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閑話*マリカの楽しい(?)薔薇迷宮*

閑話は終わりの予定だったのですが、もう一本ありました……すみません。本編の前に載せておきます。

二話めの直後のお話です。

勇者な幼馴染みのあのやろー………もとい、玲音(れお)がこの城に襲来した次の日。

昨日ジークは、わたしに「客が来ているとの報告があった」とこともなさげにいっていたけれど、城のあちこちが崩れたり壊れたりしているのを見ると、勇者のあのやろーが正面から訪ねて来たわけではないのは明白だった。

え、いいのこれ?血とかついてるんだけど!?

間違えなく、わたしの幼馴染みは災害級の迷惑人間だと思う。

というか、迷惑人間でもなんでもいいからわたしを巻き込まないでくれ。切実に。

今日も今日とて、わたしは平和を心の底から願うよ!!

幼馴染みがいなければ平和な気がするけどね、うん。

切実に祈るわたしは今現在、庭にいる。

なぜかって?………暇だからだよ!

魔王城の庭園は、おどろくほど広い。それに、薔薇園となっている一角は巨大な迷路になっているのだ。

これはもう、探検するっきゃないよね!!

アリスにくるような、真っ赤な薔薇が咲く迷路の入り口に仁王立ちし、ふっふっと笑う。

今日はジークは朝から悪魔な宰相さんであるアルリードさんに引きずられて会議に行ったし、わたしのお世話をしてくれている、侍女長な堕天使のアリエルさんも朝から用事でいない。

つーまーりー、過保護な方々が揃っていないのだ。

実は前々から気になっていたのだよこの庭園……!わたしは、意気揚々と迷路に足を踏み入れたのだった。




「ってこれ、どこまで続いてるの!?」


迷路に入ってはや数時間。

迷路の巨大さを今更ながらに認識している今日この頃である。というか、この迷路全体的におかしいから!

なんで落とし穴に、隠し通路、その他大量のトラップがあるわけでしょーか!?

暗黒の森よりましだけど、そろそろ疲れてくる。

しかし、サバイバルでデッド オア アライブを地でいく生活を送れば、いくら甘ちゃんなわたしでもある程度は鍛えられるわけで………仕掛けられているトラップを避けながら、奥へと進む。

明らかに前より体力増したよね、絶対。


「あ、隠し通路発見!」


もはや隠し通路になっていない、薔薇の蔦に隠されていない扉を発見し、古そうなドアノブを回す。

これはあれだ、秘密の花園。

扉の向こうには花の咲き乱れる庭園が広がっているという………───────




「廃墟?」



なにやら、がっかりだよ。

扉の向こうには、寂れた廃墟があった。

青々とした蔦植物が赤茶けた煉瓦の壁に這い、屋根には庭園から伸びた薔薇や鳥の巣があり、ガラスのない窓からは木の枝が延びている。

どうやら、朽ち果てたのか家のなかに床はなく、剥き出しの地面から木が延びているようだ。

随分窮屈な場所に生えたよね、この木。

秘密の花園ではないが、とても神秘的な光景。

改めてここが異世界だとわかるね、コレ。

薔薇の生垣に囲まれて、ひっそりと佇む廃墟………ふ、ふぁんたじー!!

ちょっと興奮しつつ、心行くまでその光景を眺めた。

そして今更ながらに気づいたこと。


「帰り道がわかんない!」


そう言えば、行き当たりばったりできたのだった。地図をもらえばよかった。

数時間前の自分を呪いつつ、うなだれる。


「ねぇ、」

「っあ!?」


そんな時に、誰かに後ろから声をかけられたために、わたしは飛び上がって驚いた。

なにコレデジャヴ!?

振り替えれば、白い軽そうなドレスを着た純白の髪と深緑の瞳の清楚なお姉さんが立っていた。

このさい、コレが何者かは問うまい!


