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不死の魔人と閻魔姫  作者: 渡邊裕多郎
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第八章 魔人同士の対決・その2

「へェ。そういうおまじないの本って、晶ちゃんも興味あるんだ」


「まァね。血液型占いと同じで、当たるわけないだろうって言うのは分かってるんだけど、読んでみると、結構おもしろいんだ、これが」


「ちょっと見せて」


 等々、お昼の休憩時間、ユウキちゃんと晶ちゃんが会話を交えていた。ユウキちゃんが晶ちゃんの持っていたおまじないの本をとる。


「ふゥん。好きな人の名前を書いて、それを、自分の家の、家族の誰でも読むような本に挟んで、一週間、誰も読まなかったら、好きな人との恋は叶います、か。こういう、かわいい系のおまじないって、やっぱり、こんな感じだよね。ひょっとしたら、こういうのでも恋が叶う可能性が、あるような、ないような、どうかな? という印象を受けるかもしれないって考えてしまう気が、半分くらいはするんじゃないかって思う程度には、私も試してみたくなっちゃうけど」


「でも、気がつくと、おもしろ半分にやっちゃったりするんだよね。ユウキは、割と本格的な占いも知ってるって言ってたけど、こういうのもやるんじゃない?」


「うん。私もやったことあるわよ。これは、中学校のころの同級生の知り合いのお兄さんの彼女の幼馴染みのバイト先の店長の奥さんの学生時代の恩師の妹さんのお隣さんの友達の親戚から聞いたやり方なんだけど」


「限りなく他人だね」


「うん。そうなんだけど、古本屋さんで売ってた黒魔術の本に書いてあったって言ってて、私も教わって、恋の魔術をやってみたことはあったな。まるで効果なかったけど。叶ってほしいって期待してたんだけどね」


 言いながら、ちらっとユウキちゃんがヒロキくんのほうをむいた。気がついてないヒロキくんはスマホをいじくっている。


「ふむ。ボタンさんもいるし、いまのところは問題なし、か。こっちも大丈夫です、と」


 閻魔姫にメールを送ってからスマホをしまい、それからヒロキくんが顔をあげてユウキちゃんを見た。なんとなく、意識したような表情に見えたのはユウキちゃんの気のせいだったのだろうか。


「何か用か?」


「あ、ううん。なんでもないから」


 あわててユウキちゃんが言って背をむけた。


「それで、このおまじないって、晶ちゃん、どのおまじないを試したの?」


「えーとね。これと、これ。ユウキもやってみるの?」


「うーん。どうしようかな」


「やるんだったら、お相手は誰?」


「それは、やっぱり、ヒロキくんかな。ほら、前から言ってるけど、私とヒロキくん、もし結婚したら、完全に同姓同名になっちゃうでしょ? おもしろそうだし」


 ボケボケーっとした調子で言うユウキちゃんであった。さすがは養殖ボケである。晶ちゃんが苦笑した。


「私、知ってるんだけどねー」


「え、何が?」


「べつに。うまく隠し通して、それでなんとなく、仲よくなるってのは理想かもね。私、応援してるから」


 しらばっくれるユウキちゃんに余裕の顔で晶ちゃんが言った。ユウキちゃんがニヘラァーっと笑う。


「ありがとうね。晶ちゃん」


 と言ってから、あらためて、それとなくヒロキくんのほうをむいたユウキちゃんだった。が、さっきの場所にヒロキくんがいない。ユウキちゃんが見まわすと、ヒロキくんはスマホ片手に、いそいそと教室をでるところだった。


 なんだか顔色が悪いのは、ゾンビだから、という理由ではなかった。


「ヒロキくん、どこへ行くんだろう?」


 ノボーっとユウキちゃんがつぶやき、つられるように歩いて行った。晶ちゃんはにこにこ笑って見送るだけである。そこは首を突っ込んだら野暮というものであった。


 一方、


「それで? どうやって俺の番号を知ったんだよ?」


 ヒロキくんは、スマホで、誰かと話していた。


『言っただろう。俺は目が利くんだよ。地獄界の釜にいたころから、いろんなものを見てきたんだぜ。この俺を甘く見てもらっちゃ困る』


「なるほどね。しかし、ここまで知られてるとは予想外だったな。個人情報ダダ漏れじゃねーか」


 ヒロキくんが舌打ちした。電話の相手は、もちろん魔人である。


「そんで? 俺のスマホに電話してきて、何をしようってんだよ?」


『ちょっと、デートのお誘いに』


「何を言ってるんだテメーは?」


『閻魔姫をつれてこいって言ってるんだよ』


「あーわかった。じゃ、行ってやる。時間と場所の指定を頼むわ」


『その前に確認するけど、閻魔姫をつれてくるなんて言っておいて、実はお友達の死神さんたちをつれてくるって算段じゃないだろうな?』


「さーそれはどうするかな。そのへんはテメーの態度次第だぜ」


『へェ。「テメーの態度次第」か。ところで俺、人質とってるんだけど』


「あ、その話か。姫から聞いてるよ。俺の魂をぶんどったんだってな。実は俺も頭を抱えてるんだ」


『まるで抱えてるって感じじゃないな。おまえ、人質とられてるのに、かまわず死神連中に俺のことチクって死ぬ気じゃないのか?』


「冗談ぽいだぜ。好きで死ぬ奴がどこにいるってンだ」


『仮にも武道をやっていたものなら、自分の命を顧みず、弱者を守るために戦って死ぬ。――おまえなら言いそうな台詞だと思ったんだがな』


「嬉しいことを言ってくれるねェ。けど、俺はそこまでハードボイルドじゃねェよ」


 とは言ったものの、ヒロキくんの表情は苦しげだった。いかんな。自分の性格、魔人にはすっかりバレてる。ま、いいさ。死ぬときは死ぬときだ。


「とにかく、待ち合わせ場所の指定は頼むわ。行くだけ行ってやるから」


『その前に、ひとつ言っておこうか。おまえ、誤解してるぜ。俺が言った人質ってのは、おまえの魂のことじゃない』


「はン?」


『冷静に考えて見ろ。魂だったら人質なんて言ってない。魂質って言ってる』


「ふむ。なるほどな。じゃ、人質ってのは? 閻魔姫もユウキも島崎もクルクルパーズもピンピンしてるぜ」


『ザクロちゃんって言ったかな。年下の死神のお譲ちゃんだよ』

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