9、10月−48 さてさて、面倒な奴が相手だな
ガッ!ガッ!ガッ!
木刀と長刀のぶつかりあう音が廊下に響く。しかし、長物の相手はやっぱり疲れる。リーチの違いはやっぱり大きい。防御ぐらいしかできてないな。
そんなことを考えていると志木さんが突然、攻撃をやめた。
「?どうしたんですか?」
「もうこんなことはやめましょう。」
「は?」
なんとも予想外な考え方だ。
「あなたは確かに強い。でも相性が悪すぎる。だから、退いて。お願い。」
たぶん、知ってて言ってる。俺が退くはずなんてないとわかっていながら。
「はぁ。だからめんどくさいんだ。」
「何がですか?」
「いや、なんでも。」
とても純粋で、とても真っ直ぐで、とても強い。俺の捨てたものを当たり前のように持っている。……なんとなくメエに似てるかもな。
「そういえば聞いてませんでしたね。なんでこんなことをしたんですか?」
「……悪役に理由を説明しろ、と?」
「知りませんか?悪役には悪役なりの正義がないと今の時代は生きていけないんですよ。悪役こそキャラクターが立ってないと。」
「……」
「それに悪役というのはこちらから見たときです。そちらから見たときは俺らが悪役でしょ。そんな一面的な見方はせずにいきましょうよ。」
「……いいわ。どうせすぐに言うことでしょうし。」
構えたままゆっくりと目を閉じた。
「私たちは現生徒会の解散および、風紀部の予算を倍にすることを要求するわ。」
予算。予想通りではあった。
「一昨年の予算に比べて風紀部の予算が去年と今年は半分になっているわ。」
「理由については説明があったはずだが?」
「その説明に納得してないの。前会長、斑目会長の説明はこうだったわ。『風紀部の現在の部員数は12人。それを半分にすればこの予算でも問題なくできるだろ』、こんな説明で納得なんてできるわけがありません。」
あの人はどれだけ適当に説明してやがるんだ。もっとうまい言い回しだってあるだろ。たとえば…………あるはずだ!
「さらに、今年はより明瞭な説明があるかと思ったがなかった。」
「それについては謝る。なんせ、斑目先輩が説明しているって言ってたから問題ないと思ってた。これは完全にこっちのミスだ。」
「ならばちゃんとした説明をしていただけますか?」
「それは……いや、やめとく。」
「どうして!?」
かなり必死な表情だ。当然か。もしこれが納得できる理由だったら戦いは終わるかもしれない。しかし、それだけはいけない。組織のリーダーが納得したからやめるというのは信頼を完全に失いかねない。自分で振り下ろした拳だ。何があっても途中で自分から引くことは、あってはならない。
「そんなことは戦いが終わった後に好きなだけ聞かせてやる。今はこの戦いに集中しようぜ。」
「……あくまで戦いを望むのね。」
悲しそうな表情で長刀を構えた。俺も木刀を構える。
「さて、第2Rだ。」