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第三話 「迷った時は左手の法則!」

初めてお気に入りの方がつきました。

誰かが読んでくれているというのは本当に嬉しく、励みになるものですね!

ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!



シェリル達はアルウンド国を離れ、ラムハガル王国へとやって来ていた。

場所としては大陸の中央の、やや南部に位置しており、東のレガル帝国と、西のアルウンド国の二国に挟まれる形で存在している。

国の北側は深い森林。

形の上では「サンタール」という共和国が支配をしているが、あまりにも深い森である為、国境警備隊はおろか、そこを通る者さえも居ないというのが現状である(シェリルの生まれ故郷はここだが、現時点では誰にも話していない)。

ラムハガル王国の国土の殆どは険しい山地で占められており、作物を育てる事はおろか、住居を建てる事すら困難だった。

しかし、およそ三百年前にドワーフ族が技術を提供し、それからは彼らと共存する事で、大陸中で最大の鉱物輸出国となるに至った。

シェリル達はアルウンド国から、街道を通ってラムハガル王国へ入国。

ドラゴンによる被害が大きいという「アルレスの街」を目指して歩いた。

そこは、ラムハガル王国一の鉱物資源の産出地であり、エルフ族を敵視しているドワーフ族が作った街でもあった。

殺したい程では無いが、見るのも聞くのも話すのも嫌。

それがエルフ族とドワーフ族の唯一共通した意見である。

若いが、エルフ族であるシェリルも、ドワーフ族が嫌いであった。

なぜ嫌いか、と聞かれたら「ドワーフ族だから」と言う他に無い。

教育されたわけではないし、何かがあったわけではないが、本質的に嫌いなのだ。

おそらく、今回のような事が無ければ、一生近付こうとも思わなかっただろう。

だが、今のシェリルの中には、ドワーフが嫌いだのなんだのは問題としない気持ちがあった。

それは「レオンハルトの鼻を明かしたい」という、所謂強い復讐心だ。

何としてでもドラゴンの幼生を持ち帰り、レオンハルトを仲間に入れる。

そして下僕のように扱い、この溜飲を下げるのである。

「ドワーフの街?それが何?私の目的には関係ないし」

シェリルは現在そんな気持ちで、ドワーフの街へと近付いていた。

怒らせると怖い女。負けず嫌いで根が深い女。

それが、フェインが密かにつけたシェリルの不名誉な新称号だった。



アルウンド国の首都であるコーンシェイドから歩いて五日。

シェリル達は目的地である「アルレスの街」に到着した。

アルレスの街は高山の一画を切り開いて作られた街で、その場所自体が非常に高く、明らかに空気が薄かった。

外壁の高さはおよそ20m。

唯一の外門を起点とし、背後に聳える山に向かって街を「ぐるり」と取り囲んでいる。

街並みは一言で言うなら階段。

外門から真っ直ぐに伸びている長い坂に沿うようにして、一段、二段、三段と少しずつ高くなりながら、住居や店が建てられていた。

長い坂の頂点には一際巨大な建物があるが、シェリル達は現時点では、それが何かはわからなかった。

「問題ないじゃろう。ほれ、行け」

門番だった男が言って、横に退けて道を譲った。

男の身長は150cm程度。「むすっ」とした顔に伸びた髭。

ずんぐりむっくりの体に合わせた自家製の防具を着用している。

彼もそうだがドワーフ族は、大抵はそういう外見をしており、武器を握れば女性ですら、人間の騎士に匹敵する程の実力を発揮すると言われている。

その性格は極めて頑固。

こうと決めたら死ぬまで動かない強靭な意志の持ち主らしい。

仲間に加えたらこれほどに頼もしい存在はそうないだろう。

が、エルフであるシェリルが彼らを仲間にする事は無い。

万が一、そう思っても、ドワーフの方で「おちょくっとるのか!」と、髭を揺らして怒る事だろう。

両種族の仲はそれほどに冷え切ってしまっているのである。

それ故にシェリルはローブを着こみ、更にフードを深くかぶり、あまり言葉を発さないようにしている。

喋るのは主にフィリエルである。

年齢に不相応な物腰と、丁寧な言葉遣いを買って、シェリルは彼女に全てを任せたのだ。

結果は見事に外門を突破。

「この人は病気なんです」

という扱いが少しカンに触ったが、そこは方便と理解してシェリルは騒がず黙っておいた。

外門を抜け、坂を上り、シェリル達は「バンカー」という宿屋を見つける。

そして、アルレスの街における行動拠点にする為に、その宿で部屋を借りる事にした。

約10分後、シェリル達は、情報収集の為に宿から出発し、ドラゴンの幼生を捕まえるにはどうすれば良いかを聞いて回った。

「頭をぶん殴って気絶させて、そのまま担いで持ち帰ればええ」

20人ばかり聞いた結果、約半数がそう解答。

それがドワーフ族が思う、「最善の生け捕り方法」らしかった。

「こういう習性をこう利用して、こういうふうにして捕まえろ」

という、具体的な手段を期待していたシェリル達としては唖然とする他無く、実直で素朴なドワーフ達の不器用な生き様を垣間見た気がした。

「というか、幼生なんぞそうはおらんぞ。ドラゴンは卵から孵ると30日程でかなりデカくなる。そうなっちまったら火は吐くわ、他の生物には喰らいつくわで手なずける所ではなくなっちまう。どうしてもドラゴンが欲しいというなら、卵の内に攫う方が安全性から言ってもお勧めじゃろうな」

