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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
12月
159/172

12月-13 決戦前夜

 なかなか更新しなくてすみません! できるだけがんばるのでどうかご容赦を!

「……ハル先輩」


 夜。私はもう1回屋敷を見てくると言って出てきたハル先輩を追いかけてきた。


「おやおや、ラブちゃん。そちらも砦を落とす算段かい?」


「……ハル先輩は今回の作戦、成功率はどれくらいだと思いますか?」


 私はそう言った。


 ゼロくんにも聞いたけど、数字は苦手だと言ってはぐらかされた。でも、ハル先輩なら答えてくれると思った。


「低いよ〜」


 ハル先輩はふざけたような声を出して人差し指を立てた。


「1%以下」


「……え?」


 私は思わず声を出してしまった。低いとは思っていたが、ここまで低いとは思わなかった。


「そんなに、ですか?」


「私の見立てでは、だよ。相手の人数がわからないけどこの広さだし結構な数がいるだろうし、たぶんゼロは電撃作戦を提案すると見るね」


「電撃作戦?」


「できるだけ短時間で目的を達成させるってこと」


 ハル先輩がちゃんと説明してくれた。でも、なんで電撃作戦なんでしょうか?


「この人数だからね。真っ正面からぶつかったら間違いなく負ける。だからゼロは3ヶ所から攻めて、戦力を分散させて最短でメエちゃんを救出。そのまま逃げるつもりだと思う」


 作戦を聞くとそれが最良だと思った。でも厳しい作戦だと思った。


 ゼロくんの時間がかかりすぎてもダメ。私たちが崩れてもダメ。私たちが長く耐えればゼロくんの動ける時間は長くなるけど、こちらに人を寄せられなければゼロくんが厳しくなる。


 とてもギリギリで不安定なバランスの上に立っている作戦だ。


「だから確率は1%以下。ギリギリのギリギリな作戦だよ」


 ハル先輩はメエちゃんが捕まっているらしい小屋を見下ろした。そこは薄く明かりがついているのがわかる。


「まあ、かわいい後輩のために一肌脱ぐのも先輩の役目だよね」


 そう言ってハル先輩は小さな風船を投げた。


「どっせ〜い!」


 そして、それは見事に川に着水した。


「あの、なにを……?」


「ひ・み・つ」


 よくわかりませんけど、ハル先輩だから意味があると思います。


「助けたいよね」


 そのときのハル先輩は悲しみと喜びを含んだ表情をした。


「はい」


 そう答えて、私もメエちゃんのいる小屋を見た。






「……まだやってるの?」


「榊か」


 私は画面から目を離さずに言った。


「ゼロ副会長から差し入れ」


 横に何かがきた。それはカロリーメイト、メ○プル味だ。


「まともな食事は取らないだろうからって。お茶も預かってる」


 そしてさらに転がってきたのはペットボトルのお茶。名前は『どっせ〜い お茶』


「ありがたくもらっておく」


 私は箱を開けると1本を口に運んだ。


「……いまさらだけど、マジ副会長ってメエちゃんにいつも従ってる。なんで?」


「なんで?」


 なんでと言われても困るのだが。


「マジ副会長ならもっと上に行ける」


「それは買いかぶりだ」


 私は作業する手を止めて榊の方を向いた。


「私は凡人だからな」


 榊は不思議そうに首を傾げた。


「凡人というものは決まって天才に憧れて嫉妬する。そして、それを分かりながら天才についていく。たいていの凡人はそういうものなんだ。

 私はただの凡人だからな。会長の才能をうらやみ、嫉妬しながらついていくんだ」


 生徒会に入って2ヶ月間悩んだが、私はそうだろうと感じた。


「……ゼロ副会長はすごい」


 榊が突然、ゼロの話を始めた。


「戦えば私なんかよりずっと強くて、作戦もいつも考えてる。ゼロ副会長は間違いなく天才」


「その通りだな」


 ゼロならば会長と肩を並べられるはずだ。


「そんなゼロ副会長が唯一、作戦を任せるのが真島副会長、あなただけ」


 榊にそう言われて思い出してみた。たしかに、作戦を考えるのはゼロを除くと私だけだ。


「ゼロ副会長は真島副会長が作戦があると言えば、内容も聞かずに信じる」


 ……言われてみればそうなのかもしれない。


「生徒会は憧れでも、才能ででも繋がってない」


「ならばなにで繋がっている?」


「どんなときでも相手を信じて、信じられる」


 榊が間をおいた。


「人はそれを『信頼』と呼ぶ」


「え……」


 榊はそこまで言うとさっさと帰ってしまった。


「『信頼』か……」


 言われるとそれで納得してしまう。11月のときも、信頼しているからこそゼロの裏切りを、何か作戦があるだろうとわかっていながらあそこまで感情的になってしまった。


 信じてたからこそなのだろう。


 私はパソコンにまた向かった。


 ならば私は凡人なりに頑張ろう。こんな凡人が信じる仲間のために。こんな凡人を信じてくれる仲間のために。


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