9、10月−42 ハルさんはいつもこんな感じ
パンパンパン!
私の投げたスーパーボールは反射しながら姫ちゃんの横をすり抜けた。
「ハルちゃんにかかれば弾道計算なんて余裕なのだよ。しかもわかっているのかわからないけど、ここは文化部の部室棟の廊下だよ。」
「……」
ハルちゃんは深刻そうな姫ちゃんと真逆の不敵な笑みを浮かべた。
「ここは生徒会の次に好きな場所。ゆえに、ここの地形は完璧に覚えてるよ。」
ありえないって感じの顔してるしてる。残念ながらハルちゃんの乏しい記憶力で覚えてるわけないでしょ。全部ハッタリ。こんなんを信じてくれるあたりはかわいいなあ。
「……行きます。」
ワイヤーが飛んでくる。ついでに前から投げナイフ。私はすべての指の間にスーパーボールを挟んだ。そして、それを投げてすべての攻撃を止めた。
「な!」
「ハルちゃんスペシャル!!今度はこっちからいくよ!!」
スーパーボール360度、完全に逃げ道なし。これぞ最強!!
「甘いです。」
姫ちゃんは一瞬で蜘蛛の巣のようにワイヤーを自分の周りに張った。それにすべてのスーパーボールが当たって無効化されてしまった。
「ありゃりゃ?」
「私は攻撃より防御のほうが得意なんです。」
にゃるほど。インパクトはあるけど風紀部の能力では弱いような気がしたけど、これだけの防御力があれば関係なしということですにゃ。
「にゃらば、その弱点はどこか……にゃ!!」
もう1回、ハルちゃんスペシャル。これで見抜く!
「……」
同じように防御された。そしてそのときの動きから予想がついた。
「にゃるにゃる。」
なんか自分の中で「にゃ」がブームかも。
「にゃんとなくハルちゃん、わかっちゃった気がするよ。」
「え!?」
「ちなみにこれは『な』を『にゃ』にしている特徴をいかして、にゃんと鳴くハルちゃんとなんとなくハルちゃんのダブルミーニングを達成しているというハルちゃんの教養を……」
「ちょ、ちょっと待って下さい。何がわかったんですか?」
む。まさかハルにゃん渾身のセリフの説明をこんなにあっさりと切られるとは思わなかったよ。
「あの、すいません。でも、一体なにが……」
「その前にハルにゃんの質問に答えてもらうよ。姫ちゃんは人生楽しんでる?」
「え??」
「人生だよ。今の人生を楽しんで、楽しんで、楽しんで生きてるかってこと。」
「……」
ありゃ?暗い表情が一層暗くなっちゃった?触れちゃいけなかったかな?
「……あまり、楽しいことはありませんでした。」
「そっか。だったら、私の昔話をしてあげよう。」
「え???」
「回想スタート!!」