9、10月-44 笑っていれればいいよね
私はスーパーボールを構えた。
「ハルちゃんスペシャル、エボリューション!!」
さっきよりも大量のスーパーボールが姫ちゃんを襲う。しかし、姫ちゃんも同じようにガードしようとする。
「え?」
何度目かわからない、同じリアクションを繰り出した。姫ちゃんの手はいつも通り動いた。完全にいつも通りに動いてしまった。
パンパンパン!
「きゃっ!」
下からのスーパーボールは止められたが、ほとんどが集中している上はすべてが当たった。
「っ!で、でも、これだけじゃ……」
「倒せないよ。」
私はすでに姫ちゃんの前にいた。
「あ、あ、あ……」
何かをしようとした姫ちゃんの両手を掴んだ。
「う……」
「私の勝ちだね。」
「……はい。」
私は手を離して、笑顔を浮かべた。
「どうやって突破したんですか?」
「なんか違和感があったんだよね。」
また不思議そうな顔をしてる。
「ワイヤーって武器は確かに防御に向いてる。周りに張れば蜘蛛の巣のような盾だもの。でも、そのためには固定する場所が必要なんだよ。」
「……その通りです。」
「そして、固定具の見当たらない上部を狙っても止められた。そこで気になって計算したら、ある線上で曲げれば完全にフォローできることがわかったんだ。」
「だからスーパーボールをあんなに投げて目眩ましをしたんですね。」
「そういうこと。」
目眩ましのせいで見えてないうちに落としたナイフを使って、おそらく細いワイヤーを張ってあった線上に向かって投げた。
「さて、これにて終了!!」
「あ、あの、最後に1ついいですか?」
姫ちゃんが聞きにくそうにおずおずと言った。
「何かな?」
「数学みたいなものって、しないとすぐにできなくなっちゃいますよね。もしかして、本当は毎日……」
「姫ちゃん。」
私は人差し指を立てて、それを口の前においた。それでわかってくれたのかこれ以上は何も聞かないでくれた。
「さてさて、これでハルちゃんは姫ちゃんのイメチェンをする権利を手に入れたのだ!」
「で、でも!私、全然ダメですよ。産まれてこの方、かわいいなんて言われたのは親ぐらいの歳の人にだけですし、いつもキモいとかしか……」
「それはハルちゃんが決めることで気にしないで大丈夫。」
「でも……きゃっ!」
うだうだしている姫ちゃんの前髪を上げた。そして、私は思わず親指を立てて突き上げた。
姫ちゃんはかわいい顔をしていた。
これにてハルさんルートは終了です。続いては一番の波乱が予想されるルートに突入です。
そして、更新が遅くてすみません。