第二章 第二話
梵珠山の煙と化す。浪岡北畠氏当主、顕貞は三十でついえた。法要は次弟の顕氏様と末弟の顕光様の連名で、私と多田が脇を支える形で終えた。
他国向けには別日を持って案内を出すこととし、将軍家には死去したことは伝え、代替わりのことは未だ決定せずと伝達された。
御所号が殺されたことは、顕光様のせいで漏れつつあった。責任を感じたのか彼は七日町の自邸に引きこもった。髭の手入れをせず、体も洗わない。きたならしい様であるという。
そんな顕光様に親しい家来達が訪ねると、彼はこのように問うたらしい。
「仮にだ。長兄がいなくなって得をするのはだれだ。」
誰もが口をつぐむ。顕光様は続けた、それもいっそう険しい顔で。
「ずっと考えていた。一番得をするのは、思いたくはないが……兄上だ。信じたくはないが……どうであろう。」
確かに、御所号には嫡子はいない。そうなると次弟の顕氏様が跡を継ぐことになる。しかしである。
「兄上はいまだ当主の届け出を出していない。そこが狙いであるならば、すぐに地位を受けついでいいはずだ。どうしたわけか……。」
ある意味で、馬鹿の一つ覚え。その上での推測。
仮に罪がなくとも、真央君への遠慮はあろうと顕光様は続けた。真央は御所号の本当の子ではないが、我が子同然にかわいがっていた。それに同じ北畠の血が流れている。後継者に名乗り出させてもおかしくはないのだ。
しかし、彼はいない。