それは二十数人目のドワーフが言った言葉であった。

それを聞いたシェリル達は「そっちの方がいいかな?」と三人で相談し、

「まだ安全ですよ。そっちの方が」

という、フェインの言葉が採用されて、計画が少し変更された。

シェリル達はその方向で再び聞き込みを開始する。

即ち、「ドラゴンの卵がありそうな場所」をドワーフ達に聞いて回ったのだ。

「そんな事を聞いてどうするんじゃ?」

そう言いながらもドワーフ達は、手と足を止めて話を聞いてくれた。

頑固だが、しかし基本的には、お人好しで喋り好きな種族なのだろう。

困っている者を放ってはおけず、ついつい話をしてしまうようだ。

そんなお人好しのドワーフに10人ばかり当たった結果、「グリンベル」という名前の洞窟を推すドワーフの数が一番多く、シェリル達はその洞窟に行く事を決めて場所を聞いた。

「グリンベルならこの街の北東にある坑道を抜け、山を1つ越えた先の断崖絶壁の中にある。しかし…そんな事を聞いてどうする?」

聞かれたドワーフはそう言って、太い眉毛を中心に寄せた。

「い、いえ、少し興味があって…あは、あはは…」

怪しまれては意味が無いので、フィリエルが笑ってそれだけを答える。

追及する気は元から無いのか、ドワーフは「フン」と鼻息を吐き、シェリル達の前から去って行った。

「じゃあ宿に戻りましょうか。明日に備えて早めに寝ましょう」

シェリルが言って二人が頷く。

一行はそのまま宿へと戻り、出発を翌日の朝と決めて、ゆっくりと体を休めるのだった。



翌朝、シェリル達は装備を整えて、朝も早い内に宿屋を出発した。

街の北東の坑道を抜け、グリンベル洞窟を目指して歩く。

1時間程歩いただろうか、シェリル達は山道で仕事帰りのドワーフ達と遭った。

「こんな所で何をやっとる!」と、怒られるかと思ったが、シェリル達を「じろり」と睨んだだけで、特に何も言ってこなかった。

どうやら話しかけられたり、助けを求められたりしなければ、自分達から関わる事はあまりしない性質らしかった。

「おはようございます」

フィリエルだけが軽く会釈し、やはりは「フン!」と無視をされた後、一行は更に奥地を目指す。

そして2時間程を歩き、目的の場所へと到達した。

そこは右手が断崖絶壁。

頭上には厚い岩という谷間に穿たれた洞窟だった。

入り口には標識があり、「命を落とす覚悟を持って自己責任で入る事」とドワーフ文字で記されていた。

「な、何か書いてますよ?」

それを見つけたフェインが言って、シェリルならば読めるだろうと怯えた瞳で顔を向けた。

「ああ、大丈夫よ。「足元注意」って書いてるだけだから」

実際にはシェリルは読めてないし、読めたとしても引く気はなかった。

それ故に適当に嘘をついて、

「ほ、ホントですか!?それにしては文字数多くないですか!?」

と、騒ぐフェインを完全に無視して、洞窟の中へと入って行った。

「あ、ちょっと!無視しないでくださいよ!」

そう言いながらもシェリルを追って、フェインもその後へと続く。

「全く、ジコチューなんだから…」

その際「ボソリ」とそう呟いたが、幸いシェリルには聞こえていなかった。

残されたフィリエルが「クスリ」と微笑む。

何だかんだと言いながら、しっかりと付いて行くフェインの姿が、なんだか可愛く見えたのだろう。

そして直後には2人を追って、フィリエルも中へと入るのである。

「どうにもならなくなったら言って。その時には灯りを使って良いから」

それからおよそ3秒後。

フィリエルが追い付いてきた事を見てから、シェリルが二人に向かって言った。

洞窟の中はかなり暗く、数メートル先に何があるのか、フェイン達には分からなかった。

が、種族の特性として「夜目」を備えているシェリルには、暗闇の先が見えていた。

その上で現状では特に危険が無いようなので、灯りを使うなと言ったのである。

洞窟の高さは約3m。

横幅は10m程あるようだったが、その間には柱があったり、掘削の器具が置かれていたりでどちらかというと手狭な印象。

フェイン達にも言ったように、危険なモノや魔物は見えず、このままならば灯りを使わず進む事が可能のようだった。

「だ、大丈夫なんですか?谷底にまっしぐらとか嫌ですよ僕…」

「大丈夫よ。信用なさい。ギリギリでちゃあーんと教えてあげるから」

「ギリギリじゃなくても教えてください!ていうか、そもそも行かせないでください!」

フェインの抗議にシェリルが笑う。

釣られてフィリエルも「クスクス」と笑った。

