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開明高校生徒会録  作者: ヒッキー
11月
139/172

11月−12 嵐の前に駆け引き

 「……眠い。」


 今の時間は午前8時前。せっかくの土曜日だが、こんな時間に起きないといけない。理由は簡単だ。俺が寮生だから。


 寮生というのは食事に関しては1人暮らしの数倍楽だ。昼飯以外は寮の食堂で食べさせてもらえるし、昼飯も休みの日とかに頼めば作ってくれる(別料金)。


 不便なところといえば、昼飯はチャージしたマネーカードを使わないといけないところと食事の時間が決まっているとこ。


 ちなみに朝食は平日はAM7時〜AM8時半。休日はAM7時〜AM9時。ギリギリでもいいんだが、その時間は混むのであまり好きじゃない。ゆえにこんな時間に起きて朝食を食べようというわけだ。


 「朝食下さい。」


 「はいよ!」


 おばちゃんが元気に返事して、手早く用意してくれた。朝から元気だよね。


 「お待ちどうさま。」


 そんなに待ってないが、いつも通りの決まったセリフで朝食が出てきた。


 適当に座れそうな場所を見つけて座る。


 「前、いいですか?」


 まだまだ席に余裕があるはずだが、と思いながら視線を上げてみるとそこには志木さんがいた。となりには不機嫌そうにそっぽを向いてる式守もいる。


 「もちろんどうぞ。」


 「失礼します。」


 志木さんが俺の前に座り、式守がその隣に座るような形になった。


 「久しぶりだな、式守。」


 「そうかしら?」


 「白桜祭から避けられてるみたいだったからな。」


 そう言うと式守はちょっと頬を赤らめた。どうやら、式守はかなりうぶだったようだ。


 「そんなことないわよ!」


 「式守。」


 式守をじっと見つめた。式守が驚きで大きく見開いた目に、俺が映っている。だんだん式守の顔が真っ赤になっていき、湯気みたいなものが出てきた。


 「そろそろ許してやってくれないか。」


 ちょっと楽しくなってきたんだが、志木さんに止められた。……榊の気持ちがわかりそうで怖いな。


 「大丈夫か、式守?」


 「だ、大丈夫れす。」


 「まだ顔が赤いな。熱があるんじゃないか?」


 そう言って志木さんが式守のおでこに自分のおでこを当てた。


 「せ、せせせせせせ……」


 そんなことすれば、式守の顔が真っ赤になっていくわけで……


 バタンッ!


 「式守!?」


 そうなるよね。


 「ところで、何か話があるんでしょ?」

 

 倒れた式守は置かれていた長椅子に寝かせて、席に戻って来たところでそう言った。そんなによく話すわけでもないし、他に座る場所もあるのに来たんだ。何もない、はないだろう。


 「そうだな。……今朝、張り出された明解新聞のインタビューについてだ。」


 「やっぱりそれですか。」


 このタイミングだからわかっていたが。


 「お前はそこで『中立の立場をとる』と言ったな。それはどういうことだ?」


 「そのままですよ。」


 昨日のインタビュー、俺はこの言葉を載せることを条件にインタビューを受けた。


 「新聞部の動きは早いな。これに対する現生徒会と西蓮寺側の反応も書いてある。」


 現生徒会は、メエが「わかってるよ。」と言って、マジさんが出入り禁止にしたことを明かした。


 西蓮寺さん側は、新島さんが「こちらにとっては嬉しい結果だ。」とコメントを残している。


 「現在、お前を中心にいろんなことが回っている。一体、何が狙いだ?」


 「俺は偶然、中心に立ってただけですよ。」


 「そんな冗談が通じるとでも?」


 俺が軽く笑って流そうとしたが、そうはさせてもらえなかった。


 「……俺は、よりすごい方に付くつもりなんですよ。」


 「すごい?何を基準に?勝利した方に付くということか?」


 「そういえば、現在の両候補の支持率、どうなってましたっけ?」


 俺の急な話の変え方に、志木さんは不振そうにこっちを見たが、真面目に考えてくれている。


 「……たしか現会長の支持率は38%、西蓮寺は21%ぐらいだ。」


 明解新聞は本物の新聞のごとく、選挙の支持率まで調べてくれる。かなり低いように見えるかもしれないが、無支持が30%近くいるので現在はこの2つがかなりの支持を持っていってる。


 「正直、これがひっくり返るかなんてどうでもいいですよ。」


 志木さんはよけいわからないという感じで見た。


 「必要なのは、本来の力。」


 「本来……?」


 「それを調べます。まあ、それがあるほうが勝つと思いますけど。」


 俺は朝食を食べ終えたので席を立った。


 「風紀部は現生徒会を支持する。」


 立ち上がった俺の背中に志木さんは、そう声をかけた。


 「それは自由です。問題ないですよ。」


 今日はちょっと街に出て、そのあとは部屋にこもろうと思いながら食堂を後にした。


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