5月ー1 波乱の予感
「今日は麻雀しよう!」
ハルさんは仕事が終わった瞬間にいきなり言い出した。
「今度は何の影響ですか?」
「気にしない、気にしない。ちゃんと自動卓も用意したよ!」
そう言って奥から自動卓を引っ張り出してきた。ここは2階なのだが、今日のためだけに持ってあがったのか。よくやるな。
「あの、自動卓って何ですか?」
「麻雀の準備を勝手にしてくれるみたいな感じだよ。」
「やることには問題ないんですけど、誰かできるんですか?」
「もちろん、わたしにマジに榊ちゃん、そしてゼロだよ。」
「うん、な……はい!?」
なんで俺が麻雀をやることになる。
「もちろんできるよね?」
「まあ。」
「ということでするよ!」
「は、はい。」
この状態のハルさんを止めるすべはない。
さて、麻雀が始まったが、当たり前のようだがマジさんと榊がいい感じに勝ち続け、ハルさんはいい感じにカモになった。
「なぜ嶺上開花が来ない?」
「ハルさん、?マークが出まくりそうな用語を出さないで下さい。」
「あのさ……」
さあ来た。今回はどんだけバカ質問がとびだすのか。
「今日は疲れちゃったから、先に帰るね。」
「は?」
「へ?」
「今、何て?」
全員がメエの言葉を疑った。あの明るく、バカ一直線、ある意味で無尽蔵のスタミナを持つメエが帰る?
「どうした、メエ。体調でも悪いのか?」
「うん、そんなところ。」
どうも覇気がない。でも、これ以上踏みこむか。
「じゃあ、俺も帰るから、ちょっと待ってろ。」
「待てい!まだ終わってないぞ!」
「これで終わりですよ。カン。嶺上開花。」
「きゃーーーーー!」
ということでメエと帰ることとなった。
寮までの短い間だが、メエはため息ばかりだった。
「風邪か何か?」
「うん。」
「大丈夫なのか?」
「うん。」
「……俺が好きか?」
「うん。」
だめだ。完全に上の空だ。……冷静に考えると、2人っきりでいて、しかもあんな質問をしたらつきあってると勘違いされないか?もっと質問の内容は考えるべきだったな。さいわい、周りには誰もいなかったし。
「じゃあ、ここでね。」
いつのまにか寮の前まで来ていた。
「ああ。」
「ばいばい。」
「おう。」
やっぱり元気がない。体調がよくないのも本当なのかもしれないが、それだけではないだろう。しかし、メエが体調がよくないとしか言ってないのに、これ以上は無駄だろう。
寮に帰っていくメエの後ろ姿が見えなくなるまでいた。
「どうするんだ?」
「うわっ!」
後ろにマジさんがいた。
「いつからいたんですか!?」
「ゼロの情熱的な告白からだ。」
マジさんの記憶を消す方法はないものか。
「たのむから、私を倒すような計画を頭の中で考えないでくれ。」
やっぱりだめか。
「それよりも、会長はどうなんだ?」
「見ての通り、完璧に上の空。まったく外からの情報を受けいれていませんでしたね。」
「それはいつものことではないのか?」
「こういうときにそういうツッコミは控えてください。」
そんなことを言ってしまったら、わざわざ問題にあげるほどのことなんてなかった。
「まあ、私も原因を調べておこう。」
「それはさりげなく俺にも調べろってことですか。」
マジさんは無言の笑顔を俺に向けてくれた。
「……善処します。」
これだけ言って部屋に戻った。
校舎……開明高校の校舎は3つあり、A棟は職員室などの教師が多く使うであろう部屋、B棟は生徒たちの教室、C棟は特別教室がある。また、これとは別に文化部の部室がある旧校舎もある。