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第七章 第一話
次の日、雨は止んだが曇りがちである。朝から蒸し暑い。だらだらと汗をかく。
ひとまず、真央君はこれまで通り大釈迦に留め置かれている。実に危うい立場であり、早いうちに領外へ出さねばなるまい。
私と多田は、ある計画を立てた。真央とさくらは、京へ向かう新御所の一行にまぎれて、浪岡から脱出する。いらぬ騒動は避けるため、さくらは深い傘をかぶる。真央君は子供ゆえ、御所から姿を消したときのように櫃の箱に入ればよい。
しかし、本当にこれでいいのかはわからない。身を隠す方法ではなく、追放という判断である。正解などない、すべてがうやむやのまま。
発つのは、盆が終わる頃。将軍家への挨拶並びに朝廷への官位受領のため、南へ進む。津軽からの出口は矢立峠。道中の三々目内には多田の砦がある。一足先に多田は現地に入り行列を迎え入れることになった。多田にとっては久しぶりの帰還である。
彼岸花が赤い。もうそんな季節か。もうすこし経てば、川原の跡に黄色いリンドウが一面に広がるだろう。




