表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浪岡哀劇  作者: かんから
哀劇、再び
39/45

第七章 第七話

 私も負けてはいない。体をさらに顕光様によせて、力を気合でおぎなった。冷気は熱気に変わる。




 そのとき、どこからか(とき)の声が発せられた。それは必死に戦っている二人にも、周りで戦っている一矢らにも聞こえた。存ぜぬ顔の鎧武者たちが門の方より押し寄せる。





 ……もう、お終いだ。


一矢はその場に膝をついた。


 




 ……誰も、予期しなかったであろう。


 ある武将が、名乗りをあげた。




「やあやあ、我こそは南部家臣、津村(つむら)(のぶ)(ひで)である。わが殿の命により、主君殺しの北畠顕光を成敗いたす。」




 どういうことだ……。顕光様は私の刀を振り切り、いったん後ろへ下がる。南部勢は次々と赤いはちまきをした者たちを倒していく。彼らはもちろん、顕光様の従者だ。顕光様は急いで津村の方へ駆けた、津村の目前に躍り出た。気は荒く、息もそうとう切らしている。




「どういうことだ。味方ではなかったか。」


 津村はうすら笑みを浮かべた。


「何をおっしゃる。あなたこそ先の御所を殺め、養子の真央君まおぎみをも亡き者にした張本人。今も次兄のいぬ間に戦っているではないか。」



 顕光の心情は計り知れない。……彼は必死に戦っている従者らを見捨て、あろうことか逃げた。小屋から適当な馬を選んで、ひたすら南へ駆けていった。

 



…………


 津村は、私の前に進み出た。赤い兜赤い胴丸が印象に残る。以前に何度か見知ってはいたが、初めて言葉を交わす。彼は片膝をつき、私の目前に参じた。一種の感激を覚えているかのようだった。


「貴殿はもしや誉れ高い……葛西(かさい)武房たけふさ殿でございますか。」




私は応えた。


「いかにも、私が武房だ。しかし、今は先代から戴いた新しき名字“補佐ほさ”氏を名乗っておる。」


「顕光がいなくなった今、あなたがここの代理です。そこである許可をいただきたい。」


「なんだ。」


「顕光の仲間に、安東氏の分家も参加しております。そこで、外ヶ浜や田名部に兵を出すことをお許し願いたい。早々に成敗いたしませぬと、後々大変なことになります。将軍家より北奧の治安を守れとの命も受けております。」





 将軍家は反乱分子を今のうちにつぶしておきたい。大事になる前に。ただし、南部の真意は違うだろう。


「補佐殿がひとつ頷けば、我らが総出で成敗いたします。なあに、遠慮することはございませぬ。それに当分の間こちらも手薄でしょうから、しっかりと南部の侍が守らせていただきまする。」


 津村はそういうと、己の胸をたたいた。自信ありげでに。





……こうなれば、認めざるをえまい。


 私は満面の笑みで許した。心の中とは裏腹に。


これより浪岡は約二百年もの間、南部氏の監視下に置かれるのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