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第八章 第一話
京へ向かう一行は、無事に多田の三々目内砦に入った。あたりは暗くなり、鈴虫が津軽の秋を奏でる。現地の豪族たちは我先にと新しい御所に謁見を申し入れ、華やかな宴が繰り広げられた。
……その隅すらも身の置き場はなく、……表立ってはいけない二人。真央君と侍女のさくらは汚らしい物置小屋で眠りにつく。
さくらの膝元で、真央君は夢を見た。
気がつくと、真央君は御所でいつものように遊んでいた。鞠を転がしたりして、ちょうど廊下にいるようだ。
すると、壁越しに聞こえてくる。
“真央は、恨みに想うだろうな”
“いずれ、そのときになったら、どういたします”
“あなたが、あの子の父を殺したことを”
男と女の声、正確にいえば、義父と母……。見たくない。聞きたくない。逃げたい。
おもわず、叫んでしまった。……ふと周りを見ると、物置小屋にいた。さくらも目が覚め、真央君を心配そうに見つめている。
そうだ。雪が残っている頃……林で聞いたことは本当だったんだ。
“元に戻りたい”
“戻れないの。元に戻せないの。ごめんね”
仮初の温もりに包まれる。




