11月−8 第三の目、開眼
言ってみたかっただけ
次の日の昼休み。俺は生徒会棟にいた。理由は今年度の予算や議事録などだ。
「……とは言われてもな。」
もちろん、この手の書類は持ち出し不可。生徒会棟に自由に使えるコピー機はあるが、そんなものが使えるはずがない。結果……手で写せ。
「無理だろ。」
予算ならまだしも議事録は無理だ。議事録は毎週火曜日に行っている会議の記録。夏休みや試験期間、メエが解散させてた白桜祭のがないとはいえ、量は膨大だ。
「ここでまさかのハルちゃん登場!」
「ハルさん!?」
本当にまさかだ。
「なんでここに?」
「ハルちゃんにわからないところでおもしろいことが進行している気配があったから、来てやったのだ!!」
「なぜ上から目線!?」
「つまり暇なのだ!!」
「ぶっちゃけましたね!!」
「だからそいつをよこすのだ。コピーしてきてやるのだ!!」
……ハルさんに頼んでいいんだろうか?でも、あの人なら気付いてそうだな。変なところ勘がいいし。
「じゃあ、お願いします。」
「はいよ!」
さっさとコピーを始めた。
「それにしても、こんなもの何に使うの?」
ハルさんが笑顔で聞いてきた。どうやら、何もわかっていないということらしい。
「ちょっと書類のチェックで必要になったんです。」「それなら生徒会でやればいいでしょ。」
む。なんか今日のハルさんが来るな。
「ちょっと忙しくて生徒会の仕事ができそうにないんで、部屋でやろうかと思ったんです。」
「大丈夫。それなら私がやっといてあげる。忙しいのに仕事をまかせられないよ。」
なんだ?今日のハルさんはやけにくるな。
「大丈夫ですよ。自分の仕事ぐらいは自分でします。」
「無理はしない!なんならゼロの仕事は全部してあげるから!」
「……」
なんだ?ハルさんの様子がおかしい。一体何が……
パンッ!
「!!」
ハルさんが突然、手を叩いた。
「しゅ〜りょ〜!」
ハルさんのテンションが一気にあがった。
「な、何が終了?」
「ハルちゃん流、性格診断ゼロ編!」
「はい!?」
つまり、さっきまでのは性格診断だったってこと!?
「ハル結果。ゼロはいい洞察力を持ってるけど、それに頼りすぎ。」
?なんだ、それは?
「ゼロは他人の性格を見抜くのがうまい。それは否定しないよ。でも、ゼロはそれに頼りすぎ。」
「……」
「だから、予想の斜め上を通られるとすぐに思考が停止する。いや、思考が性格のほうにいっちゃう。悪いクセだよ。」
……なぜだろう。ハルさんの考えていることがわからない。
「その技は私みたいな道化師には通じないよ。」
「!」
俺はドキッとしてしまった。別に図星を突かれただからでも、ハルさんのことが好きになったわけでもない。怖かった。こっちを見たハルさんの表情が何を考えているのか全然わからなくていつもの笑顔のはずなのに、目の前にいるのはいつもの笑顔を浮かべたハルさんのはずなのに、全然違うものを見ている気分になる。
「……なーんちゃって。」
「え?」
なぜか怖さがなくなった。
「ハルちゃんはいっつも自分に正直だよ。さっきのはゼロをいじめたくてやっただけ。」
たしかに、今はいつものハルさんだ。
「でも、私みたいな道化師は他にもいるかもよってこと。ちょうどコピーも終わったよ。」
ハルさんは俺に議事録のコピーとマスターを渡した。
「じゃ!遅刻しちゃダメだよ。」
ハルさんは笑顔で去っていった。
俺は予鈴のチャイムが鳴るまでそこに立ち尽くしていた。
伏線を全部回収できるか、作者が一番不安です。