11月−3 新たな敵あらわる
……本当に何を言ってるんだ?たしかトバリも選挙管理委員だったはずだが、それが関係してるのか?
「僕もそれの確認がしたかったんだ。」
レンも同じ質問だったらしい。
「正直、何を言ってるのか全然わからん。概要を説明しろ。」
レンはトバリをなだめて、改めてこっちを見た。クラスの連中もこっちに聞き耳を立てているが気にしないらしい。
「まず、金曜日の集計で5人の立候補が出た。」
5人。やはり、例年よりは少ないみたいだ。
「出馬を表明するときに副会長の名前を書くのは知ってるな。」
「ああ。」
通常、選挙に出馬するときに出馬する人間以外に副会長の名前も書ける。書かないという選択肢もあるが、たいていは書く。副会長は選挙の補佐もするので、副会長も重要と言われている。
「2人が高月 零夜という名前をその副会長のところに書いていたんだ。」
「2人?」
1つは間違いなくメエだろう。しかし、もう1つか……
「そのことは知ってた?」
「いや、俺は知らないな。」
「知らないのね!?だったらこの名前は即刻取り消させてくるわ!」
「それは間違いだぞ。」
いきなり誰かが入ってきた。黒淵の眼鏡に勝ち気でプライドの高そうな目。身長は俺よりも少しでかいくらいか。
「あんたは誰だ?」
「新島 馨。2年生で今度の生徒会選挙に出馬する西蓮寺 日香理に副会長に推薦されている。」
「新島 馨?西蓮寺 日香理?」
誰だ、それ?
「それって、高月くんを副会長にしてた会長候補じゃない!」
トバリはそう叫んで全員がその男に注目した。あれが、もし西蓮寺さんとやらが当選したら新しい生徒会副会長になる男ってわけか。
「ちょうどいいわ!西蓮寺先輩にこのことを……」
「だから、そこが問題ないと言っているんだ。」
「何でよ!?」
どうにも会話が噛み合っていないな。いったいどういうことなんだか。
「生徒会選挙で会長に立候補する場合、会長本人は副会長を2名まで推薦することができる。」
「え?」
レンが生徒手帳を開きながらそう言った。なるほど。そういうことか。
「その通り。生徒会選挙の場合、あくまで副会長は指名ではなく推薦、つまり決定ではなく当選したら誰を副会長にしたいかを書いただけであり、推薦された人間が了承する必要はない。」
「で、でもっ……」
トバリとしてはどうにかしたいんだろう。そこでトバリは1つ思い出した。
「そうよ!今回、2人の候補者が1人の候補者を推薦してる。それについてはどうなの!?」
「さあ?生徒手帳には何も書いてないよ。」
レンにはわかっているみたいだ。これも意味がないことに。
「だったら……」
「これは推薦なんだ。何人が推薦しようと、何人に推薦されようと問題ない。」
「でも……」
「そこまでだ。」
俺はトバリを止めた。そもそも、トバリは選挙管理委員。あまり1人の候補者のために動くべきではない。
「高月くん自ら認めてくれるのかい?」
勝ち誇ったような表情をしている。あまり好きな表情ではない。
「副会長に俺を推薦するのは問題ないですけど、推薦ってことなら当選しても俺には拒否権があります。選挙で副会長にすると言っていた人間を拒否されたから他に変えるなんてすれば問題になりますよ。」
さて、どうする?
「それは当選までに解決するさ。大丈夫だ。お前はきっとこっちを選ぶ。」
キーン コーン カーン コーン
いいタイミングでチャイムが鳴ったので新島は帰っていった。教室はずっとざわざわしていた。
まったく。また面倒なことになるな、これは。