第二章 第三話
顕氏様はためらっていた。御所号は死に、真央君もいないとすると、自分に後釜がくる。しかし本当にこれでいいのだろうか。
山から帰ってから数日経ち、私の元へ相談にやってきた。
「すでに真央君を探すには遅いかもしれぬ。本来なら罪人が領内より外へ逃げたかもしれぬ故、すぐさま南北の関所を封鎖して取り調べるところ。……後継のことも思案のしどころだ。」
やつれているように見えた。当然だろう。弟は引きこもり庶務を放棄、なおさら血族としての重責がのしかかるのだから。私は様々なことを思ったが、ひとまずは落ち着いて返答をした。
「お迷いなら、何も急ぐことはありませぬ。」
顕氏様はうつむいていたが、顔を少し上げたようだ。私は話を続ける。
「南北朝は合一し、北奥も治まっております。じっくり探すだけの時間はあるかと存じます。」
「うむ……。そうであるが……。だが、どう探す。」
私は一息置き、このように申し上げた。
「顕氏様。ここは、御所号が殺されれば誰が喜ぶか考えてみませぬか。きっと真央君の行方にも結びつくかと存じます。」
すでに力で領土を奪う時代は終わった。だから御所号を殺して浪岡を混乱させたところで、攻め落とすには至らない。そんなことをすれば、将軍家がだまっていない。
ならば怨恨だろうか。かつて北奥を治めるために数々の敵と戦ってきた。土地を失った者も多かろう。
私は隠居の身だが、最後のご奉公といたしましょう。