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不死の魔人と閻魔姫  作者: 渡邊裕多郎
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第二章 地獄界考察・その6

       3




 放課後、高校の校舎をでたヒロキくんが、隣の小学校の校門前まで行くと、想像通り、ゴスロリ姿の閻魔姫が待機していた。


「よ、姫」


「よ、じゃないヒロキ。遅いわよ」


「高校ってのは、授業が多いんだ。仕方ないだろ。じゃ、帰るか」


「うん」


 と、ここまでは素直に従った閻魔姫であった。ヒロキくんの隣を歩きながら、こんなことを言いだす。


「あのさ、ヒロキ、自分だけゾンビって、寂しくない?」


「は? ま、そりゃァ、な」


「仲間ができたら、嬉しいよね?」


「そう言われたら、そうだな」


 ユウキのことを言ってるのかな、などと最初は考えたヒロキくんであった。とはいうものの、ユウキちゃんの魂を狩ったら、自分と同じゾンビになるのか? 理詰めで考えれば、寿命がきてヤバい状態なんだから、ガチで死んじまうってパターンになる。そう簡単に仲間にはできんだろう。では、閻魔姫は誰を仲間にしようとしてるのか?


「実を言うと、学校で私の服を見て馬鹿にした男子がいてさァ」


 商店街を歩きながら、閻魔姫が妙なことを言いだした。


「人のこと指さして、ビッチって言うんだよ。頭きちゃって」


「あー。そういえば、小学校でゴスロリは珍しいかもな」


「それで、イラッときて言ってやったんだ。私のことを怒らせたら怖いんだよ、死んでも知らないよって。そうしたら、あいつら、やってみろって返事してヘラヘラ笑ってさ。で、いっそのこと、私の家来二号三号四号五号にしてやろうかと思って。ヒロキ、喜んでいいわよ。仲間をたくさん増やしてあげるから」


 無茶苦茶雲行きの怪しい発言にヒロキくんが目をむけると、閻魔姫がスマホをだしていた。


「学校じゃ、スマホ禁止って先生に言われて、連絡できなくってね」


 説明しながら、どこぞへかけはじめる。


「おい、ちょっと待て」


「大丈夫大丈夫。今度は私じゃなくて、ちゃんとボタンに魂を狩らせるから。ヒロキのときみたいな失敗じゃなくって、ちゃんとわかってて魂を狩るんだから問題ないわよ。もしもしボタン?」


「いや、大問題だろ。まだ寿命のある奴の魂を狩ったりしたら、無差別殺人って犯罪になるぞ」


「だからなんだって言うの? もうヒロキの魂を狩っちゃったんだし、ひとり不死者にするのもふたり不死者にするのも同じじゃない。あ、ボタン? 実はボタンにやってほしいことがあってね」


「おい、やめねーか!」


 閻魔姫からスマホをとりあげたら、たぶんボタンに怒られる。死神を敵にまわすのは利口じゃない。だったら閻魔姫に体罰? とんでもない話だ。そもそも自分は魂を奪われてるから閻魔姫に這いつくばるしかないし。でかい声で叱咤するしか手はないという判断に基づき、怒鳴りつけるヒロキくん。ないない尽くしでの選択だったが閻魔姫はガン無視であった。


「あ、ううん。大したことじゃないのよ。ただ、ちょっと、ボタンに狩ってほしい魂があってね」


「やめろおォォ!」


「あ、寿命? そんなのどうでもいいから。ヒロキと同じよ、同じ。不死者にしたあとは家来にして、私の言うことを無理矢理聞かせるつもりだけど」


「やめねえェかあァ!」


「いいのいいの。立場も考えないで、私を馬鹿にした奴なんて、それにふさわしい報いを受けて当然だし。ただ、魂を狩るのも、やっぱり、餅は餅屋って思ってね。だからボタンに魂を狩ってもらいたくって」


「やあァァめええェェェろおおおォォォォ!!」


「うん、だから、すぐきてほしくって」


「やああああァァァァァめえええええェェェェェェねええええええェェェェェェェかあああああああァァァァァァァァ!! ッッッッッッッッつってんだろうがああああああああァァァァァァァァァ!!」


「あの――すみません。失礼しました。やめますんで」


 よほど怒鳴り声に迫力があったのか、背後から無関係な声がした。ヒロキくんが振りむくと、黒服に禁バッチでパンチパーマという、絵に描いたようなその筋の方々が複数名、商店街の小道からでてきて、ヘコヘコしながら立ち去っていく。ヒロキくんが小道をのぞいてみると、被害者らしい会社員がひっくり返っていた。


「何をやってたんだあいつら?」


「ヒロキ、なんか、よく知らないところで人助けしたみたいね」


 一緒にのぞいた閻魔姫が小さい声でつぶやいた。感心した顔でヒロキを見あげる。


「ま、いいわ。ヒロキは、人助けをしたから、合格。ご褒美をあげましょう」


「は? 何が合格で何がご褒美なんだか、よくわからないんですけど」


「何を言ってるの? 人助けをしたら、ほめてもらうって、常識でしょ?」


「あー日本のモラルって、そんなんだったっけ。意味もなく魂を狩られてゾンビになったりしたから忘れてたわ」


 少しばかり厭味ったらしく言い、ヒロキくんが閻魔姫を見おろした。


「では姫、お願いです。その気に入らねー小学生から魂を狩るの、やめてもらえませんか?」


「あ、そういうお願いなわけ? ――うん、ま、仕方がないわね。今回は特別だから。もしもしボタン? さっきの話、なしね。いまから帰るから。それに、あんな生意気な奴ら、家来にする価値もないし」


 酸っぱいブドウみたいな負け惜しみを言ってスマホを閉じ、一転、天真爛漫な笑顔で閻魔姫がヒロキくんを見あげた。


「じゃ、行くわよ。ヒロキ、手をつなぎなさい」


「え?」


「あなたは私の家来で、ボディガードでしょ? それに、よく知らないところで人助けもしたし。これは正義の味方の義務なんだから」


 なんで地獄界のプリンセスと手をつなぐのが正義の味方の義務なのか理解不能だが、とりあえず、無実の小学生が不死者になるのを阻止できて、ほっとするヒロキくんであった。

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