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不死の魔人と閻魔姫  作者: 渡邊裕多郎
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第四章 噂・その3

「は? あァ、はい。じゃ、寝る用意してから聞きますんで」


 二〇分後、歯を磨いてパジャマに着替えたヒロキくん、いつ寝てもいい状態になってから、ボタンと自室であらためてむかい合っていた。


「地獄界には封印の釜がございます」


 ボタンが切りだした。


「その封印には、人間界に存在してはならないものが幽閉されておりました」


「はァ」


「具体的には、無限に寿命を持つ魔人や、すでに魂を持たない不死者などです」


「はァ。――はァ?」


「ごく、まれに生まれるのです。そういうイレギュラーが。あってはならない存在ですから、そういうものは、私どもが確保して、地獄界の釜で封印を」


「じゃ、俺もイレギュラーの不死者だから、そのうち封印されるわけですか?」


「私の判断では、なんとも。ヒロキさんは、生まれつきの不死者ではなく、後天的なものですし、そもそも寿命は存在しますから、封印の対象になるかどうかは、難しいところで」


「ふむ」


「ですが、アズサにヒロキさんの存在は知られました。おそらく、閻魔大王様にも報告されているはずです」


 まさにその通り。同じ時刻、ちょうどアズサが閻魔大王様にヒロキくんの報告をしていたところだったのである。地獄界に封印中の先輩ゾンビが逃げだしたことは、まだボタンも知らなかったわけだが。


 ヒロキくんが考えこんだ。


「あのですね。俺、姫と一緒にとっつかまって、ついでに封印しとこうなんて判断されて、人間界からおさらばとか、そういうのって本音言うと冗談じゃねーんですけど」


「気持ちはわかりますが、ヒロキさんのような不死者が人間界にいてもいいという道理も存在しません」


「だよな。ゾンビやら永遠の命やらがフィクションで、現実に存在しない理由もわかったぜ。存在が確認されたら死神連中が地獄界に連行してたわけか。それで目撃者の記憶を消して終了――のはずが、ぼんやり覚えてる連中が騒ぎ立てるせいで、おとぎ話に残っています、と。なるほどねェ」


 なんだか基本前提が少し間違ってるような気もしたが、とりあえずヒロキくんがうなずいた。


「だけど、だったら、俺の魂を戻してもらって、普通の人間と同じにしてくれたら嬉しいんですけどね。そうすれば地獄に行く必要もねーし」


「お気持ちはわかりますが、閻魔姫様がなんと言うか」


 ボタンとヒロキくんが眠ってる閻魔姫に目をむけた。閻魔姫は眠りながらも、ヒロキくんの魂が詰まった小瓶をにぎっている。いまのうちにとりあげる――はできないだろうし、ボタンも承知しないだろう。


「言うこと聞きなさい、ヒロキ。あなたは家来なんだからムニャムニャ」


「かわいい声でいやな寝言だなマジで。けど、これから俺は、閻魔姫の家来として動くだけじゃなくて、自分の身も守らなくちゃいけないわけか」


「閻魔姫様のことはご心配なく。明日からは、私も閻魔姫様と一緒に行動しますので」


「小学校にくるわけですか?」


「人間に見られないように行動できますから」


「あ、なるほどね。透明人間みたいになるわけか。――ユウキの家に入るのは不法侵入だとか言って断ってましたよね? 小学校に入るのはかまわないわけですか?」


「さっき、オセロをしているとき、閻魔姫に命じられましたので。小学校にいる間もボディガードをするようにと」


「さいですか」


 上が許可すれば違法行為も抵抗なく行えるらしい。このへんはボタンもアズサと似たような思考回路をしていた。


「あ、それから、死神って、ボタンさんとか、アズサさんみたいな人たちしかいないんですか?」


「みたいな、とは?」


「男の死神はいないんですかってことです」


「いえ、いますが」


「そうですか」


 ということは、もし自分の前に男の死神がやってきて喧嘩になったら、オッパイ鷲づかみのセクハラ作戦じゃなくて、べつの手で攻めなきゃならんな――などとヒロキくんは考えていたのだが。


「ただ、閻魔姫様の前に男の死神は現れないと思います」


「は? なんでですか?」


「閻魔大王様がご心配されまして。悪い虫がつかぬよう、男の死神は閻魔姫様の前に姿を現わさぬようにと命令しておりました」


 どこまで箱入りなんだとあきれるヒロキくんであった。ヒロキくんの前でも平気な顔で着替えるはずである。さすがにオシッコの音は恥ずかしがったようだが。


「ま、大体のところはわかりました。とりあえず、小学校にアズサさんが乗りこんできたときは頼みましたよ。ヤバくなったら俺も駆けつけますんで」


「わかりました」


「寝ますか。明日もあるし。しかしトレーニングまるでできねーなー。ま、生きてるわけじゃないから、筋肉が衰えるってこともないだろうし、いいか」


 後半を独り言でつぶやき、ヒロキくんが電気を消した。

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