瞬間に動かなくなっちゃたわけよ。」
「ああ。」
なるほど。そういえばあいつはあがり症か。このままだと愛川ラブの顔出しは永遠にないだろうな。
「え、えと、会長の佐倉芽です。」
そんなことを言ってるうちにメエのあいさつが始まった。
「この学校のオープンスクールにようこそ。」
おお。めずらしくまともだ。
「こういう言葉があります。夫婦げんかは犬も食わない。」
あれ?雲行きがあやしくなってきたぞ。いやいや、まだメエを信じよう。
「そのこころは……」
そのこころは?
「……なんかいい感じの意味だと思います。」
スパーン!!
たまらずハリセンを取り出し、壇上のメエの頭をたたいた。
「いったーい!!何するのさ!?」
「お前をほっといたら何言うかわからないから終了!」
「えー!!でも、まだ説明が……」
「マジさんがつくってくれた、わかりやすい学校紹介を見ればわかる。ということでここからは自由行動です。好きなように学校を見て下さい。」
「まーだー言ーいーたーいー。」
さわぐメエを舞台から退場させた。