第四章 第五話
昼下がり。次第に小雨が降ってきたころ、私は奥寺と面会した。奥寺は少しぎこちない感じであったが、私はできるだけ穏やかに語りかけた。
「奥寺殿のお優しい心、わかっております。罰することだけは無きように、お約束いたします。」
…………
「なんのことやら。」
奥寺はそ知らぬふりをして返す。だがすでに私は気付いていた。
「奥寺殿がお持ちになっている櫃の箱。子供一人入れますかな。」
“櫃の箱”とは、取っ手が二つあり、二人で担がなければならない長くて大きな入れ物のことだ。
私がそういうなり、奥寺の体全体から汗が噴き出したかようで。首元から指の先まで急に湿りだした。顔も赤くなり、もう隠し通せない。
「……確かに、御所へ書物や衣服をお持ちするときに使っておりました。」
来るところまで至った。ここで私は彼の手まとめてしっかりと捕まえて握った。。
「ありがとう、御子の命を守ってくれて。」
奥寺は、頭を下げてひたすら平身するしかなかった。こうしてしまえば、相手は認めざるを得まい。
観念したようである。さあ白状せよと心うちに思う。
まさかあのような言葉が返ってこようとは。
「どうか、真央君を罰することだけはお許しを……。」




