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第四章 第二話
私と多田は、さくらの走り去る姿を見送った。門番のいない裏手から、すぐ山影へ向かって消えていった。
遠くを見つめるだけで互いの顔を見合わせぬまま。
多田は私に言った。
「共犯ですな。」
「ああ。もう逃げられないぞ。」
御所に入ると、息子の一矢が数人の仲間を連れて待機していた。私は”行け”と合図をだす。すぐさま、一矢達はさくらを追うためにその場より動いた。
「私は考えたのだ。ああ言うからには、何かを知っているはずだと。」
多田は心配そうに応えた。
「逃がしたのがばれたら、顕光さまはたいそう怒りましょうな。切腹のご覚悟は……ございますか。」
多田の表情はとても面白く、私は思わず笑ってしまった。
「私の腹でいいのなら、何遍でも切りましょうぞ。」