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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
12月
171/172

エピローグ

 ゼロくんがいなくなってだいたい3ヶ月経ちました。ゼロくんはクリスマスの次の日、朝早いうちに学校を出ていったみたいです。


 しかし、意外と問題は起きませんでした。みんな、なんとなくゼロくんがいなくなることは感じてたみたいです。いなくなった驚きよりも、黙っていなくなったことのほうが文句が多かったぐらいですから。


 生徒会は5人で再始動しました。ゼロくんがいなくなった穴を、風紀部の志木さんや式守さんを入れて補充する案もありましたが、副会長なら真島先輩もいるし、時期的にも難しいということで5人のままになりました。最初こそ馴れずに忙しかったけど、すぐに馴れてしまいました。


 そして今日、私たちは斑目先輩たちの代の卒業式を迎えてました。


「続いて、学校長挨拶です」


 私の上がり症も少しは治って、今は卒業式の司会をしています。それでも壇上で話したりはできませんけど。


「以上です」


「礼」


 私の号令に合わせてみんなが座ったまま礼をした。


「在校生、送辞」


 そしてある意味、一番不安なときが来てしまいました。


「在校生代表、佐倉芽」


「はい!」


 当然、在校生代表はメエちゃんです。メエちゃんは壇上にゆっくりと上がって礼をした。そして、マイクの高さを合わせ、懐から紙を取り出した。


 メエちゃんは今日のために原稿を用意しました。いままでアドリブしか使わなかったメエちゃんにしては異例のことです。


「送辞

 だんだんと春の息吹を感じられるようになった今日この頃、卒業生のみなさま、ご卒業おめでとうございます」


 ほとんどお決まりの始まり。ただ、その声はいつもの数倍固い。実は、メエちゃんにとってこれが、ゼロくんがいなくなってから初めての多くの人の前で話す場面だったりする。そして、メエちゃんは慣れない読むという行為をしている。


 メエちゃんは少しずつ詰まり始めた。結果は火を見るより明らかだったと思う。生徒会メンバーもみんなわかっていたと思う。でも、何かを振り払うように原稿を書くメエちゃんを止める言葉は、誰にも見つからなかった。


 詰まるとメエちゃんはいつも視点を揺らした。私にはわかる。探しているのだ、ゼロくんを。メエちゃんはゼロくんが好きというわけではない。でも、誰よりも信頼しているのは間違いなくゼロくんだ。だから、助けてくれるゼロくんを探してしまう。


「うるさい会場だな」


「えっ?」


 だんだんざわざわし始めた体育館にそんな声が聞こえた。それは決して大きな声ではなかったが、不思議とはっきり聞こえた。


「ゼロ?」


 マイクに入らないほどの小さな声でメエちゃんがそう言った。私にも見えた。体育館の入り口。そこに堂々とふてぶてしく、ただあくまで自然体にいるゼロくんがいた。そんなゼロくんの口が動いた。


「……え?」


 ゼロくんがなんて言ったかは私には聞こえなかった。そして、ゼロくんは何事もなかったかのように体育館の後ろの壁にもたれた。


「……」


 メエちゃんは突然静かになった。少し下を向いたまま、ゆっくりと深呼吸しているのはわかる。すると、突然、原稿を破った。保護者や教師は小さく声をあげ困惑した。しかし、卒業生と在校生は笑った。


 それでこそ、開明高校の生徒会長だと言わんばかりに。


「ボクは寂しい」


 そして、メエちゃんはしゃべり始めた。


「もっといろんなことを教えてもらいたかった。もっと支えてほしかった。……でも、別れなくちゃいけない」


 それはまるで卒業生に贈りながら、違う人間にも贈ってるようにメエちゃんは話す。


「だから、ボクは全力で笑って送りたい。そう思う。不安にさせないために。大丈夫だと安心して出ていけるように。だから、ボクは笑顔でこの言葉を贈ります。ありがとうございました」


 そう言うとメエちゃんはマイクから1歩離れた。


「礼」


 私はあわてて礼の掛け声を出した。出来るだけ予定通りだったように。


 でも、予定通りじゃなかったことを知ってる先生たちの動きが騒がしい。このままだと間違いなく、メエちゃんは壇上を降りたらすぐに捕まって、もしかしたら謝罪を言わされるかもしれない。