「冗談よ。じょーだん。勇者にはユーモアセンスも必要よ?」

フェインの頭を「コン」とひと小突き。それからシェリルは歩き出した。

洞窟は数mは殆ど道なりの状態だった。

しかし、洞窟の入り口から、約30m程歩いた地点で、地下へと向けて急速に下がった。

シェリル達は重心を後ろに置くような体勢で歩き、鋭い角度の坂道を注意深く下って行った。

坂を下って行くに従い、温度と明度が上昇していく。

そして少しずつではあるが、卵の腐ったような匂いが全員の鼻孔に侵入しはじめた。

シェリル達は当然ながら、その変化に気付いていたが、「なんだろう?」と思うだけで正体を掴むには至らなかった。

「なんか、凄い暑くないですか…?あとかなり臭いです…!」

臭いと暑さの原因が分からず、混乱した口調でフェインが言った。

「…」

無言ではあるがフィリエルも動揺している様子であった。

「10分以内に分かるから、ちょっと静かにしてなさい」

自身でも理由が分からない為、2人の不安を煽らないよう、シェリルはそれだけを言葉に選んだ。

現実にはその7分後に、臭いと暑さの原因は分かった。

シェリル達はマグマが煮え立つ広大な空間にたどり着いていた。

目前に続くのは茶色い地面。

そして、その地面の左右には、灼熱に燃えるマグマの海があった。

地面の所々には虫食いのような穴があり、その穴の中では溶岩が「ぐつぐつ」と煮え立ち煙をあげていた。

この空間の熱と臭いが坂の上へと伝わっていたのだ。

「な、な、な、な、なんですかコレ…!?火の海ですか?!アレって諺じゃなかったんですか!?」

驚愕したのはフェインだった。

生まれて初めて見る光景に度胆を抜かれて目を白黒する。

シェリルとフィリエルも同様だったが、フェインが先に驚いて、派手に慌ててくれたので、驚きは若干軽減されていた。

「これは多分マグマというものです。あまりにも高い温度によって、岩や土が溶けた姿とか。詳しい事は分かりませんが、もしかすると活火山が近くにあるのかもしれません」

驚きが軽減されたが故に、思い出せた知識をフィリエルが言う。

「へぇ…これがマグマなの…」

それを聞いたシェリルが呟き、空間を「ぐるり」と見回した。

空間には灼熱の海。地面には煙が吹き上がる溶岩の穴が無数にあった。

そして、前方の数箇所には奥に続いているのだろう縦穴もいくつかあるようだった。

「まぁ、とりあえず行きましょうか。警戒は怠らないでね」

言って、リーダーたるシェリルが進む。

今はただの足手まといのフェインがその後ろへ続く。

フィリエルは最後方について、援護と背後の警戒に努めた。

空間の中は明るかったが、その一方で温度も高かった。

普通の人間であるフェインとフィリエルが「ポタポタ」と汗を垂らす程だ。

が、エルフであるシェリルは一滴の汗すら流しておらず、それを不思議に思ったフェインは「暑くないんですか?」とシェリルに聞いた。

シェリルは「全然」と即座に答え、エルフ族は寒がったり、暑がったりする事が無く、魔力によって適温が常に保たれるという事をフェインに説明した。

「なんか、ズルイよね、エルフって…」

それを聞いたフェインが振り向き、後ろを歩くフィリエルに言った。

フィリエルは正直、ズルイとは思わなかったが、空気を読んで笑顔で同意した。

「ほら、ゴチャゴチャ言ってないで、しっかり警戒してなさい。ここは魔物の巣なんだから、どこから襲われるか分からないわよ」

2人の方に顔を向け、歩きながらにシェリルがそう言った。

どうやら悪口を言われている事を雰囲気で察しているのであろう、その顔は若干怒り気味だった。

と、その目前にある穴の中から何かが現れた。

それに連動するように、他の穴からも何かが現れる。

それは灼熱のハサミを持った「ファイアークラブ」と呼ばれる魔物だった。

体の色は燃えるオレンジ。

灼熱の溶岩の中に生きる炎に包まれた蟹である。

体長はおよそ1m程。

有機物であればなんでも食うという洞窟の中の掃除屋だ。

ファイアークラブは全部で4匹。穴の中から現れてきており、シェリル達を「エサ」と見なして、横走りで一斉に襲撃してきた。

「なんなのよこの不思議生物は!」

言いながらシェリルが剣を抜いた。

少し遅れてフェインが剣を抜く。

武器が杖であるフィリエルは、腰を低くして攻撃に備えた。

まず、最初に襲われたのは先頭に立つシェリルであった。

ファイアークラブはハサミを振って、シェリルの胴体を薙ぎにかかった。

