9、10月−52 それでいいじゃん
おそるおそる下を見てみる。
「やっほー!」
「いつの間に戻ってきやがった、メエ!?」
「ゼロがよくわからない話を始めたあたりから!」
ならちょっと前からか。よかった。まさか気を張っている戦闘中まで気付かなかったとなると、いろいろ問題だからな。
「難しい話はおしまい?」
「そうだな。」
「だったら……」
そんなことを話してると後ろから気配がして木刀を振った。
「ぐはっ!!」
やっぱり、さっきのがもう1回来ていたか。
「さて、これはどうするか。風紀部を退部にするのは当然として……」
「ダメ!」
半分気絶しているような奴らと俺の間にメエが立った。
「何があったか知らないけど何もしちゃダメ。」
「や、やめてください。」
そんなメエに立ち上がった志木さんがそう言った。まだ少しふらふらはしているみたいだが、立ててはいる。おそろしい回復力だな。
「私たちはそれだけのことをしました。何をされてもしょうがないんです。」
「……よくわからないや。」
「へ?」
メエの答えに志木さんはすっとんきょうな声を出した。
「ボクは知らない!だから、不問!これにて完結!!」
「完結じゃない。」
さすがにそれはまずい。
「そうです。何もなしなんて……」
「体育館の生徒たちをどうするかを考えないといけないだろ。」
「そうだった!!」
「何でそう……」
志木さんはまた口元を押さえた。そりゃあ、どんなに回復力があったとしてもあの短時間での完全回復は無理だろう。大声なんて出したら吐き気がして当然だ。
「……なるんですか。」
「えっとね、ボクは生徒会長なんだよ。」
「は、はい、そうですね。」
どうも志木さんはメエ相手にうまくテンポを取れないらしい。その証拠にかなり身構えるような体勢になっている。次の行動が読めていない証拠だ。
「ボクは生徒のための会、生徒会の会長だよ。だからボクは生徒のために行動する。理由はそれだけ。」
「それは正しい生徒に、です。私たちのようなルール違反をした人間にまでする必要はありません。」
「正しくない生徒も生徒だよ。」
完全に身構えている志木さんに対して、自然体のメエ。……なんかイメージと真逆だな。
そんなことよりも、この空気どうするかな。志木さんや後ろのやつがメエを襲ってきたときのために構えてはいるが、問題さメエがこの事態に対してどう対応するかだ。
「なんと言おうと、ボクは誰も見捨てるつもりはないよ。そうしないとボクがボクじゃなくなっちゃうもん。」
「……わかりません。」
志木さんが遠くを見るように一瞬した。それは本当に一瞬ですぐにメエをしっかりと見た。
「ルールを破った人間は少なからず他人に迷惑をかけます。そんな人間を守るなんて間違ってます。他人の迷惑になる人間なら……いないほうがマシです。」
志木さんの瞳の色が強くなっていく。信じる心の強さが瞳の強さ。志木さんの強い意志を感じる。
それに対してメエは無言か。でも、大丈夫だろ。
「なら、ボクはいないほうがマシだね。ボクだってゼロ達にはすごい迷惑をかけてるし。」
それについては否定しない。
「でもね、少なからずみんなが他人に迷惑をかけて、それを、しょうがない、って言って助けてくれる。それでいいんだよ。迷惑をかけたら返す。そうやって成り立っていくものなんだよ、人間は。」
メエらしいと言えばメエらしいな。とても純粋でまっすぐ、単純で正しい。
「……そんなことが、できるでしょうか?」
「できるよ。」
笑顔のメエに、少し緊張状態の解けた志木さん。いい具合だ。志木さんはメエと似たタイプみたいだったし、話せばわかりあえるのだろう。しかし……
「……たしかに私たちは……」
「ダメですよ、部長。あなたが認めたら負けじゃないですか。」