 でも、助けれない。いろんなシナリオを考えてみたけど、私がここを動いたら間違いなく先生たちが司会のマイクを奪う。そうなったら、進行が先生たち主導になる。そうなったら、メエちゃんの謝罪を強引に挟むことも簡単になってしまう。


「ラ〜ブちゃん」


「ふあ……」


「しー」


 突然、後ろに斑目前会長が現れた。


「すぐに答辞にして」


 斑目前会長はそう言って、こそこそと自分の席に帰っていった。


「卒業生、答辞」


 斑目前会長の言った通り、すぐに進行をした。メエちゃんが降りた直後で、先生たちも早すぎるタイミングにこっちをにらんできたけど、そのまま進める。


「卒業生代表、斑目龍騎」


「はい」


 斑目前会長は立ち上がると壇上に上がる階段の前に立った。そして懐から原稿を取り出すと、それを破いた。


 先生たちや保護者が、またギョッとする。しかし、斑目前会長は気にせずに階段を上っていく。


「さてと……」


 礼をすることもなく、マイクを台から外して手に持った。


「在校生よ! お前たちの思っていることはよ〜くわかった!」


 手を大きく振って、オーバーリアクションで斑目前会長は語り出した。


「だが、だからこそ言わせてもらおう。俺らをかまうな」


 衝撃発言に体育館がどよめいた。


「俺は会長としていろいろなことをやってきた。俺らの住みやすいように、いろいろな仕組みやルールを変えてきた。でも、俺らは今日でこの学校を卒業する。そんなやつらのことなんか気にするな!」


 斑目前会長は続ける。


「俺らと別れるのが寂しい? いいじゃねえか。今生の別れでもないし、気にする必要はない! 俺らにもっと教えてもらいたかった? ここからは自分たちで切り開け! 俺らに支えてほしかった? これからは自分たちで学校を支えるんだ!」


 それは、本当にメエちゃんに答える『答辞』だった。


「だから無理に笑うな。俺らが不安かどうかなんて気にするな。自分の感じたことを大事にしろ!」


 斑目前会長が笑う。


「それが俺らからの答辞だ」


 そう言ってマイクを台に置いた。そして、何事もなかったように壇上から降りていく。


 パチパチパチパチ……


 最初は3年生から。そして、ゆっくりと2年生、1年生に伝達していく。


 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!


 それは保護者にまで伝達した。体育館が拍手に包まれた瞬間だった。そして、そんな中ゼロくんは、すでにいなくなっていた。







「最後まで見ていかなくていいのかい、ゼロくん」


 白桜の前で待っていたのは、白衣に身を包んだまぶしいオレンジ色の髪を持つ男だった。


「誰と間違っているか知らないけど、俺の名前は音無 希。編入候補の高校を見学しにきた、ただの16歳だ」


「なるほど。それは失礼しました」


 笑いながらうやうやしく頭を下げる。


「では、音無くん。式の感想をお願いしてもいいかな?」


「……この学校は、まだ変わっていくだろうな」


 俺は静かにそう答える。


「それがプラスかマイナスかはわからないが」


「なるほど」


 オレンジ髪は嬉しそうに頷く。


「迎えが待っているので、失礼します」


「あぁ。また会おう」


 俺はそれにリアクションせず、門に向かった。


「お帰りなさいませ、希ぼっちゃま」


 門の前にはじいとよく見る5人乗りのファミリータイプの車。正直、リムジンは気に食わないからこっちにさせた。


「ああ」


 ゆっくりと後ろの座席に座った。じいが運転席に乗ると、すぐ出発した。


「どうでしたか?」


「何も。ただの見学だしな」


 じいの曖昧な質問にそう答えた。


「では、開明高校に戻られますか?」


「あそこに行ったのは初めてだぞ」


 俺はそう答える。


「ただ……」


 さっきの場面を思い出す。こっちを見たメエにこう言った。


『1人でやってみせろ』


 それで立ち直った。十分、生徒会長できていたが、まだまだ不安定。そして、それを支えるあの雰囲気。変わっていなかった。だからこそ……


「音無グループの代表の心を揺るがす学校だ」


 俺は軽く笑いながら、そう言った。


 ここまで読んでくださった、もしくはここだけ読んでくださったみなさま、ありがとうございます。

 ただ、あと1話だけ入れさせてもらいます。エピローグの後に続くのかよと思うかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。

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