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不死の魔人と閻魔姫  作者: 渡邊裕多郎
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第七章 奪われた魂・その5

「? どうした姫?」


「ヒロキ、それでいいの?」


「それでいいって?」


「だって、パパに頼めば、地獄界の家来を人間界に呼びだせるのに。そうすれば、魔人をやっつけるのも、そんなに難しくないのに」


「言っただろう。それで、閻魔姫が地獄界に帰ったら、俺はおもしろくないんだ」


「――ふゥん、そうなんだ。ヒロキって、本当に私と離れたくないんだ」


 なんだか嬉しそうに言う閻魔姫であった。その横で、無表情に聞いているボタン。ザクロは少し複雑そうな顔。笑いを押し殺したのはアズサである。何しろ、アズサはヒロキくんの真意を知っているのだ。


「とにかくだ。魔人は閻魔姫を狙ってるから、やってきたら返り討ちにするとして、問題は俺の魂だよなー。閻魔大王様には楯突くようなことを言っちゃったから、助けはもらえないとして、どうするか」


「ボタン、いざとなったら、ヒロキのこと、よろしくね」


「わかりました」


 と、これは閻魔姫とボタンの会話である。アズサやザクロとは違い、ボタンは役に立つということで問題ないらしい。


「じゃ、ボタンさんは、明日から、今日と同じように姫と行動を一緒にとってもらいます。で、もし俺がヤバくなったら、そのときは、情けない話ですけど、ボタンさんに助けてもらうってことで。ふたりがかりで喧嘩すれば、魔人もなんとかできるでしょうし。それから姫は、何かあったら即俺のスマホに連絡。これはいいな?」


「学校じゃ、スマホ使ったら駄目って先生に言われてるんだけど」


「それは無視していい。俺が許す。俺からも、休憩時間に確認のメールは送るから」


「うん。じゃ、わかった」


「ということで、残るはアズサさんとザクロちゃんのふたりなんだけど」


 これ以上、作戦の立てようもないからヒロキが話題を変えた。アズサが眉をひそめる。


「邪魔だというなら、私は帰るが?」


「それなら、それでお願いします。協力しないって態度は、俺もいやってほどわかりましたんで」


「あの、私は――」


 ザクロが何か言いかけ、隣に座ってるアズサを見て沈黙した。


「では、帰ろう。ザクロ」


「あ、はい。わかりました、アズサ姉様」


 返事と同時にアズサとザクロが立ちあがった。もう未練ゼロという態度のアズサと、少しヒロキくんをながめるザクロである。しかし、ふたりが腕を振ると同時に、その姿が消えた。閻魔大王様に何か告げ口する危険もあるが、それはもう心配しても意味のない話だった。


「さて、トレーニングはもうあきらめたけど、宿題はちゃんとやって寝るとすっか」


 あとは魔人と対決するとき、臨機応変に対応するしか手はない。あまり計画的ではないが、ほかに方法がないのだからどうしようもなかった。奪われた魂のことは考えないようにしながらヒロキくんが伸びをする。ふと気がつくと、閻魔姫が笑いながらヒロキくんを見ていた。


「どうした姫?」


「あのねヒロキ。私、まだ七歳なんだよ?」


「知ってるけど?」


「変態。ロリコン。ヒロキって、あの魔人と同じなんだ」


「おい。あんなのと同じに見ないでくれ」


「だって、ヒロキ、私と一緒にいたい、だなんて言って。エヘヘ。それに、私が魔人にブン投げられても、ちゃんと助けてくれたし」


「武道やってる奴は弱い者の味方をするもんだ」


「へー格好いい。本当に認めてあげようかな。でも、私に変なことしたら赦さないからね」


 笑いながら冗談混じりに言う閻魔姫。ヒロキくんがあきれ顔になる。


「ボタンさんがそばで見てるのに、そんなことするわけないだろが。大鎌でブッタ切られて手足バラバラにされちまうよ。ただ、魔人がきたら、とにかく俺は姫を守る。それは全力を尽くすぜ。これは約束するから」


「全力を尽くす、か。悪くない言葉だな。ヒロキって、私のナイト様って感じ。じゃなくて、ダーリンて言うのかな」


 あ、ヤバいかな。これは普通の会話じゃないぞ、と、さすがに気づいたヒロキくんであった。なんでか知らないけど、閻魔姫は自分に好意を持ってる感じである。俺、ほかに気になる娘がいるのに。いままで自分でも気がついてなかったけど、アズサが俺の心をのぞいて暴露しちまったからな。もう自分で自分を誤魔化すのも難しくなってきている。


「あのな姫。悪いけど――」


「ただ、後一〇年は待ちなさいね。そうすれば、私も、ボタンみたいに手足が伸びて、立派なナイスバディになってるから」


 うーむ。まずいぞ。先に宣言されちまった。


「それに、私、本当にパパのところに帰る気なくなっちゃったかも。ヒロキと一緒に、人間界で楽しくやって行こうかな」


「あの、閻魔姫様――」


 さすがに心配そうな顔で声をかけるボタンであった。閻魔姫、ちょっと一瞥して、


「ボタン、今日は地獄界に帰りなさい。私、ヒロキとふたりで寝るから」


 すごいことを言いだした。七歳だから深い意味はないのだろうが、だからと言って笑って聞き流せる話でもない。額に青い縦線が何本も入るヒロキくんとボタンである。意見しようと口を開いたボタンを閻魔姫がにらみつけた。


「これは命令よ。ボタン、地獄界に帰りなさい。また明日ね」


「――はい。わかりました」


 イエスマンのボタンが頭をさげた。


「あの、ちょっと――」


 ヒロキくんがとめるより早く、ボタンが腕を振って姿を消した。あとに残るのはヒロキくんと閻魔姫である。


「さ、このあと、何をする? トランプはなかったんだっけ? オセロ?」


「俺は宿題があるんだ」


「あ、そう。じゃ、仕方ないわね。――そうだ。私、今日、まだお風呂に入ってなかったんだ。ヒロキ、私の背中を流しなさい」


「はァ? それくらい、自分でできるだろ」


「あら、愛し合ってるふたりは、一緒にお風呂に入るものなのよ。知らないの?」


「あのな。誰と誰が愛し合って――」


 と、言いかけて、もう口をつぐむしかないヒロキくんであった。こんなときに本当のことを言って、余計に話をややこしくしたくない。そもそも、俺が気にかけてる女の子は、俺のこと、なんとも思ってないんだから。妙なことをゲロったら迷惑をかけちまうってもんだ。


「とにかく、風呂だったらお袋と一緒に入ってくれよ」


 セクハラまがいの入浴勧誘、プラス訳のわからんモテ期到来に、ため息混じりで返事をするヒロキくんであった。


 そして想定外のモテ期はまだ続く。

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