12月-1 バイバイ
すみませんでした!!
あんな予告を出しておいて1ヶ月放置って、殺されても仕方ないレベルですよね。でも、殺さないでください!! 死にたくない!!
そんなわけで、ゆっくりとですが更新していくのでよろしくお願いします。
「さて、ゼロ。もうすぐ何があるかわかる?」
スキップをしながらメエが聞いてきた。表情はもちろん笑顔。
生徒会棟に行こうと思ったら偶然、メエと出会った。なんかハルさんやレンがいたら、それだけでいじってきそうだが。まあ、いないからいいか。
そして、いきなりこんな質問をされたわけだ。
「もうすぐ通知表が渡されるな。今年はどんな成績になってること……」
「わー! わー! そんな楽しくないことじゃなくて、楽しいこと!」
「楽しいこと?」
本日は12月22日。今年の残り日数も少ないし、学校行事も終業式と通知表の返却ぐらいしか残っていない。楽しいことなんてないだろ。
「ゼロ、もしかして、本気で忘れた?」
やばい。メエが本気で心配し始めた。さすがに冗談もやめどきか。
「忘れてないさ。クリスマス会だろ」
クリスマス会。なんでもメエが「クリスマス予定ねぇー!」や「リア充爆発しろ!」とかを言ってるのを聞いたらしく、みんな暇みたいだからクリスマス会をしようとメエが言い出した。
まあ、言い出したのがメエでも用意したのは周りなわけで、それで忘れるほどボケてはいない。
「うん! そうだよ! ちゃんと覚えてるね!」
「当然だろ。用意しといて忘れるか」
「さすがゼロだね」
この程度でさすがと言われるとはな。
そんな他愛ない会話をしていると、すぐに白桜の前に到着した。
「あ! 芽!」
メエの指した先に、まだまだ花開くまでは遠いだろうが、しっかり咲く準備をしている白桜の芽がいくつもあった。
「今年も咲くかな?」
「咲くだろ。今年も咲いて、そしてこれから先も見守ってもらわないとな」
「そうだね」
そして、この白桜を残したのはメエの力だ。そう思うと、なんとなくメエの頭を撫でてやった。
「ふにゃっ!? な、何!?」
突然、変な声をあげるから思わず離してしまった。
「頭を撫でただけだが、嫌だったか?」
「嫌なわけじゃないけど……あれ?」
「前はこんなことなかったろ」
「そうだよね? なんでだろう?」
冗談で言ってる様子はない。よくわからないことになってるのか? ……だったら、話を変えるか。
「そういえば、お前の誕生日ってクリスマス会と同じ日だったよな?」
たしか、メエの誕生日はクリスマス、12月25日だったはず。
「なんで知ってるの!?」
いや、そんなマジで驚かれても困る。
「生徒会新聞でやったろ」
「……そういえばそうだね」
思い出してくれたようだ。
「せっかくだし、誕生パーティーでもするか?」
「え? 誰の?」
「いや、メエ以外誰がいる?」
「え? ……えーっ!!」
なぜそこまで驚く? この流れでメエ以外だと、それこそいじめだろ。
「ボクの誕生日!? なんで!?」
なぜ誕生日を驚く?
「ボクなんかのために誕生パーティーなんかしたら、天罰が当たるよ!!」
「誕生パーティーで天罰当たってたまるか! それに、お前は生徒会長だ。ボクなんか、じゃないだろ、生徒代表」
それを言われると、メエは「そっか。そういえばそうだね」と、ちょっと赤くなった。
「でも、クリスマス会もあるし……」
「クリスマス会の間に歌ってもらって、そのあと誕生日席に座って、みんなと楽しく食事しとけばいいだろ」
「いいの? 本当にいいの?」
「いいに決まってるだろ。みんなには、俺が伝える」
メエは「なんかゼロが偽物みたい」と、いつも通りの笑顔を見せた。
「じゃあさ、派手にしよう!」
「派手?」
「とにかく派手にドカーンと!!」
「頼むからもうちょっと普通にして……」
キィッ!
会話の途中で、突然車が突っ込んで来た。長い車体。俗に言うリムジン車というやつだ。それは俺らの前で止まった。
ちらっと見えたが、車の前に彫られてあった桜のマーク。あれは……
「な、なんで?」
メエは困惑している。そして、中から出て来たのはスーツにサングラス、そして細いながらも鍛えられた体。絵に書いたような黒服だ。
「お嬢様」
嫌な間が空く。
「お迎えに上がりました」
黒服は静かにそう言った。お嬢様なら、ほぼ間違いなくメエだろう。
「メエ、知り合いか?」
「……」
メエは反応がない。しかし、俺の後ろで震えているのはわかる。
「残念ながら、うちの会長はあなたのことを拒絶しています。お引き取り下さい」
「あなたは関係ないことです。そちらこそお引き取り下さい」
黒服は背中から長い刀を取り出した。鞘からは出していないが、おそらく真剣だろう。俺も背中から木刀を出しておく。
「待って!」
一触即発ムードにメエの叫びが入った。
「ゼロは下がって」
「いいのか?」
「……うん」
震えが止まったわけではない。しかし、俺は見てるしかない。
「お嬢様」
「呼んでるんだね」
「はい」
「……わかった」
メエは一瞬こっちを見た。その表情は、今まで見たことないくらい寂しそうだった。
「メエ!」
だから、聞いておかないといけない。
「俺らメンバーはお前の下に集められた。お前が望むなら、そのために動くぞ」
メエは少し、びくっとした。そして、振り向いたメエの表情は、いつも通りの笑顔だった。
「大丈夫だよ、ゼロ。ボクは大丈夫。だから、心配しないで」
「……わかった」
メエがこう言う限り、俺が出るわけにはいかない。
「お嬢様、こちらです」
黒服が車のドアを開けた。
「バイバイ……ゼロ」
メエは最後に振り向いてそう言った。いつも通りの笑顔で。
そして、メエの乗った車は出ていった。
「またね、ぐらいのうまい言葉を言えよ」
誰に言うわけでもなく、白桜を見てつぶやいた。