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浪岡哀劇  作者: かんから
試練
28/45

第六章 第一話

 私と顕氏様・多田・奥寺の四者間で合意がなされた。


 第一に顕氏は御所を継ぎ、将軍家への挨拶と朝廷への官位受領に出向く。

 第二に奥寺は真央君まおぎみを匿っただけであり歯向かう意思はない。よって罪は問わない。

 第三に真央君は領外へ追放する。これは罰でもあり身を守るためでもある。世間に真央君がったことは知られておらず、いざ漏れたら大変危険である。特に顕光に知られたら不測の事態が起きるだろう。今のところ犯人は侍女のさくらということになっているので、彼女も真央君と共に領外へ出し養育係とする。





「しかし、父上。気になりませぬか。」

 

 私は久しぶりに七日町にある息子の自宅へ出向いた。その日は小雨で、ずいぶんと前から止まない。ぐつついた天気だったが、一矢と昼餉を共にしたくなったのだ。そこで私はある心配事を耳にした。




「顕光様はずっと引きこもったまま。なにやら人を集め、話をしているとの噂です。」


「何を語るというのだ。」



 一矢は首を振った。


「わかりませぬ。調べてみますか。」


「いや。顕光様を調べても……すでに、犯人は明らかになっているのだ。あちらでも、犯人について何かを調べているやもしれぬが……。」



 騒動を起こさせないため、私や多田が知っている話を顕光には通していない。暴走をされても困るからだ。一矢は続ける。



「噂によると……南部の者もいるようで。」


南部が?何のために。



「それに京では大覚寺様が“約束が違う”と訴え出ているとか。各地の旧南朝方に働きかけていると……将軍家から参った使いが館で話しておりました。」


 南北朝合一以来、大覚寺統(南朝)と持明院統(北朝)の間で様々な取り決めがなされた。しかしそのほとんどが反故にされた。旧南朝側で不満がたまっている。

 糠部(ぬかのべ)南部氏の中にはめっぽう南朝に忠じる支族があり、大覚寺が誘ったとしても不思議ではない。しかし、時勢を考えるに、将軍家に逆らうなどできやしない。


「確かに……。一矢、調べてみるか。」


 ただし、疑ってかかることだけはするな。かつての悲劇を繰り返してはならぬ。





 そのときだった。屋敷の木戸が音を立てて開かれる。振り向くとそこには顕氏様がいた。後ろには多田と従者らも侍っている。


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