11/45
第三章 第一話
時は経ち、季節が変わった。後継を決まぬまま、真央君もいまだみつからない。すべてが一向に進まず。そんなおり顕氏様が再び私を訪ねてきて、このように話した。
「怨恨か……。私も調べたのだが、埒がたたぬ。再び御所の使用人にもありようを訊いたが、叫び声一つも聞いていないそうだ。罪人にたどり着くためのものがない。」
おもわず頭によぎるのは……”水谷"。
その名は考えたくない。確かに、彼らなら恨みを抱いているだろう。
嫌に蒸し暑い。蝉が大きく聞こえ、騒がしい。あらゆる毛穴から汗が噴き出る。
「水谷……。涼しそうな名前だな。」
「はい。心が冷え切るほどに。」
二人して冷笑した。すぐに声は途絶え、周りの雑音だけがうるさい。