11月−13 会議は暖房のある部屋でやるからいいと思うんだ
次の日の夜、俺は新島さんに呼び出され、ロビーに行った。
「よく来た。」
ロビーに降りると新島さんがいた。
「まさか、こんなところで話すつもりですか?」
「いや、できれば聞かれたくない話だ。だから外で話す。」
「そんなことだと思いましたよ。」
俺は持ってきておいたコートを着た。
「さすが、いい準備だ。」
「うれしくないです。」
「話しってなんですか?」
寮から少し離れた場所。街灯の下で新島さんが止まったので、話しかけた。正直、寒いからさっさと帰りたい。
「そんな顔をしながら言わないでくれ。」
どうやら、顔に出ていたらしい。
「こいつを確認してくれ。」
パソコンで書かれたらしい書類。そこには政策と銘打ったいろいろなことが書かれている。
「見ての通り、当選したらする予定のことだ。」
内容は生徒間の仲をよくするイベントや生徒自治に関することなど、一般的な生徒会が行うことから、建物の改装や整備など、学校側が行うことまである。
「……俺には相談なしですか。」
「言っといただろ。君は当選したらなにもしなくていい。これは当選後にすることだからね。」
だから報告しなかったってことか。実際は中立宣言を気にしてる部分もあるだろう。そうでなければこんなタイミングで見せない。
「お前にして欲しいのは、内容のチェックだ。おかしな点があったら、どんどん言ってくれ。」
おかしな点という意味ではかなりある。
「改装や整備を生徒会がしますか?」
「学校側がしないからな。」
「しかし、これらを行うには1つ問題があります。」
「問題とは?」
「白桜ですよ。」
山を切り開いて、この高校を作ったときに偶然、発見された白色の幹を持つ桜、白桜。学校のシンボルとなっている桜だ。
「学校を全部、しかも在任期間でやるなら白桜が障害になるでしょ。」
そもそも、白桜は切り開かれる予定の場所にあった。しかし、偶然見つかったそれを理事長が気に入り、そこに残すことを決めた。
そのため学校の予定を少し変えて、白桜を四叉路の交差したポイントに置く形に変えた。しかし、急な変更だったため、交差したポイントが少し狭くなり普通車ならいいが、大型車がどんどん通るのは少し厳しいものがある。
「簡単だ。白桜を切ればいい。」
切る?
「移動させる、ではなく?」
「それができるなら学校を作るときにどうにかしただろ。あれをどかすには、切るしかない。」
だから切るつもりか。
「もちろん、当選前は言うつもりないさ。おそらく反感を買うだろうしな。」
「それが賢明ですね。だったら、問題ないです。」
俺は明日の朝の演説を待たせてもらおう。