「ごめんなさいね、いきなり。驚いたでしょう?わたしは妖精族のフェリシーナ。ここの隅に植えられている魔界シラカバの精よ。よかったら、帰り道を教えてあげるわ。さっきから百面相していたでしょう?」


優しい声で、クスクス笑われてしまった。

…………───恥ずかしい。

しかし、お姉さんの提案は素晴らしく助かるものだったので、頷いた。


「よろしくお願いします。フェリシーナさん?」

「うふふ、わかったわ。それにしても、ここに人が来るのは何年ぶりかしら。魔王城の人たちは皆、この薔薇迷宮には近づかないのよ」


そう言って、楽しげに笑うフェリシーナさんはとても可愛らしい。しかし、なぜだろう。嫌な予感がする。

意味深なその言葉も気になる…………けれど、隅に植えられている魔界シラカバだという木の横にあった扉を開き、道を教えてくれるフェリシーナさんは悪い人には見えない。

少なくとも、幼馴染みよりは安全な気がする。


「この薔薇の生垣の一本道をまっすぐに行けば、魔王城の薔薇(・・・・)迷路(・・・・)のすぐ横。ヒアシンスの茂みに出るわ。うふふ、気を付けてお帰りなさいな、マリカ。ここには、ごくたまに貴女のような子が迷いこむの。下手をすれば、戻れなくなってしまうからもう二度とここに来ては駄目よ。わかったわね?わかったのなら、ほら、お迎えが来ているわよ。さぁ。サヨナラ、久し振りに人と話せて嬉しかったわ」


─────あれ?

わたし、名乗ったっけ?というか、なんかおかしい…………?

フェリシーナさんの言葉に、違和感を覚える。

けれど、それを聞き出す前にフェリシーナさんに背中を押された。よろけて、数歩前に足を踏み出してしまった。

あぁ、やっぱり今日もあり得ないことに巻き込まれ……てはいないね、首を突っ込んだ?

混乱しながらも前に進めば、聞きなれたジークの声が聞こえてきた。

……………お迎え、これね。


「ジーク!」


短めのドレスの裾をたなびかせながら走り、薔薇の生垣を抜ける。

本当にヒアシンスの茂みだったよ、わぉ。

紫色の花を踏まないようにして、ジークの声がする方に走り、見慣れた保護者の姿を見つけると抱きついた。

やっぱり、安定感は今日も健在。

落ち着く。


「マリカ!!どこにいっていたのだ、探したんだぞ?!」

「あのね、あのね、薔薇の迷路に迷って薔薇迷宮で魔界シラカバの妖精が不思議なフェリシーナさんで、迷ったらだめで来ちゃいけなくて廃墟に薔薇が隠し通路で!!!」

「すまない、マリカ。言っている意味が…………」

「わたしもわかんない!!」


ぎゅうぎゅうにジークの体を締め付けながら、一気に喋る。

自分でも言っていることがわからないってどうなの………わたし。

とにかく、混乱していたのだ。

無理もないよね、実際に不思議な現象だったし。


「もしかして、庭園にある紅薔薇の大迷路に入ったのか?」

「そうそれ!入って迷ったら不思議な妖精さんがいた!!!」

「……………」


え!?なぜに無言?頭の軽い(悪い)お姉さんたちみたいなイタイ子認定された!?

不安に思いながらも、すっかり朱色に染まった空に浮かぶ太陽の光を受けながら、ジークに抱っこされて城に戻った。

無言のジークには聞くに聞けないで、あとでこっそりアリエルさんに尋ねたところ、悲鳴をあげられた。なぜ?




話を聞けば、あの迷路はかなり前から不思議な現象が勃発していたために、出入り禁止が暗黙の了解になっていたらしい。

なんでも、薔薇迷宮という時空の違う場所に繋がっていて、下手をすれば神隠しにあったみたいに戻ってこれないのだとか……………。


あ、危なかった────!!

まさか、魔王城の七不思議のひとつに出会ってしまうなんて!!!

その後、ジークさんに無茶苦茶長いお説教を食らったのだが、あの話を聞いた後なので甘んじて聞き入れた。



────この日わたしは、無計画な探検をするとろくなことが起きないと学んだのだった………………

茉莉花ちゃんの不思議な体験ですね。

すべては謎に包まれたまま…………

今回のテーマは「巻き込まれての受難」ではなく「自分で引き寄せちゃった受難」です!

これで閑話は本当に最後です!(今回は)


たくさんのお気に入りや評価、ありがとうございます!!日刊ランキングにランクインしていてビックリです……!!!

これからもよろしくお願いいたします!!!



瑠璃華

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