が、シェリルはそれを回避。

後方に「すっ」と飛びのいてから、ファイアークラブの背中を突いた。

ファイアークラブは無言で仰け反り、覆いかぶさるようにして地面に倒れた。

それで死んだ、というわけでなく、苦痛でバランスを崩しただけだ。

続けざま、シェリルは魔法を発動した。

青白く輝く氷の矢で、地面に倒れた敵を貫いたのだ。

直後には左から新たな敵が。

ファイアークラブはシェリルの体を、両方のハサミで断ち切ろうとしてきた。

シェリルはそれをジャンプでかわし、敵の頭上に「とんっ」と着地する。

靴を一瞬焦がした後に、シェリルは更に高く飛んだ。

そして「くるり」と一回転。

空中から放った氷の矢で敵の体を貫いた。

一方のフェインとフィリエルもファイアークラブと戦っていた。

着地し、二匹を片付けたシェリルは、フィリエルを助けようとして動きだした。

「ええええいっ!!」

が、フィリエルは杖を使って、地面をえぐるように大きくスイング。

「ナイスショット!」と言いたくなるような見事な振りで敵を飛ばした。

飛ばされたファイアークラブは、弧を描くようにして空中を移動し、「ばぷん」という音を発して灼熱の海に沈んで行った。

1人残されたフェインは苦戦中。

僧侶で、しかも女の子であるフィリエルより戦力が低いようで、蟹を相手に対等に「じりじり」と距離を詰めあっていた。

「(ホントにレベル10なのこの子…もしかして本当に壊れてたんじゃ…)」

それを見たシェリルは流石に心配し、勇者の素質を計れるという例の石に疑念を抱いた。

「て、てやあっ!」

やっとの事でフェインは攻撃し、ファイアークラブの胴体を切り裂く事に成功したが、そこから飛んだ体液により、皮の鎧の一部を燃やした。

「うわあ!うわわわわ!」

慌て、思わず剣を捨てて、フェインが消火の為に叩く。

ファイアークラブはもう死んでおり、攻撃してくる事は無かったが、戦闘中に剣を捨て、取り乱してしまったという事には、額を押さえざるを得ないシェリルであった。

が、しかし、とにもかくにも、全員の健闘で敵は全滅。

シェリル達は武器を収め、空洞の奥に向かって行った。

空洞の奥には全部で3つの大きな穴が開いており、それぞれが洞窟の更に奥へと続いている様子であった。

その高さと横幅は一番右が最大レベルで、反して中心に見える穴が最小レベルのようだった。

「ドラゴンが通れる程の大きさ」と、判断したシェリル達は右を選び、少し進んだ所で初のドラゴンを目撃するのであった。

その大きさはおよそ3m。

赤い肌と鱗をしており、トカゲのような外見だった。

ドラゴンには下位種と上位種がおり、体長が10mに満たないドラゴンは下位種として区別される。

下位種は基本、噛み付いたり、炎を吐く事でしか敵を攻撃する事が無く、「上位種のドラゴンと比べるのなら」戦いやすい相手と言えた。

しかし、その実力はシェリル達の遥か上であり、例えばシェリル1人だとしても、戦って倒せる相手では無い。

せいぜいが隙を突き、強烈な一撃を見舞った上で、逃げ出すと言うのが限界だろう。

故に、このドラゴンが睡眠しているという現状には、シェリルは感謝せざるを得なかった。

「(絶対に物音をたてないで。いい?「振り」じゃないからね?)」

真面目な顔でシェリルはそう言い、ドラゴンの脇の突破を図る。

フェインとフィリエルは無言で頷き、忍び足で歩き出したシェリルの後ろに続いて進んだ。

目指すはドラゴンの右手に見える奥へと続く広い通路だ。

ここまでは先の空間のマグマのお陰で明るかったが、光が届くのはここまでらしく、そこから先は薄暗かった。

出来る限りは物陰に寄り、様子を見ながらシェリル達は進む。

途中、人の骨(ドワーフのものと思われる)を見たフェインが悲鳴を上げかけたが、それはフェインの後方に居たフィリエルが口を塞いで阻止した。

フィリエルのその機転によって、シェリル達は無事に通路に到達。

フェインは頭を「パン!」と叩かれ、それと同時に「スミマセン!」と謝った。

「(お願いだから成長してよ…)」

懇願のような言葉を放ち、それからシェリルは前進を開始した。

「(足元に骨なんかが転がってるから、転ばないように注意してね)」

シェリルが言って、注意を促す。

フェインはそれらを見ないように、シェリルの背中を見る事だけに集中した。

「ぱりっ、ぱりっ」という骨を潰す不快音が辺りに響く。

通路を抜け、空洞に出て、それからまた新しい通路に入る。

5分ほどを進んだだろうか、通路が右と左とに分岐した。

