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第七章 第六話
刀を抜いた。両手で柄をつかみ、敵に対する。心は静まり切っている。
勝つのは、雑念を消した方だ。
顕光様からしてみると、自分の熱気に対して相手はひんやりとした寒気。冷たいまなざしと共に、一歩ずつ迫ってくる。相容れない二者。
もう二三歩で刀を交える。……おもわず彼は後ずさりをしてしまった。”これではだめだ”顕光様は思い、一気に進み出て上から刀を振り下ろす。
ここで私は刀を相手にはせず、下に少し屈めて、腹に体ごと当たった。顕光様の手は頭上にある。その勢いのまま向こう側に退いた。
……顕光様は最初こそ呆然としたがすぐに気を取り直し、私のほうに身を向けてきた。油断こそすれ次こそは討つと、今度は自ら走って迫ってくる。とてつもない叫び声と共に、刀を私の方にまっすぐ向けて。
私は避けぬ。互いの刀が胸元で交わった。さすがに顕光様の力は凄まじく、野獣の如く腕も太い。あろうことか次第に抑え込まれていく。
……真正面を見ると彼は笑っていた。これで最後と言わんばかりに、渾身の力を込めている。まさかではあったが、刀身に彼の刀がめり込んでいる。




