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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
12月
155/172

12月−9 すべてを選ぶかいとう

『……なので冬休みは……』


 12月24日。今日は終業式の日だ。今は生活指導の教師が冬休みの諸注意を説明している。


『……して、ちゃんとケガのないようにすること』


 長かった生活指導の話が終わった。いつもならこれでおしまい。しかし、今回はこれで終わらない。


『続いて生徒会から緊急生徒総会です』


 司会の先生はそう続けた。体育館はあきらかなブーイングはないが、なんか嫌なムードは流れている。


「……質問だ」


 そんな雰囲気のなか、放送が流れ始めた。突然のことに体育館は少しざわざわし出した。


「学校は、好きか?」


『え?』


 メエの声が聞こえて、スピーカーに集中が集まる。


『……大好きだよ』


「どんなところが?」


 俺は間髪入れずに続けた。


『みんなが優しくて、楽しそうで、いつも笑顔で、いたら温かい気持ちになって……みんな……』


 どんどん声が小さくなっていく。


 そして、体育館もどんどん静かになっていく。


「……メエ、帰りたいか?」


『……たいよ』


「え?」


『帰りたいよ!! 帰ってみん』


 メエの電話が切れて、放送も切れた。すでに、体育館は静まりかえっている。


 俺はそんな中、壇上に上がった。


「これが会長の言葉だ」


 シーン、となっている体育館に俺はそう言った。


「この生徒総会では多数決を取りたいと思う。生徒会が現生徒会長、佐倉芽を助けに行く。それについて」


 それに対して生徒側だけでなく、教師側もざわついた。


 俺達生徒会は、メエの奪還を同じ学校の仲間たちに決めてもらうことにした。すべてを生徒会が決めては意味がない。だから、あいつが誰もからいてほしい存在かを聞くことにした。


「質問していいですか?」


 そう言って、手を上げたのは式守だ。


 開明高校は集会のとき、一番前に学級委員長が並び、後ろは出席番号順に並ぶ。そして、生徒総会は学級委員長が質問をしたりする。


「どうぞ」


「今回、会長を助けに行くと言いましたけど、生徒会のみですか?」


 そういえば、式守は学級委員長だったな。いつかの敵意むき出しの雰囲気とは全然違うな。当然かもしれないけど。


「そうです。基本は生徒会が動きます」


「なら、私もよろしいですか?」


 今度は志木さん。


「会長を助けに行くのはいつごろからするつもりですか?」


「今日ここで賛成多数となったらすぐに」


「今日すぐに、ですか?」


 志木さんだけでなく、他の一部の生徒も驚いていた。すぐに行動は予想外だったみたいだ。


「俺もいい?」


 軽い雰囲気で手を挙げたのは斑目先輩。俺はなんとなく身構えている。


「……どうぞ」


「会長を助けに行く。かっこいいねぇ。でも、それの影響はわかってる?」


 ……影響?


「君達は生徒会として行くわけだ。つまり、君達の行動は学校の評価につながる」


 ……体育館に大きな変化はない。しかし、俺は動揺を隠すのに必死だった。


 もし問題を起こしたら学校の評価が下がる。斑目先輩は暗に『成功しようとも多くの生徒や学校に迷惑をかける可能性がある』ということを伝えていた。


「さて、答えてもらえる?」


 斑目先輩は目を細めた。ここで間違えたらおしまいだと訴えかけるように。


「答え、ですか」


 きっとメエなら心に思ったことがこの場の答えになるんだろう。でも、俺は計算して正解を導かないといけない。まったく、最悪だ。


「会長は学校の代表であり、1人の生徒です。1人の生徒を助けられないのに、多くの生徒を助けることが……」


「そんな解答は求めてないよ」


 自分でもかなりできあがっていた解答だと思った。突然言ったが、他の生徒もいい解答だと聞いていた。


 しかし、そんな解答は斑目先輩によってぶった切られた。


「君の回答を聞かせてくれ」


 斑目先輩はそう言った。


 正直、斑目先輩の求めている回答はわかっている。しかし、それは間違っている。きっと斑目先輩は納得させられる。しかし、その代償にここの大半の票を失うだろう。


 ……最悪な気分だ。俺は選ばされている。解答を示すのか、回答を示すのか。


 ちょっと心を落ち着かせよう。そう思って考えをやめ、前を見た。


 そこにいたのは開明高校の生徒。壇上という場所は意外と人が見える。こっちを見ている奴もいれば、完全に明後日の方向を見てる奴、眠そうな奴も見える。……あいつは、この視線を集めていたのか。


「……さっきも言った通り、メエは1人の生徒です」


 俺はしゃべり始めた。


「メエ1人を助けられないようで多くを助けられるわけがありません。しかし……」


 ただ何も考えず、ただ口を動かす。


「これがメエじゃなかったら、きっとここまでしません。俺はいろんなことを言ったが、結局はメエを助けたい。それが……俺の回答だ」


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