「迷ったときは左手の法則」

という、シェリルの適当な迷信を信じて、一行は左手の通路に向かった。

「あら…」

が、左の通路は更に分岐。

「迷ったときは左手の法則…」

やや、自信を失って来たシェリルの発言で更に左へ。

「また分岐!?どうなってるの!?」

「迷った時は…」

「左手の法則よ!!」

フェインの言葉に切れてしまい、考えも無しに左を選ぶ。

そして、左を3度選んだ結果、シェリル達は天井高い、巨大な空洞にたどり着いた。

そこは、太陽の光が差し込む、一種神秘的な空間で、その為に空洞の明度が高く、青色に映る空洞の全てを見渡す事が出来た。

「あ!シェリルさん!あれ!」

と、何かを見つけたフェインが言った。

指差す先には柱があって、その柱の脇や前には割れた卵が転がっていた。

卵の大きさは80cm程。

場所と大きさから考えるなら、ドラゴンの卵で間違いなさそうだ。

「まだ割れてないのがあるかもしれないわ。手分けして探しましょう」

シェリルが言って、3人は空洞の中にそれぞれ散った。

まだ割れてない卵を探し、空洞の中を調べて回る。

発見された卵は18個。

その全てが割れており、中身のドラゴンもどこにも居なかった。

「残念だけどハズレみたいね。でも、こういう場所があるなら…」

シェリルがそこまでを言った時、彼らの頭上で「ギョワアアア!」という、何者かが発した咆哮が響いた。

そして直後、何者かが「バサバサ」とこの場へ降下してくる。

「隠れるわよ!」

シェリルの言葉に二人が動く。

柱の後ろに潜むようにして、3人はその姿を隠した。

やがて空洞に姿を現したのは、体長10mを越える青いドラゴン。

ドラゴンは降下してきた後に、空洞のほぼ中心に着地し、翼を畳み、周囲を伺い、安全を確認した上でその場に体を横たえたのだ。

少し休憩したいだけか、それとも眠ってしまったのか、シェリルはその判断に悩んだ。

もし、眠っているのであれば、元来た道を引き返し、別の道を選ぶのも良い。

だが、休憩しているだけならば、ドラゴンの視線は明らかに出口の方に向いているので、動く事は自殺的だった。

「(どっ、どうしますかシェリルさん?あいつすっごい出口見てますよ…)」

シェリルとフィリエルだけに聞こえる小さな声でフェインが言った。

角度的にはドラゴンの頭と背中しか見えてないので、目を開けているかどうかはこの位置からは特定できない。

しかし、顔の方向的にはドラゴンは完璧に出口を見ていた。

体を横たえたという事は、普通に考えれば寝るのだろうが、「なんかハラ痛ぇなぁ…」と思って様子を見ているという可能性もゼロというわけではなかった。

もし、万が一、そうだったら、忍び足で歩き出した自分達は即座に奴の胃の中なのだ。

「(しばらくは様子見ね。確実に寝てると判明するか、体勢が変わったら考えましょう)」

故に、シェリルは2人にそう言い、現状待機を選ぶのだった。

目には見えない長い戦いは、この瞬間から開始された。



ドラゴンがその場に横たわってから、十数時間の時が過ぎた。

シェリル達は現在も物陰に潜んで身を隠している。

ドラゴンが寝たのか、起きているのか、それは現在に至るも不明。

シェリルが3度確認したが、目は開いたままだった。

「目を開けたまま寝るんじゃないですか?だって何時間もあのままですよ?どう考えたって寝てますよ…」

それを聞いたフェインは言ったが、自分の身はともかくとして、2人の安全を思うシェリルはそれを良しとはしなかった。

万が一、襲われたら、自分はなんとか逃げ切れるが、フェインとフィリエルが逃げ切る事は、ほぼ不可能だろうと分かっていたからだ。

それ故に待機を続行し、十数時間をこの場所で過ごしているというわけである。

現在、フェインとフィリエルは寝息をたてて眠っている。

「お腹が減った」だの「足を伸ばしたい」だの、色々と苦情を言っていたが、眠気には逆らいきれなかったようだ。

シェリルはというと大人の責任もあり、眠気を殺して監視を続行中。

「んもぉ~…シェリルさんのせいですからねぇ~…」

という、寝言を言ったフェインに苦笑し、ドラゴンの監視に視線を戻した。

それから更に2時間程が過ぎる。

フェインとフィリエルは完全に熟睡し、1人、監視を続けているシェリルも「うとうと」とする事が多くなって来た。

ドラゴンが「もぞもぞ」と体を動かし、「ウォウォ」と小さく鳴き出したのは、その直後の事だった。

一体何が起こっているのか。

