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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
12月
148/172

12月-2 いや、死んでねえし

「失礼しま……」


「なんで、なんで死んでしまったんだ、メエちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 生徒会室に入ったら、いきなりハルさんが机に立てたメエの写真に向かって泣いていた。ご丁寧に写真立てに入ってるメエの写真はモノクロ。


 そして、ハルさん以外のメンバーは全員、黙々と仕事を片付けている。


 ……シュールだ。


「……ハルさんは何をやってるんですか?」


 いろいろと聞きたいことはあるが、とりあえず一番近くにいたハルさんから片付けることにした。


「簡単だよ。メエちゃんがちゃんと成仏できるように規模は小さいけどお葬式を敢行したんだ」


 1つの文章の中に突っ込みどころがかなりあったぞ。


「……とりあえず、規模が小さいって、親族どころか坊さんや線香すらないこの状況を葬式と言いません。いいところ茶番です。

 次に、敢行する、って、たしか悪条件だけど押しきってやることのはずですよね? 状況的には間違ってないでしょうけど、葬式を敢行しないで下さい。成仏できるものもできなくなります。

 最後にこれが一番重要ですけど、メエは死んでませんから」


「じゃあ、どうして会長が来ていないんだ?」


 パソコンで作業をしていたマジさんが立ち上がって、こっちにやって来た。隠そうとしているのだろうが、その声や表情には怒りが感じとれる。


「謎のリムジンにさらわれていったからか?」


「……情報が早いですね」


 ちらっとハルさんを見ると、こっちにピースサインをしていた。この人が情報源か。


「なぜ会長を助けなかった?」


「簡単ですよ。あれがそれを望んでいなかったからです」


 俺はそう言った。だが、マジさんは納得いかない様子だった。


「藤原が撮った写真を見せてもらった。会長は……泣きそうな表情だった」


「最後には笑ってましたよ」


「あれが作り笑顔なのくらいわかるだろ!」


 マジさんの語気が強くなった。


「写真でもわかった! 今にも崩れそうな作り笑顔だと! その場にいたお前なら確実にわかっただろ!!」


 メエが作り笑顔だったことぐらいわかっている。しかし、それでも助けてはいけない。

 俺は何も言わなかった。それは、マジさんに無言の肯定と取られた。


「わかっていて、なぜ助けなかった?」


「理由はさっき言った通りです。他の理由には、リムジンに乗ってきた人間が迎えに来たと言っていて、メエがそれを受け入れたからもあります」


 冷静なマジさんだったらこれである程度わかっただろう。しかし、今のマジさんは止まってくれない。


 バシッ!


 マジさんの拳を止めた。


「真島先輩!?」


 ラブがかなりあわてている。


「なぜ、止める?」


「俺だって痛いのは嫌ですからね」


「こういうときは、殴られるべきでは?」


「こういうときに殴られるのは主人公だけですよ。俺は、そんなにかっこよくないですから」


 マジさんの逆の手が動く。


「ストップ」


 しかし、それはハルさんによって止められてしまった。


「なぜ邪魔をする!?」


「マジが暴力っていうのは違うでしょ。それよりも、他にすることがあるとハルちゃんは思うわけですよ」


 ハルさんの言葉にマジさんの表情が少し変わった。


「……長峰、学校に外泊届をもらってくれ。理由はなんでもいい。私がに会長がいるのか調べてみせる」


 マジさんが指示を始めた。メエを助けるために。そこにはさっきみたいな怒りは感じない。


「マジさん」


「どうした? 手伝って……」


「諦めて下さい」


 だから、俺は止めた。


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