5月ー3 カメラ
キーン コーン カーン コーン
「あの、授業が終わりましたよ。」
「ん……ん?ああ。もう1限目が終わったか。」
「もう2限目が終わりましたよ。」
「……マジか。」
予定よりも1時間も長く寝たのか。あまり寝ていないとは言え、寝すぎたな。
「そういえば、メエは来てるのか?」
「来てないみたいです。」
また来てないのか。
「どうしたんでしょうか?」
「あれでも一応、かざりだけだが会長なんだから、何日もいないのは困るな。」
そんな会話だけで休み時間はすんでしまった。
「なんかさ。暇だね。」
「麻雀はどうしたんですか?」
「勝てないからやだ。」
子供みたいな理由だ。こんなとき、ハルさんはたいてい、雑談だー!、と言って、(なぜか)テーマを設定して話していたものだが、いつもの話し相手がいないせいか気分が乗らないらしい。
「わたしたちってさー、なんだかんだ言って、メエちゃんを中心に回ってたんだよねー。」
その言葉に誰も返すことができなかった。
「今日も早いけど解散だな。」
女子メンバーはいっしょに帰っていった。そして、残ったのは俺とマジさんだけになった。
「ゼロ、大変、悲しいお知らせがある。」
「?どうかしたんですか?」
マジさんはパソコンの画面を向けた。そこには学校のいたるところがうつっていた。
「お前にまかされた学校のいろいろな場所に仕掛けた隠しカメラの映像だ。」
昨日頼んだのは、学校中に隠しカメラを取りつけることだった。もちろん、プライバシーの問題から、寮への取りつけはあきらめた。しかし、校内にはいたるところにつけてもらった。
「これにデータを送るように設定していたが……」
そのデータを見た。そこには再生時間、20秒と書かれていた。
「20秒?このごろのパソコンはそれだけしか再生できないんですか?」
「違う。誰かがデータ送信をできなくしたらしいんだ。」
「はい!?つまり、撮影は失敗ってことですか!?」
「……すまない。」
まさか、こんなことになるとは思ってもいなかった。マジさんにカメラの場所を教えてもらい、確認をしてみたが、よっぽどのことがないかぎり見つからないだろうという位置だった。
「もう一度、やってみようとは思う。今度はカメラ自体にも録画機能をつけとおこう。」
こういうことに関しては負けず嫌いらしく、いろいろと考えてくれている。しかし、それではだめだろう。これはただの勘だがそんな気がする。
体育館……体育館は普通の体育館。広さからいえば広いほうだが、特に特別な機能が付いているわけではない。