12月−7 そんなこんなでカロリー
「もう3時か」
仕事を全部終わらせたころには、もう午後の3時前だった。
「……昼飯、食い損ねたな」
この時間だし、近くのコンビニかどこかで菓子でも買って食うか。
「……ゼロ」
そう思って生徒会棟を出たところで、榊と遭遇した。手にはセブン○レブンの袋。
「こんにちは」
「ああ、こんにちは。榊も仕事か?」
「違う」
仕事じゃないのにここに来た? この辺に他の建物はないはずだが。
「ハルから、
『ゼロがたぶん、ずっと仕事してお昼ご飯を抜くとハルちゃんは予想する。しかし、ハルちゃんはアニメを見たり、オンラインゲームで忙しい。だから、なっちが届けて』
と、言われたから届けに来た」
……このごろ、あの人がすごいのかすごくないのかわからなくなることが多い。普通じゃないのはわかるけど。
「ということで、これ」
「サンキュー。何買って来たんだ?」
「カロリーメイト、チ○コレート味」
「なぜそこを隠した!?」
「? 違う味にすべきだった?」
「いや、そこじゃなくてだな……」
「初キッスの味がよかった?」
「そんなのあるのか!?」
「ない」
「ないのかよ!」
「そうね」
どういう流れだ!? いや、落ち着け、俺。常識で考えたらあるわけがない。落ち着けがわかるだろ。これは榊の雰囲気にのまれてるんだ。
「ちなみに飲み物はカロリーメイト、缶タイプ」
「どんだけカロリー重視だ!!」
閑話休題
「まだいろいろと突っ込みたいが、とりあえず感謝する」
さすがに飲み物まで飲むとカロリーがひどいことになりそうだったから、その辺でお茶を買った。
「何円?」
「何が?」
「こいつ。おごってもらうわけにはいかないからな」
なんとなくの値段はわかるが一応聞いておく。
「いらない」
いらない? こっちの財布にはありがたいが、なぜ?
「かわりに聞いてほしいことがある」
なるほど。榊もハルさんに頼まれたといえ、俺に飯を届けるためだけにこんなところまで来るはずないか。
「いいぞ」
聞くだけならそこまで大変じゃないだろうし、質問ではないみたいだし。
「困ったことになった」
「困ったこと?」
榊の困ったことって、いったい何だ?
「……人を踏めない」
「……それはいい傾向だろ」
二重の意味で予想の右斜め上の言葉が飛んで来たため、かなり普通の答えを返してしまった。
「後ろ盾がないから踏めない」
「よし、お前が捕まっても生徒会は全力でお前を擁護しないことにしよう」
榊は少し不満そうな表情をした。いや、なぜ不満気? 自分のしたことぐらい自分でどうにかしてくれ。
……ん? 後ろ盾がなくなった? ……おかしいだろ。榊は相変わらず生徒会役員だ。なんで後ろ盾がなくなるんだ?
「会長の存在はそれほど大きかった」
榊は俺の疑問に答えるように言った。
「私はなんでメエが会長になったかがわかった気がする」
メエが会長になった理由? たしかに、あの斑目先輩が単純な理由だけで決めるとは思えないが、そんなに重要な理由があるのか?
「メエは、人を踏んでも許してくれる」
「そこ!?」
俺はため息を大きくついた。
榊が言うのだから何か特別な理由が出てくるのかと思ったら、かなり個人的な理由だった。
そもそも、俺は何を期待してたんだ。あのメエが選ばれた絶対の理由なんてあるわけがないだろ。
「それと、誰も裏切らないから」
「裏切らない?」
榊が同じ表情で言った。
メエが誰も裏切らないから、ということか? あのバカだからわからないことはないが、なんでこの一件でわかったんだ?
「……私はそろそろ戻る」
相変わらずの無表情で榊は言った。
「そうか。飯、サンキューな」
結局、よくわからないままだったな。榊の考える、メエが会長に選ばれた理由。
「……もう1つ伝言。『本日の5時、校舎の屋上で待ってます』」
「……え?」
あまりにも同じテンポで言われたので、すぐに反応できなかった。
そして、その反応の遅れで榊に細かい説明を求める前に、さっさと帰られてしまった。
俺は時計を確認してみる。時間は4時半ぐらい。
「……行くか」
ゆっくりと屋上を目指した。