第一章 第五話
御所号の死を知りえているのは私と多田と奥寺、門番らと数人の使用人だけだ。七日町へも漏らさない徹底ぶりだが、そのうち漏れればどのような影響がでるかわからない。
しかし……限界もあろう。出仕差し止めの七日町は不審に思っているし、なにより御所号の兄弟にすら伝えられていない。これでは事の解決する見込みもない。
翌朝、私と多田は大殿の兄弟へ密使を出した。彼らを交えての話し合いである。
二人とも、慌てて御所へ駆けつけた。
次弟の顕氏様は涙を流す。
「これは何という訳か。突然のこと、受け入れることできるはずがない。」
末弟の顕光様は怒鳴りながら叫んだ。
「殺したのはどこのどいつだ。ただじゃおかない。」
この二人に多田と私は、夜通し考えたことを提案した。このまま御所号の死を伏せるわけにはいかないので、病による急死ということにする。すぐに荼毘に服し、体には誰もふれさせない。
奥方と連れ子の真央君は療養の為にしばらくここを離れたとし、多田と私が万事を取り仕切る。
最後に顕氏様はポツリと言った。
「真央君が生きていれば良いが……。」
誰もが顔を暗くする。