シェリルの眠気が一気に吹き飛び、監視の目に力がこもる。

ドラゴンは5分、10分と体を「もぞもぞ」と動かしていたが、おおよそで15分も経った頃には、「もぞもぞ」を止めて静かになった。

「(一体何だったの…?)」

と、シェリルは疑問し、熟睡する2人を置いて、気配を殺して移動を始めた。

柱と柱の間を飛んで、シェリルはドラゴンの顔が見える角度に素早く移動する。

そして、ドラゴンの顔が見える柱の後ろからそれを伺った。

ドラゴンは相も変わらず、以前と同じ体勢だった。

が、その眼は瞑られて、「スースー」と寝息を立てていたのだ。

「ついに寝た!」と、シェリルは思い、2人にそれを知らせようとした。

しかし、自身の視界に入った「あるモノ」の存在に気付いてしまい、「あっ!?」と声を上げてしまうのだ。

幸い、ドラゴンは起きなかったが、シェリルは慌てて口に蓋をした。

シェリルが見たモノはドラゴンの股間あたりに存在していた。

それは大きさ80cm程の卵。

数時間前までは見られなかったドラゴンの卵であった。

シェリルは前後の状況から、このドラゴンが生んだモノだと判断し、その疲れから目を瞑り、眠ってしまったのだと考えた。

ここに来て唐突に、二重のチャンスが到来したのだ。

シェリルは「シュババッ」と素早く移動し、寝ている2人を叩き起こした。

そして、起きた2人に向かい、ドラゴンが眠ってしまった事と、卵があるという事を、小声で手短に伝えたのである。

「あっ?えっ…?なんですか…?いたっ!?」

眠気の為にフェインは呆然。

普通の声を出してしまい、シェリルに頬をつねられる。

「(まさか、その卵を盗むんですか…?)」

親ドラゴンの気持ちを思い、良識人のフィリエルが言った。

「(分かって。世界平和の為よ)」

が、都合の良いその一言で、フィリエルは黙らされて世界を選んだ。

「(じゃあきまりね。卵を盗るのは私がやるわ。あなた達は今の内に安全な所まで逃げておいて)」

シェリルの言葉で方針が決まり、フィリエルが移動を開始する。

「(え?何?どういう事?)」

いまいち方針を理解していないフェインは、質問をしながら移動して、

「(えっ!?卵!?本当に!?)」

と、フィリエルに話を聞かされて、今更ながらに驚いていた。

シェリルもそれから移動を開始。

柱と柱の間を飛んで、ドラゴンの顔が見える角度でフェインとフィリエルに合流をする。

「(あなた達は先に行って。卵を盗ったら私も行くから)」

フェインとフィリエルに向かって言って、シェリルはドラゴンの様子を伺う。

ドラゴンは今は熟睡中で、こちらに気付く様子は無かった。

その様子を見たフィリエルも、逃げるなら今だと判断したようで、柱の裏から飛び出して、小走りで出口に向かって行った。

「(ほら!あなたも行くのよ!)」

シェリルに背中を押されたフェインが、形としては押し出されるように柱の裏から姿を見せる。

フェインは「(殺す気ですか!?)」という、恨みがましい目でシェリルを見たが、流石に状況を理解しており、直後には出口へ向かって走った。

「(さて、じゃあやってみましょうか)」

2人の姿が見えなくなった後、心の中でシェリルが呟く。

そして素早い動きで飛び出し、横たわっているドラゴンの尻尾の近くで身を伏せた。

卵はもう目の前だったが、ドラゴンの肌に触れている為、タイミングと覚悟が必要だった。

1秒、2秒、3秒が過ぎ、4秒、5秒とすぐに過ぎる。

6秒、7秒とが過ぎた後に、ドラゴンが僅かに尻尾を動かした。

「(チャンス!)」

その際にできた隙間の中に、好機を逃さずシェリルが滑り込む。

「(くっ!?意外に重い!?)」

卵は意外に重かったが、そこは「火事場の馬鹿力」。

「ん、んんっ…!」

つい、口から漏れてしまった色っぽい声を発した後に、重い卵を「ぐい」と持ち上げた。

が、自身の許容を超えている卵の重さに身軽さは低下。

飛ぶ事が出来ずに尻尾に乗って、飛び降りる事でそれを突破した。

当然、走る事等できず、シェリルは殆どガニマタで「よたよた」と出口を目指して歩いた。

違和感を感じたドラゴンが、目を覚ましたのはその時だった。

あるはずの卵が無い事を見て、ドラゴンは直後に大きく咆哮。

「あっ…ちゃぁ…」

振り向いた「ガニマタの何か」が抱える卵を目にして体を起こした。

「うわぁ!きっ、気付かれた!」

とは、その様子を見ていたフェインの叫び。

「コレを持って逃げなさい!」

ガニマタながらも急いで歩いた、シェリルが言って、卵を渡す。

