11月−11 ゼロはあいつのことをこう語る
そして金曜日の放課後、俺はメエたち側の場所にも、西蓮寺さん側の場所にもいなかった。
「今日は生徒会選挙で最も注目を集めてる現生徒会副会長、高月零夜くんに来てもらったよ!」
「レン、いきなり拉致られたと思ったら、これはなんだ?」
場所は新聞部の部室だろう。何回かレンに連れて来られたことがある。
「だから言ったでしょ。今日は生徒会選挙で最も……」
「それはさっき聞いた。だから連れて来られた……やっぱりいい。わかった。」
レンの笑顔とかマイクの準備とか見てたらわかった。
「事前に連絡しろ。」
「おやおや?事前に考えておかないといけない内容でもあるのかな?」
レンが挑発的なセリフを言ってくる。
「……心構えとかさせろよ。まあ、いいけど。」
俺は身体を伸ばして、軽く欠伸をしてから構えた。
「それじゃあ質問させてもらうよ。」
こうしていきなりインタビューが始まった。
「まず、生徒会の中で本命は?」
「木刀で叩かれると本気で殴られる。どっちがいい?」
「冗談だよ。」
いや、さっきの目は答えたら喜んで食い付いてくる目だった。まあ、答える答えを持ってないからどうしようもないんだけど。
「真面目な質問だ。……メエちゃんのバカを治すにはどうしたらいいと思う。」
「たしかにそれは重要だな。」
メエの頭はどうにかなるならすべきだと思う。
「僕は生まれてすぐに英才教育をするべきだと思うんだ。」
「いや、メエは生まれ変わらないと無理だと思う。」
「それはメエちゃんと呼んでいいのかい?」
「2人は何を話してるんですか!?」
ラブが叫びながら入ってきた。後ろにはかなり不機嫌そうなトバリもいる。
「な、なんでここが!?」
「あんだけ堂々と連れ去ったら嫌でも目撃証言が出まくるわよ!」
なんか、やけにトバリはご立腹だな。
「飛鳥ちゃん、あんまり感情的にならないで……」
「ちゃんと説明したでしょ!あんたは1回、選挙管理委員会に始末書提出してるんだから、これ以上は問題にされるって!」
なるほど。他でもこんなことをしてたのか。
本来、選挙管理委員会は立候補者に対して過度の接触をよしとしていない。しかし、同じ学校の生徒だ。接触するなは無理。それゆえ、めったに注意なんておきず、あってないようなものだ。
それにひっかかるとは、トバリが怒り半分、心配半分な表情で乗り込んでくるのも頷ける。
「大丈夫だって。」
「大丈夫じゃないわよ!これが委員長に見つかったら……」
「俺がなんだって?」
入ってきたのは波照間さん。なんとも素晴らしいタイミングだ。
「い、委員長……」
「中山 廉。再三の注意は意味なかったみたいだな。」
委員長の瞳が殺し屋みたいになっている。
「すみません、委員長!こいつには私からよく……」
「反省するつもりはありませんよ。」
フォローに入ったトバリの言葉をさえぎり、レンは一歩前に出た。
「ちょっと……」
「僕はたしかに選挙管理委員会に所属してます。しかし、それと同時に新聞部にも所属しています。どちらかをおろそかにするつもりもありません。僕はどちらもこなしてみせます。」
「しかし、実際はどうだ?片方のために片方のルールを犯している。」
レンは自分の意志を貫き通すつもりらしいが、正しいことを言ってるのは波照間さんだ。どんなに言ってもルールを犯していい理由なんて、ありはしない。
「中山 廉。君を選挙管理委員会から……」
「ちょっとストップ。」
俺は波照間さんの言葉を止めた。
「どうした?いくら生徒会とはいえ選挙管理委員会には介入できんし、被害者としてもルール違反を覆すのは無理だぞ。」
「わかっていませんね。そもそも、この案件に選挙管理委員会が出張ってくること自体、間違ってるんですよ。」
「ほう、説明をちゃんとしな。」
声では驚いているようにしているが、波照間さんは驚いていない。むしろ、わかっていた感じだ。
「選挙管理委員会は立候補者との過度な接触を禁止してます。俺は立候補者ではなく、推薦されただけの一般生徒Zです。つまり、この問題は被害者が問題にしなければ問題にもならず、したとしても生徒会および風紀部の管轄。選挙管理委員会に何かをする権利はありませんよ。」
そこまで説明すると波照間さんは満足そうに笑った。
「よかったぜ。俺の後釜が身体能力のみで頭のついてきてない阿呆じゃなくて。」
この人、狙いはレンじゃなくて、俺だったわけか。
「うちにはバカ担当がすでにいるのでこれ以上、そういうのは必要ありません。」
「前のだけ見てもわからなかったが、たしかにお前は俺に似てるな。」
「あなたほど食わせ者じゃありません。」
「かもな。中山、今回は見逃してやる。以後気をつけるように。」
「了解しました、委員長。」
波照間さんはおもしろそうにこっちを見て、去っていった。
「なんだかんだ、うまくいったね。」
「なんだかんだじゃないわよ!」
トバリが嬉しいような、怒っているような、泣いてるような表情でレンに詰め寄った。レンはちょっと困ったようにこっちを見たが、それに対し、自分でどうにかしろ、と目で言ってラブと静かに部屋を出た。
「わかってたんじゃないですか?波照間先輩が来た理由。」
出てすぐにラブがそう言った。
「人間心理について強いラブに言われたら答えに困るな。……はっきりとは思わなかったけど、心のどこかでは考えてたかもな。」
「どうしてですか?」
ここまで聞いてラブが何を言わんとしているかわかった。
「ラブ、聞きたいことがあるならストレートに聞いていいぞ。」
ラブはそれに驚かなかった。まったく。このごろ考えていることがばれまくってる気がする。
「ゼロくんは、中山くん、新聞部になにか話したいことがあるんじゃないですか?」
ちゃんとストレートにきた。
「もし本当に取材を受けたくないなら、さっき中山くんを助けなかっただろうし、風紀部を呼んでもいい。中山くんが捕まるのが嫌なら、今、逃げればいい。でも、ゼロくんはどれもしていない。」
なるほど。その通りだ。
「本当は取材を受けたい。なにか言いたいことがあるから。違いますか?」
ラブもどんどん強くなっていくな。
「その通りだ。俺は言いたいことがある。新聞部の取材ならば、明日には全校生徒に知れ渡るはずだからな。」
「その内容は?」
「気になるならラブも聞けばいいさ。」
俺は不敵な笑みを浮かべておいた。