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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
12月
147/172

12月-1 バイバイ

 すみませんでした!!


 あんな予告を出しておいて1ヶ月放置って、殺されても仕方ないレベルですよね。でも、殺さないでください!! 死にたくない!!


 そんなわけで、ゆっくりとですが更新していくのでよろしくお願いします。

「さて、ゼロ。もうすぐ何があるかわかる?」


 スキップをしながらメエが聞いてきた。表情はもちろん笑顔。


 生徒会棟に行こうと思ったら偶然、メエと出会った。なんかハルさんやレンがいたら、それだけでいじってきそうだが。まあ、いないからいいか。


 そして、いきなりこんな質問をされたわけだ。


「もうすぐ通知表が渡されるな。今年はどんな成績になってること……」


「わー! わー! そんな楽しくないことじゃなくて、楽しいこと!」


「楽しいこと?」


 本日は12月22日。今年の残り日数も少ないし、学校行事も終業式と通知表の返却ぐらいしか残っていない。楽しいことなんてないだろ。


「ゼロ、もしかして、本気で忘れた?」


 やばい。メエが本気で心配し始めた。さすがに冗談もやめどきか。


「忘れてないさ。クリスマス会だろ」


 クリスマス会。なんでもメエが「クリスマス予定ねぇー!」や「リア充爆発しろ!」とかを言ってるのを聞いたらしく、みんな暇みたいだからクリスマス会をしようとメエが言い出した。


 まあ、言い出したのがメエでも用意したのは周りなわけで、それで忘れるほどボケてはいない。


「うん! そうだよ! ちゃんと覚えてるね!」


「当然だろ。用意しといて忘れるか」


「さすがゼロだね」


 この程度でさすがと言われるとはな。


 そんな他愛ない会話をしていると、すぐに白桜の前に到着した。


「あ! 芽!」


 メエの指した先に、まだまだ花開くまでは遠いだろうが、しっかり咲く準備をしている白桜の芽がいくつもあった。


「今年も咲くかな?」


「咲くだろ。今年も咲いて、そしてこれから先も見守ってもらわないとな」


「そうだね」


 そして、この白桜を残したのはメエの力だ。そう思うと、なんとなくメエの頭を撫でてやった。


「ふにゃっ!? な、何!?」


 突然、変な声をあげるから思わず離してしまった。


「頭を撫でただけだが、嫌だったか?」


「嫌なわけじゃないけど……あれ?」


「前はこんなことなかったろ」


「そうだよね? なんでだろう?」


 冗談で言ってる様子はない。よくわからないことになってるのか? ……だったら、話を変えるか。


「そういえば、お前の誕生日ってクリスマス会と同じ日だったよな?」


 たしか、メエの誕生日はクリスマス、12月25日だったはず。


「なんで知ってるの!?」


 いや、そんなマジで驚かれても困る。


「生徒会新聞でやったろ」


「……そういえばそうだね」


 思い出してくれたようだ。


「せっかくだし、誕生パーティーでもするか?」


「え? 誰の?」


「いや、メエ以外誰がいる?」


「え? ……えーっ!!」


 なぜそこまで驚く? この流れでメエ以外だと、それこそいじめだろ。


「ボクの誕生日!? なんで!?」


 なぜ誕生日を驚く?


「ボクなんかのために誕生パーティーなんかしたら、天罰が当たるよ!!」


「誕生パーティーで天罰当たってたまるか! それに、お前は生徒会長だ。ボクなんか、じゃないだろ、生徒代表」


 それを言われると、メエは「そっか。そういえばそうだね」と、ちょっと赤くなった。


「でも、クリスマス会もあるし……」


「クリスマス会の間に歌ってもらって、そのあと誕生日席に座って、みんなと楽しく食事しとけばいいだろ」


「いいの? 本当にいいの?」


「いいに決まってるだろ。みんなには、俺が伝える」


 メエは「なんかゼロが偽物みたい」と、いつも通りの笑顔を見せた。


「じゃあさ、派手にしよう!」


「派手?」


「とにかく派手にドカーンと!!」


「頼むからもうちょっと普通にして……」


 キィッ!


 会話の途中で、突然車が突っ込んで来た。長い車体。俗に言うリムジン車というやつだ。それは俺らの前で止まった。


 ちらっと見えたが、車の前に彫られてあった桜のマーク。あれは……


「な、なんで?」


 メエは困惑している。そして、中から出て来たのはスーツにサングラス、そして細いながらも鍛えられた体。絵に書いたような黒服だ。


「お嬢様」


 嫌な間が空く。


「お迎えに上がりました」


 黒服は静かにそう言った。お嬢様なら、ほぼ間違いなくメエだろう。


「メエ、知り合いか?」


「……」


 メエは反応がない。しかし、俺の後ろで震えているのはわかる。


「残念ながら、うちの会長はあなたのことを拒絶しています。お引き取り下さい」


「あなたは関係ないことです。そちらこそお引き取り下さい」


 黒服は背中から長い刀を取り出した。鞘からは出していないが、おそらく真剣だろう。俺も背中から木刀を出しておく。


「待って!」


 一触即発ムードにメエの叫びが入った。


「ゼロは下がって」


「いいのか?」


「……うん」


 震えが止まったわけではない。しかし、俺は見てるしかない。


「お嬢様」


「呼んでるんだね」


「はい」


「……わかった」


 メエは一瞬こっちを見た。その表情は、今まで見たことないくらい寂しそうだった。


「メエ!」


 だから、聞いておかないといけない。


「俺らメンバーはお前の下に集められた。お前が望むなら、そのために動くぞ」


 メエは少し、びくっとした。そして、振り向いたメエの表情は、いつも通りの笑顔だった。


「大丈夫だよ、ゼロ。ボクは大丈夫。だから、心配しないで」


「……わかった」


 メエがこう言う限り、俺が出るわけにはいかない。


「お嬢様、こちらです」


 黒服が車のドアを開けた。


「バイバイ……ゼロ」


 メエは最後に振り向いてそう言った。いつも通りの笑顔で。


 そして、メエの乗った車は出ていった。


「またね、ぐらいのうまい言葉を言えよ」


 誰に言うわけでもなく、白桜を見てつぶやいた。


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