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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
12月
162/172

12月−16 最強と戦う流れ

 更新遅れてすみませんでした!

 大雑把に説明するとデータが飛んで復旧しました。

 たぶん、もう大丈夫です。

「……不気味だな」


 メエのいるであろう建物には入れた。しかし、さっきまでは大量発生していた黒服たちがまったくいない。それどころか、人がいない。


 俺は警戒しながら建物を進んでいく。一応、他の場所も確認しているが、本命は決まっている。この建物で唯一、外から丸見えになってしまう縁側を通らないといけない部屋がある。警備の関係などを考えると、間違いなくそこだろう。


「……やっぱりか」


 縁側を通っていくとき、予想通りいた。手に長めの刀を持った黒服。あのときの黒服だ。


「お前が最後の砦か」


「……わからんな」


 黒服は虚空を見つめて、独白のようにしゃべり始めた。


「お前らのやっていることは自らの身を滅ぼすようなものばかりだ。さらに、お嬢様を助けたところでまたすぐに連れ戻されるだろう。それはわかりきったことだ」


 黒服はやっとこっちを見た。


「お前らはそれでもお嬢様を助けるのか」


 なるほど。あきらめろということか……


「……うちの姫さまは無能なんだ」


 今度は俺がしゃべりだした。黒服は黙って聞いている。


「バカで子供っぽくて、仕事もできない。むしろ邪魔してくる。おそらく、歴代でも最弱の姫さまだろう」


 俺は縁側から庭におりた。


「それでもな、あいつは帰りたいと言った。はっきりとそう言った。理由なんてそれで十分だろ」


「……そうか」


 黒服は鞘から刀を抜いた。出てきたのは少し長めの刀。太刀だ。俺は木刀を構えた。


 どちらも動かない。静かな時間が流れる。先に動いたのは俺だった。構えから黒服に木刀を投げつけた。


 キンッ!


 しかし、そんな奇襲も想定済みだったのか、刀の先で少しさわって軌道をずらした。


 だが、それで十分。


 俺は一気に距離を詰めた。どんなに小さな動作でも、完全に構えている状態に比べれば少しは隙ができる。俺は背中から新しい武器を取り出そうとしながら最大速で突っ込む。


「いい手だ」


 そう言って黒服は後ろに一歩半だけ下がった。


「ちっ!」


 俺は急停止して後ろに跳んだ。


「あれで攻撃の判断を切るか。かなりの使い手みたいだな」


 かなりのチャンスだったが、うまく避けられた。あいつが動かなかったら直撃は無理でも防御行動、もしくは大きく回避ぐらいはとらせたはずだ。しかし、黒服は一歩半下がった。


 一歩半


 たったそれだけの距離だが、それだけ伸びれば選択肢が格段に増える。あのまま突っ込んでいれば最良で右腕、最悪の場合真っ二つになってた。


「やっぱり正攻法しかないか」


 俺は背中に隠し持っていた武器を取り出した。それは鍔のついている、鞘に入った武器。俺はそいつを鞘から取り出した。出てきたのは、表面に光沢も持った竹。


「竹光か」


 竹光。そのまま刀身を竹にした刀だ。


「重さを殺して速さで戦うつもりか?」


 竹光は竹でできているため、木刀などに比べるととてつもなく軽い。それゆえ、現在ではもっぱら演劇の殺陣たて(刀をぶつけ合って戦いのシーンを描く演技)に用いられている。


「居合でも使うのか?」


「残念ながら」


「……わからんな。わざわざ弱くなるのか」


 レーザーのような兵器でもない限り、威力というものは速さ×重さに比例する。だが、人間の力では速さに限界があるうえに、常に高速で攻撃できるとは限らない。それゆえ、居合のようにどんな場合でも最高速で攻撃できる特殊な技でもない限り、戦いで重要なのは重さだ。


「心配するな」


 少し本気を出す。それで十分だ。


「行くぞ」


 俺は距離を詰めた。距離はあったが、それを三歩でゼロまで。


「なっ!?」


 ギンッ!


 当たったかと思ったが、刀の峰で受けられた。そして、黒服は大きく後ろに下がった。


「……なるほど。ただの高校生ではないわけか」


 黒服はそう言ってサングラスを外した。その下にあった眼は少し目付きの悪いが、そこまで特別なものとは思えない。そして、左右にゆらゆらと揺れ始めた。


「……なんのつもりだ?」


「君に敬意を評して、本気で戦わせてもらうことに決めたんだ」


 揺れているが構え自体は変わっていない。単純に狙いにくくするための行動なのか? しかし、それくらいの揺れなら問題ない。


 俺はさっきと同じように近づいた。今度は四肢の付け根を同時に打ち抜かせてもらう。


「四点円突」


 スカッ!


「え?」


 最初に右肩を打ち抜いたと思った。しかし、いままでそこにあったはずの右肩がない。まるですり抜けたように。


 そして、横から斬り掛かろうとする黒服が見えた。俺は勢いを殺さずに転がってそれを紙一重で回避した。


「はずしたか」


 ……あいつは一体何をした? ただの回避ではない。ただの回避が見えないほどバカな目ではない。


「この技の名は陽炎という」


 陽炎。ぴったりの名前だ。


 さて、しかしヤバイことになった。そもそも俺の連続突きはすべて、相手に当たった反動ですぐに構えを取っているため、当たらない場合、技が使えない。


「こないならこちらから行くぞ」


 今度は攻めにきた。弧を描くように近づいていき、袈裟切りを狙ってきた。


「そこだ!」


 俺はそれを避けるとカウンターを狙った。狙いは無防備な右腕。俺はそれを引きながら打った。


「あまいな」


 完全に当たったコースのはずだった。しかし、刀は空を切った。


「またか!?」


 そして、刀がとんでくる。


「くっ!」


 避けきれずに少し当たってしまった。しかし、嫌な予感がしたから威力の落ちる引き打ちを選択したからよかったが、普通に攻めていたら完全に右腕を落とされていたぞ。


「後で治療費と慰謝料請求してやる」


「腕一本で済むと思っているのか?」


「心配するな。あんたの陽炎、種は割れた」


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