「お、おもっ!!?無理ですよこんなの!?」

フェインが抗議し、腰を落とした。

卵は無事のようだったが、そのままでは歩く事はおろか、立ち上がることすら無理そうだった。

が、シェリルはそれを無視し、何事かを口早に呟いて、その後に魔法を発動させた。

「うわ!うわ!うわぁ!?」

という、フェインの驚きの声と共に、フェインの腕が「もりもり」と隆起する。

一瞬の後にはフェインの両腕は「ムキムキのマッチョマン」の腕になっていた。

「これでいけるでしょ!さぁ立って!」

シェリルがフェインを立ち上がらせて、その尻を叩いて走り出させた。

確かに卵は担げたし、重さもそれほど感じない。

しかし、恐怖と不気味さでフェインは泣きそうな顔をしていた。

ドラゴンが二つの足で立って、シェリル達を追って動き出した。

卵を担いだフェインを先頭に、シェリル達は走って逃げる。

幸い、ドラゴンはここでは飛べず、また「卵を傷つけないよう」炎のブレスを吐いてはこなかった。

純粋な速度だけで言えばシェリル達の方が若干早い。

が、その体力に於いて、シェリル達はドラゴンには敵わなかった。

子供であるフィリエルとフェインが、だんだんと疲れてきたのである。

当然の如く落ちる速度。ドラゴンとの距離は縮まるばかりだ。

「あ、あのっ…!なんか…!だんだん重く…!なってきたんですけど…っ!」

走りながらフェインが言った。

見ればフェインの「マッチョの腕」は、少しずつ元に戻りつつあり、その為に卵の本来の重さを感じてきたようだった。

「もう1度魔法をかけるわ!多分、筋肉痛になるけど場合が場合だから恨まないでね!」

シェリルが言って詠唱開始する。

そして、フェインの許可を得ない上でもう1度魔法を重ねがけした。

「うわぁあ!サイアクだー!」

フェインの腕は再び肥大し、卵の重さを感じなくなった。

逃走を開始してから3分。

目前には無数の骨が転がる暗闇の通路が迫っていた。

「風の精霊よ吹き飛ばす力を」

と、シェリルは素早く詠唱を終了。

風の精霊の力を借りて、足元に積もる骨を飛ばす。

これによりフェインは無事に走れ、骨に躓く事も無く、暗闇の通路を突破できた。

が、シェリル達はその先で寝ていた下位種のドラゴンと再び出会う。

目を覚まさないようにと祈っていたが、背後に迫るドラゴンの足音で目を覚ましたようだった。

フェインとフィリエルはすでに限界。

「君達は先に行きなさい!私はここで時間を稼ぐわ!」

やむを得ないと思ったシェリルは、自身を囮とする事で時間を稼ぐ事を決めた。

そして、状況把握をしている最中の下位種のドラゴンに魔法をぶつける。

「ゴアアア!!」

下位種のドラゴンは怒って咆哮。

四本足で「ドタドタ」とシェリルに向かって走り寄って来た。

シェリルは壁際に移動して、ぎりぎりまで引き付けて大きく跳躍。

下位種のドラゴンは速度を緩めず、そのまま壁に激突をした。

下位種のドラゴンは壁にめり込み、気絶したかと思われた。

が、ドラゴンは気絶をしておらず、壁から首を引き抜いて背後に着地したシェリルを襲った。

「ドワーフ並のしぶとさね…」

シェリルは呟いて、右へと回避。

体力を無駄に使わず、時間を稼ぐ事だけに集中をした。

「ゴワアァァオォォ!!」

ここで体長10mの上位種のドラゴンが空洞に出現。

自分の卵を持っていないシェリルに向けてブレスを吐いた。

そのブレスの範囲には下位種のドラゴンも含まれていたが、上位種のドラゴンにとってそれは取るに足らない事らしかった。

シェリルはそれを跳躍して回避。

炎の波に飲み込まれていく下位種のドラゴンをその目に入れた。

上位種のドラゴンは「どたどた」と走り、空中を舞っていたシェリルの体を、右腕を使って叩き落そうとした。

が、シェリルは右手を使い、まるで逆立ちをしたような体勢で、ドラゴンの腕を「とんっ」と、叩いた。

そして、その反動を利用して、上位種のドラゴンの攻撃をかわす。

空中を「ひらひら」と舞うようにして、シェリルは上位種のドラゴンからはかなり離れた場所へと降りた。

それから一瞬、左手に見える突破口(出口への通路)にと目をやった。

直後、襲って来る下位種のドラゴン。

炎でやられたと思っていたが、下位種のドラゴンは無傷であった。

シェリルはすんでの所でかわしたが、その際に左腕に傷を負い、ローブを引っ張るドラゴンにより、その場に引き倒されてしまう。

下位種のドラゴンは「ぐいっ」と引っ張り、シェリルの体からローブを奪い取る。

