勇者様の幼馴染みの対策!
───嵐みたいに迷惑きわまりない、あのばかやろーもとい、勇者な幼馴染みが去ってはや三日………あの勇者が、いつ血薔薇の魔境から這い戻って来るのかびくびくしつつも、わたし、茉莉花は今日も元気です!!
とは言ったものの………ガクブルだよね、厄災の種がいつ来るか。
泣きそう。
そろそろ、あのたいそうおモテになる幼馴染みへの対策を考えなければならないと思う、今日この頃…………
ということで、【勇者対策委員会】が発足した。
発案者は誰かって?
それは宰相閣下であり、ジークの親友(宰相談)でもある悪魔なアルリードさんと、その恋人であり侍女長でわたしの友達でもある堕天使のアリエルさんだ。
実は、わたしが玲音に投げた文鎮はアルリードさんのお気に入りだったらしい。ごめんなさい。
だけど、今更全面的に自分が悪かったなんて、言えない!
アリエルさんは、玲音が薙ぎ倒した魔族の人に当たり、怪我はないもののこちらもお気に入りのティーポットとティーカップと皿が犠牲になったらしい。
重ね重ね、ごめんなさい!
そんなこんなで、今は会議中である。
ぶっちゃけ、笑顔が怖い悪魔さんと堕天使さんに挟まれているため、会議なんかどうでもいいから、逃げたい………もう、凍りそうな雰囲気だよっ!!ねぇ?!
どうしてこうなった!
自分が責められているようで、非常に居心地が悪いんだよ……………
ちなみに、会議に参加しているのはアルリードさん、アリエルさん、ジーク、捻れた角が立派なルノーさん、わたしの五人である。
あっはははは、なにこれどういう面子?
「わたくし、彼の方は天に召されればいいと思いますの。彼の方のおかげで事後処理におわれて、満足にデートもできませんでしたのよ」
「あれ、高かったんだけど………」
お茶器セットも文鎮も、ドワーフ一の細工師に作らせた逸品だったらしいです。
怖い。
「「ということで対策なんだが 「なのですけど」」
は、ハモってるし!!
二人は、黒い笑顔を浮かべたまま、沈黙をまもるわたしたち三人を見る。
ジークさん?自分の部下だよね、どうにかならないの!?怖すぎる!
「無理だ。あぁなっては止められん。アルリードもアリエルも冷静沈着に見えるが、直情型だからな。しかも、魔族は自分のお気に入りが自分以外のものに壊されるのを極度に嫌う。それは生き物でも、物でも同じだ」
え、魔族ってそうなの?
「そうだ、気まぐれで多感。なのに面倒事はあまり好きじゃなくて、一度気に入れば飽きるまで大事に大事にする。しかもめったに飽きがくることはない」
「というか、ジークは読心術でも使えるの?」
「いや、心は読めない。しかし、先程から思っていることを口に出しているのはマリカだぞ?」
「………!?」
ぐだぐだな会話と、物騒な会話が繰り広げられているなか、ルノーさんだけは無言だ。ビシッと背筋を伸ばし、遠くを見つめている。
話が進まない。
というか皆話し合う気ないだろう。
その後も小一時間まるまる費やしたが、意見はまとまらず、結局進展なしで終わった。
というか、やたらと物騒なのが多いのが悪い。
話し合いの意味がない……………
ということで、対策は決まらずに保留になってしまった………
どうしよう、もう誰でもいいから切実にあいつを止めてほしい!できるならば、ハーレム要員な頭の軽いお姉さんたちもっ!!
自分では止める勇気も、気力もないので祈ろうと思う。
うん、それがいい。
わたしは次なる波乱を予想して、溜め息を吐くのだった……………
対策をたてるのは失敗に終わったという……
今回短めですが、本編です。
これから細々と続いていくと思いますので、よろしくお願いいたします!
瑠璃華