9、10月-45 悲しいからこそ人は想いを強くする
そしてラブ……
「えっと……ここ?」
ここはうちのクラスの前。なんでこんなところなんだろう?
「ゼロくんの言ってた場所はここだよね?」
渡されたメモを確認してみる。
『階段を2階降りて、右に曲がって渡り廊下を渡る。そして、次の角を右。(廊下は走らないように byメエ)』
……メエちゃんのメモは置いといて、ここで間違いないと思う。でも、ゼロくんはなんでこんな場所に?風紀部の要を抑えるって言ってたけど、私に戦えるわけないし……
「愛佳!?」
「え!?」
後ろにいたのはクラスメイト、帳 飛鳥ちゃんだった。
「なんでアスカちゃんがいるの!?」
「私は……風紀部の仕事よ。誰か校内に残ってないか見回ってるの。」
私はわかってしまった。わかりたくないのにわかってしまった。ゼロくんがメモを渡すときに小さい声で「ごめん。」って言ってた。ゼロくんは予想、ううん、わかってたんだ。だから私をここに行かせたんだ。
「愛佳も早く体育館に……」
「やめて、アスカちゃん。」
私ははっきりと言った。
「アスカちゃんだって、ここにいるんだからわかってないわけないよね。この状況が。」
「愛佳……」
アスカちゃんは不思議な表情をしていた。泣きそうでもあり凛々しくもある。後悔しているようでもあり、悔いがないようにも見える。ものすごい不安定な表情。
「愛佳、どうしても、ダメなの?」
「……」
「愛佳がこんなところにいるなんておかしいのよ!とても優しくて、とても純粋で……とても弱い愛佳がいちゃいけない場所なの、ここは。」
そんなことはわかっている。私もそう思う。
「なのに愛佳はなんでここにいるの?生徒会役員だから?期待されてるから?それとも、好きな人に頼られたから?」
「……」
私は何も答えない。それでもアスカちゃんは話すのをやめない。
「愛佳はわかってないんだよ!盲目になってるんだよ!好きな人に必要って言われたから舞い上がってるだけ!落ち着いて考えてよ!」
「……」
アスカちゃんどんどん必死な表情に変わってきている。私はどんな表情をしてるんだろうか。もしかしたら、ものすごく冷たい表情なのかもしれない。
「私と一緒に来て。今ならまだ間に合うから。」
「……ねえ、アスカちゃん。」
私の顔を見てアスカちゃんが一瞬たじろいた。
「なんでアスカちゃんはこんなことをしてるの?」
「……」
今度はアスカちゃんが黙る番になった。
「……生徒会が嫌いだから?」
「!!ち……」
「違わないよ。絶対に。」
「なんでそんなこと……」
「……私は他人の思いがわかるから。」