僕の大事な大事な〝モノ〟
僕は、恵まれていた。
いつも一緒の四人の中で、至って普通で、親もちゃんと居るし、不自由な事が無い。四人の中で、一番マトモだった。
僕は小さい頃、チヤホヤされて育った。
そのせいで、苦労もした。自分が恵まれている、自分は特別と思っていたから。小学一年生の頃、いじめが流行り、僕も被害を受けた。
けれどその頃、僕は他にもいじめを受けている一人の男子を校庭に誘い、一緒に遊ぼう、そう言って自分で友達を増やした。
いじめを受けなくなった。
そして、それとは正反対に、クラスの人気者になった。みんなに好かれ始めた。僕はまた夢を見た。また妄想に耽った。陥った。
ああ、僕はなんて幸せなんだ!
ああ、僕はなんて恵まれているんだ!と。
二人の男子と仲良くなった。
二人は不自由で、一人は耳を失った。一人は親がいない。
でも、僕はそんな二人に、蜘蛛の糸を垂らした。垂らして、手を差し伸べて、笑顔を見せる。
そうしたら、すぐに付いてきた。内心、単純な奴だなと思いつつも、だんだん心から好きになって、コイツらと、ずっと一緒に居たい。
そう思い始めた。
ずっと一緒にゲームして、サッカーをして、遊具で無邪気に遊んで。
また、妄想に陥った。夢を見始めた。
ああ、僕はなんて幸せなんだ!と。
四人で仲良くなって、何年もの月日が経つ、ずっと奇跡的にクラスも一緒で、うんざりする程、毎時間一緒だった気がする。それは、僕の妄想なのか、それとも現実なのかは分からない。けれど、嬉しくて、楽しかった。
みんな僕を慕ってくれる。
みんな僕を頼ってくれる。
みんな僕を頼もしいと言ってくれる。
みんな僕を優しいという。
みんな、僕をだんだん見なくなった。
見なくなって、子供が玩具に飽きたように、簡単に見捨てられた。
泣かなかった。
寧ろ、これからが本番だとでも思うように、爪をかんだ。
アイツらは、僕を見捨てなかった。
四人でいつも通り公園で待ち合わせをし、遊んで、三人で帰って、二人で家に帰る。一人の夜はさみしい。けれど明日がやってきて、二人で登校して、一人で下校した。
《四人でいつもの通り待ち合わせ場所へ行き、喧嘩して、一人居なくなって、三人で帰る。そこでまた一人居なくなって、二人で家路を辿る。一人は嫌いだ。けれど翌日、二人で登校したけれど、一人居なくなって、一人ぼっちで下校した。》
これが真実だ。嘘はない。僕は人殺しだ。
四人みんなが大好きで大好きで、ずっと一緒がいいと願って、この結果になった。殺して、自分も死ぬつもりだった。そうしたらずっと一緒にいられると思ったからだ。
けれど、本当は、違ったみたいだ。
僕はマンションの屋上へと来ていた。
自分の家だ。
自分の家はマンションの十三階にある。マンション自体は、二十階まである。
屋上で、隅に立ち、靴を脱ぎ、綺麗に整頓をし、向き直る。
空を見上げ、呟く。
「・・・・・・僕も、君たちと一緒に、空へ行くよ。きっと逢えないだろうね、でも、僕はそれでも君たちに会いに行くよ。永遠に、ずっと、僕ら四人は友達さ。」
そう言って涙を流し、頬を濡らしながら、墜ちた。
〈今日未明、✕✕市内にあるマンション入口にて、死体が発見されました。なお、警察は自殺と考え処理をしーーーーーーーー〉
目を開けると、見知らぬ場所にいた。
真っ暗で、何も消えない。いや、本当に何も無いのかもしれない。匂いも風もない。本当にまっさらな平野の様だ。
ここは、天国じゃないの?
「なんで、なんで僕だけ・・・・・・?なんで、あいつらと一緒じゃない?なんで、なんでなんでなんで!なんでだよ!?」
苛立ちを覚えながら、狼狽える。
すると声が降り掛かってきた。
《貴様は四人殺しの殺人犯だ。等活地獄行きだ!!覚悟をしろ殺人鬼め!》
なんで、僕は只、四人ずっと一緒にいたかっただけなのに、なんで、なんで僕だけ・・・・・・?
鬼がやって来た。
ああ、僕だけ、地獄行きなんだ、ああ、あああ・・・・・・ーーーーー
「うあああああああああああああああああああああ」
彼の泣き叫び声は、広い広い地獄のそこへと消えていった。