11月−16 嵐の後はみんなで
「高月!!」
聞きなれてしまった声だ。しかし、今までの感情を押し殺した感じでなく、はっきりと怒りの感情がわかる。
「早いお帰りですね、新島さん。」
後ろにいた新島さんは、厳しい表情をしている。
「裏切ったのか!?」
「変なことを言わないでください。俺は中立。だから、お互い平等にチャンスを与えただけです。」
「こちらの情報を流すことがか!?」
冷静さを完全に失っている。さっきまでの周りを気にしている新島さんとは、まるで別人だな。
「答えろ!」
「……白桜を切ること。それは、そんなにいけないことですか?」
「なんだと!?」
「白桜を切る。よりよい生徒の生活のためにはあながち間違いと言えない。そうでしょ。」
「……」
白桜を切る。その判断が絶対に間違いかと言われると、俺なら、絶対ではないと言う。
学生のためによりよい学校を作る。それは間違いではない。そのために邪魔ならしょうがないという考え方もできる。
「し、しかし、反対意見もあるだろ。」
「メエは反対層も味方に加えましたよ。」
「それは……」
「正直、最初から最後まで不干渉でもよかったんですけど、せっかくだからメエかあなたたち、どちらかを勝たせようかと。」
「そのための、今までか。」
新島さんは悔しそうに言った。新島さんの目論見は偶然だが、こちらとしては、好都合だった。
「学校一の注目を受けた二極。ちゃんと票も集まってくれた。」
「そしてこれか。」
メエと西蓮寺さんの一騎打ち。結果は、メエの勝利となった。
「こんな戦い……」
「おやめなさい!」
西蓮寺さんが集団の中から現れた。
「私たちの負けですわ、馨。」
「しかし……」
「私は漠然とあなたの言う通りに動いてきたわ。しかし、佐倉さんは自分で考えて動いていた。その差が出たのですわ。」
さっきまでの西蓮寺さんとは違う。一皮むけたみたいだ。
「次は勝ちますわ。」
「できれば戦いたくないですね。」
「……行きますわよ、馨。」
西蓮寺さんと新島さんはこうして、去って行った。
「ゼロ!」
そして、タイミングよくメエが来た。後ろには全員いる。
「約束忘れてないよね。」
「おかげさまで休みを全部使うはめになったぞ。」
「終わったらしようね。」
メエは笑顔でそう言った。俺も、みんなもなんとなく笑った。
なんだかんだ、俺はこの生活を楽しんでいるんだな、と思った。