しかし、「これは食えない」と判断したのか、それを「ぺっ」と吐き捨てた。

「くっ…!」

急ぎ、立ち上がろうとしたシェリルの前には、すでに上位種のドラゴンが居た。

上位種のドラゴンは息を吸い込み、シェリルに向けて炎を吐いた。

シェリルは魔法の壁を張って、その攻撃を耐えようとした。

白い光がシェリルを包み、高熱の炎から術者を守る。

その炎の中へと突っ込み、下位種のドラゴンがシェリルを襲う。

シェリルは転がるようにして炎の中でそれをかわした。

直後には上位種が踏みつけてきたが、シェリルは飛び退いてそれをよけた。

続く、下位種のドラゴンの噛み付き攻撃。

シェリルは宙へと飛んでかわす。

すぐにも迫るのは上位種の腕だった。

シェリルは壁に剣を刺して、逆上がりをして更に高所へ回避。

上位種の腕をかわして落下し、剣を引き抜いて地面に降りた。

「ガアアッ!」

待っていましたと襲ってきたのは、地面を這う下位種だった。

右前脚を振り上げてシェリルの体を薙ぎ払おうとする。

シェリルがそれをかわす事は容易な事だと思われた。

「なっ…!?」

が、暗闇の通路で飛ばした骨に躓いてしまったシェリルは転倒。

下位種のドラゴンの攻撃をまともにその身に受けてしまう。

シェリルは地面の上を飛んで、壁にぶつかって地面に落ちた。

なんとか立ち上がったシェリルの頭と、肩からは大量の出血があった。

「(さ、さすがにもうここまでね…時間は十分に稼げたはずよ…)」

自身の限界を察知して、シェリルは出口に向かって逃げた。

獲物の逃走を見て取った2匹のドラゴンも追ってきたが、本気で逃げにかかったエルフに追いつく事はできなかった。

敵を引き離したシェリルはやがて、ファイアークラブに襲われた空洞地点に辿り着く。

「っ!?あの子達何やってるの…!?」

視界の先、坂道の前にはフェインとフィリエルの姿があった。

2人はそこで立ち止まり、卵を置いて何事かを話し合っているようだった。

「フェイン!あなた何やってるの!さっさと逃げろって言ったでしょ!」

自身の声で頭を痛め、顔をしかめてシェリルが叫ぶ。

「魔法が切れたんです!重くて卵を持てないんですよ!」

返ってきたフェインの声で、シェリルは魔法が切れた事を知った。

「ったくもう…!」

ボヤきながらも仕方がないと、シェリルは素早く魔法を詠唱。

かなりの距離が離れていたが、そこからシェリルは魔法を放った。

「う、うわぁあああ!!?」

直後に聞こえるフェインの叫び声。

「きゃああぁぁっ!?」

遅れてフィリエルのそれも聞こえた。

「か、顔がぁぁあ!!ボクノKAOGAAAA!!」

どうやら効果が腕でなく、顔で発動してしまったらしく、フェインの顔はやたらに「濃ゆく」、声はやたらと太くなっていた。

「DOーシテクレルンデスカKORE-!?」

濃ゆい声と顔で言い、フェインがシェリルに抗議した。

フィリエルはただ「がくがく」と、震えながらフェインの顔を見ていた。

「ああもう面倒クサイったら!」

シェリルはもう1度魔法を詠唱。

今度はきちんと腕に向けて筋肉肥大の魔法を放つ。

直後には少し引き離していた二匹のドラゴンも姿を現した。

「タオシタンジャナカッタンDESUKA-!?」

と、叫びながらにフェインが卵を担ぐ。

「ほら!もうちょっとよ!頑張りなさい!」

ここでシェリルは2人に合流。

フィリエルの背中を押して、それからフェインの背中を押した。

2人はシェリルの怪我を見て、「大丈夫ですか(DESUKA)?」と聞いてきたが、「今はそれどころじゃないでしょ」と言って、逃がす事を最優先とした。

フィリエルが坂道の中に入り、フェインが遅れてそれに続く。

最後にシェリルがそこに入り、急勾配の坂を急いで登った。

2匹のドラゴンは争うようにして突入。

下位種のドラゴンだけなら入れたが、お互いの体が邪魔をして入って来れない様子だった。

シェリル達はそれを尻目に、最後の力を振り絞って、走るようにして坂を上がる。

そしてようやく洞窟を出て、真夜中の道に寝転がって、命がある事を喜ぶのである。

「これであいつは私の下僕よ…!アハハ…アハハハ!アーッハッハッハッハー!」

頭と肩から血を流し、それを気にせず笑うシェリルに、「本当にその一念だけで動いていたのね…」と感心すらしてしまう2人だった。


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